映画・ドラマに学ぶ教育の本質

「最強のふたり」

2011年/フランス/112分
監督・脚本:エリック・トレダノ/オリヴィエ・ナカシュ
キャスト:フランソワ・クリュゼ/オマール・シー/アンヌ・ル・ニ/オドレイ・フルーロ 他

立場を越えた2人の男の友情物語

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

何ともフランスらしい映画だなというのが鑑賞後の私の印象です。フランスの生活や文化があちこちに溢れており、フランスの文化・芸術・言語に興味がある人には最適の映画と言えるでしょう。同時に人権大国であるフランスならではの、立場を越えた人と人とのつながりや縁、絆などを改めて考えさせられます。

この映画は、実際にあった話を基に制作されました。フィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴ(Philippe Pozzo di Borgo)とその介護人であるアブデル・ヤスミン・セロー(AbdelYasmin Sellou)がモデルです。1951 年生まれのフィリップは、1993 年に事故で頸髄を損傷。2001 年に自身のことや事故後に出会った介護人アブデルとのことを書いた本『 Le Second Souffle』(直訳は「二つ目の息」)を出版しました。この話が2002 年、フランスのテレビ番組「Vieprivée, vie publique」で取り上げられ、それを契機に、番組の司会者であったミレイユ・デュマ(Mireille Dumas)が2003 年に2人を描いたドキュメンタリー「À la vie, àla mort」(直訳は「生きること、死ぬこと」)を制作。このドキュメンタリーを観たエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュが映画化を構想し、フィリップに直接話を聞いて脚本を書き上げ、映画化するに至ったというものです。

パリに住む大富豪・フィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、頸髄損傷により首から下の感覚が無く、自分で体を動かすことができません。フィリップと秘書のマガリー(オドレイ・フルーロ)は、住み込みの新しい介護人を雇うため、候補者の面接をパリの邸宅で行います。黒人のドリス(オマール・シー)は、職安から就労面接を紹介され、フィリップの邸宅を訪れます。ドリスはもともと職に就く気などさらさらなく、終了間際の失業保険が更新継続されるよう、職安から紹介された面接を受け、書類に不合格を証明するサインがほしかっただけなのです。

プライドが高く偏屈なフィリップは、介護や看護の資格のある他の候補者よりも、障害者である自分に遠慮せず対等に接するドリスを、試用期間を定めて雇うことにします。やがてフィリップは、障害者や病人としてではなく、一人の人間として自分を扱うドリスの心根やフランクさに惹かれ、周囲の反対にもかかわらず友情を深めていきます。また、周りの人たちも傍若無人なドリスの態度や行動に辟易しながらも、少しずつドリスの個性やフィリップとの友情を認知せざるを得なくなっていくのです。

映画冒頭、夜のドライブシーン、高速かつ乱暴な運転で警察に追われる2人が、捕まるかと思いきや、フィリップの機転で病気を装って警察を煙に巻くなど、反権威主義的でエキサイティングな2人の関係を象徴的に表しています。こんな幅の広さも教員には必要なのではないでしょうか。

とかく人は立場や役割、社会の中での違いなどにとらわれがちですが、より自分らしく過ごせる相手と友情を育むべきだということを、また、人と人との縁や絆の大切さや深さを教えてくれる魅力的なフランス映画です。

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