Professional の仕事

第2回 スクールソーシャルワーカー 太田 潤さん

教育活動に関わるのは教師だけと思っていませんか?学校は実にさまざまな人たちの支えによって成り立っているのです。「チーム学校」の一員として子供たちの健やかな学びを支える人々に、話を伺いました。

文・黒澤 真紀

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太田 潤(おおた・じゅん)さん
東京都世田谷区(出生地)出身。工学部精密応用化学科で化学を専攻。大学卒業後は民間の外資系化学メーカーに18 年間セールスエンジニアとして勤務。退職後、NPO 法人のスタッフとして3年間、フードバンク活動に携わる。その後、2011 年4月から清瀬市のSSW として勤務。2012年4月からは東京都杉並区教育委員会のSSW も兼務。2015 年7 月から、都内の自治体としては初めての常勤SSW として清瀬市に採用される。

 

―太田さんはどのようにしてスクールソーシャルワーカーになられたのでしょうか。動機と経緯を教えてください。

大学の工学部を卒業した後、民間の外資系化学メーカーに18 年間勤務しました。国内、海外と広いフィールドで、相応に責任のある仕事も任されていたのですが、仕事を重ねる中で人と接し、人を支援することで、心の通い合う仕事がしたいと思うようになっていきました。

その後、会社を退職し、フードバンク活動(※)を行っているNPO 法人のスタッフとして3 年間活動しました。その一方で、地域で小学生の軟式野球チームのコーチなどもしていました。そうした活動を通じて見えてくることも多く、野球の練習試合に行った際、お昼ご飯をコンビニで買う子や暑さ対策が不十分な子などを見ては、「お母さんが忙しいのかな」「気にかけてもらえていないのかな」などと心配していました。

そうした経験から、社会福祉士や精神保健福祉士などの国家資格を取得するための勉強を始めました。その過程で巡り合ったのが、教育分野において子供への福祉的な支援を行うスクールソーシャルワーカー(SSW)という仕事だったのです。

―SSW に必要な資格や条件は、どのようになっているのでしょうか?

「ソーシャルワーカー」は、さまざまな問題を抱える人たちに相談・援助を行う福祉専門職です。SSWは教育機関においてその仕事をします。採用条件としては、社会福祉士や精神保健福祉士などの福祉に関する国家資格の保有を条件としている自治体が多いようです。私自身は、退職後2年間、通信制の専門学校で学ぶなどして、社会福祉士、精神保健福祉士の資格を取得しました。しかし、資格を持っていることと、適切なソーシャルワークができることとは必ずしも合致しないのがこの仕事の難しいところです。

福祉に関する専門的な知識だけではなく、学校や保護者から信頼され、子供と対等な関係を作り、子供に選ばれるような人間性が求められるのではないでしょうか。子供に対する「愛情」、仕事に対する「情熱」、支援のタイミングを外さない「センス」が必要で、自分自身もスキルの向上を目指しているところです。保護者と面談をするときも、問い詰めるような話し方ではなく、「お子さんはお母さんを求めていますよ」といった切り口で進めていきます。

 

―日々の具体的な仕事内容について教えてください。

相談は原則として、学校経由で受けることになっていますが、口コミで保護者の方から直接電話やメールが入ってくることもあります。中学校では不登校の問題、小学校では家庭環境の問題について、支援を求められるケースが多いですね。不登校の場合、いじめや先生とのトラブル、家庭の経済的問題、保護者の疾病や疾患、その子自身の発達的な課題など、原因が多岐にわたります。そのため、家庭訪問や面談を行ったり、子ども家庭支援センターや児童相談所などと連絡を取り合ったりして、状況をよく見極めて対応するようにしています。

子供は、心から信頼できる人にしか本音を話してはくれません。ここはワーカーとしての人間性が試される部分です。時には共に勉強し、共に体を動かして遊ぶことで、子供と“対等な関係”を築いていきます。一方で、子供を取り巻く環境に対する“間接支援”も行います。具体的に、保護者とは面談をするなどして、地域のサービスや制度を紹介します。それと同時に、学校とは情報の共有を図りながら、子供や家庭のニーズに即した支援・受け入れ態勢を要請します。この他に、「子供の居場所づくり」を地域の保護者と共に立ち上げるなど、共に子供を見守る地域づくりを目指した活動も行っています。

 

―1日のスケジュールは、どのような感じなのでしょうか。

拠点となる事務所に机はありますが、外出していることが多いですね。学校、家庭、関係機関などを訪問して会議をするなど、平均すると1日4~5件はどこかに足を運んでいます。基本となる勤務時間は、午前8時30 分から午後5時15 分までですが、勤務時間は不規則です。登校支援を行うため、朝7時30 分頃に家庭を訪問することもあれば、仕事を持つ保護者と面談するため、午後8時すぎに家庭に足を運ぶこともあります。週末に出勤が必要となるケースも少なくありません。時期的なことで言えば、年度初めは比較的相談件数が少なく、年度後半に向けて進学や進級に関する相談が増えていく傾向にあります。

 

 

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やさしい語り口からも、子供たちの良き相談相手となっていることが分かる太田さん。「子供が笑顔で巣立っていく姿を見ることが、SSW としての最大の喜び」と語ります。

 

―この仕事のどんなところに魅力を感じていますか?

最初に会ったときには、元気がなくてふさぎ込んでいた子供が、支援を通じて前に進む力を取り戻し、笑顔で巣立っていく姿を見ることが、SSW としての最大の喜びであり、この仕事の醍醐味だと感じています。一方で、子供が抱える問題や課題を、本人に代わって解決してあげるような支援はしません。子供自身が、自らの成長によって自力解決していけるよう子供に寄り添いながらサポートするのが、私たちSSW の役目です。まずはその子自身がどうなりたいのか、どのような生き方をしたいのかをしっかりとヒアリングした上で、同じ目線に立ち、解決していきます。もちろん、子供一人の力ではどうにもならない課題であれば、SSW が周囲の環境を整える形で支援することもあります。

子供たちと共に自身の成長を実感できることも、この仕事の魅力だと思います。「SSW になりたい!」という人がいたら、ぜひ社会人として多くの経験を積み、柔軟で適切な対応ができる力を身に付けた上で、目指していただきたいと思います。

 

太田さんのある1 日
8:30 出勤
9:00 教育相談センターで主任会議に参加
10:00 家庭訪問(不登校生徒宅)
11:30 学校訪問(対応状況の報告と今後の方針の確認)
14:00 関連機関(子ども家庭支援センター)訪問・打ち合わせ
16:00 家庭訪問(養育環境が懸念される家庭)
17:00 子供の居場所づくりに参加
19:30 勤務終了(これ以降の時間帯等に家庭訪問が入ることも)
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