カリスマ教師の履歴書

file5 斎藤美紀先生(横浜市立笹下中学校)

中学生は意図を話せば理解できる
だからこそ、自分で考え決定する力を養いたい

平成26年度、「横浜優秀教員表彰」の5人の最優秀教員の1人に選ばれた斎藤美紀先生。テンポ良く進む授業の根底にある、生徒を信頼し、自分で考えさせる指導力はどのように身に付けられたのでしょうか。これまでのキャリアについて話を伺いました。


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 文・平野 多美恵

子供たちが英語を使うチャンスをできるだけ多くつくる

「私たちは母国語である日本語ですら、大人になっても分からない言葉や漢字にぶつかり、辞書を引いたり携帯電話で調べたりします。語学は長く勉強していても間違えるもの。生徒たちには『飽きるほど英語を使うくらいで、ちょうどいい。チャンスをたくさんつくるので、どんどん使っていきましょう』と話しています。こうして授業や勉強の意図を伝えると、中学生はしっかり理解してくれます。」

そう話す斎藤美紀先生の英語の授業は、生徒への指示も含め、すべて英語で行われます。まず、隣同士の生徒がペアになってプリントを使ってスモールトークをした後は、電子教科書でリスニング。英語の歌を歌ったら、オリジナルのパワーポイント教材を使って、生徒に自由な発言を促す。授業はテンポ良く進み、教室内にはシャワーのように英語が降り注ぎます。

「いちいち日本語に変換するのではなく、英語で聞いて、英語で考え、英語で話す。トレーニングをすれば、生徒たちはちゃんとできるようになります。」

こうした指導が評価され、平成26 年度の「横浜優秀教員表彰」の最優秀教員にも選ばれた斎藤先生ですが、ご自身は中学生時代、「良い子」というわけではなかったそうです。

「精神的に不安定になった時期もあったのですが、中学1年生の時の担任の先生が、見捨てることなく、卒業するまでずっと声をかけ続けてくれました。」

恩師の言葉に支えられ、勉強に打ち込んだ斎藤先生は、恩師と同じ「教師」の道を目指します。そして、見事、教員採用試験に合格。辞令を持って初任校の校長室を訪れた斎藤先生を待っていたのは、採用試験の際の面接官でした。

「『ここでもテストですか?』と思わず口をつきました(笑)。」

面接官だった校長先生は、英語教育の大家でもあったため、斎藤先生は初任校に在任した7年の間に、研究授業の実施を含め、校内外の英語教育研究のさまざまなチャンスをいただいたそうです。

「初任校での経験とアドバイスが、今の指導のベースになっています」

と斎藤先生は振り返ります。

 

多くの先生と切磋琢磨し合い生徒指導を学ぶ

初任校で英語教育の研究を重ねた斎藤先生。2校目の赴任校では、「教員同士のチームワーク」を学んだと言います。

生徒がいないところで、指導方法などについて教員同士がしっかりディスカッションする。そうした教師同士のチームワークを作るには、共感が不可欠だと考えた斎藤先生は、ある時、先輩の先生方に一つの提案をしました。

「経験豊富な先生は経験が浅い先生にいきなり『あの場面ではああすればよかった』とアドバイスしますが、どの先生も一生懸命やっています。まずは『今日は大変だったね』と一言かけ、共感することが支え合うことにつながるのではないでしょうか。」

先輩の先生方からは「確かに! 目からウロコが落ちた」と言ってもらうことができ、それ以降、教師たちの間により一層、強いチームワークが出来ていったそうです。

もう一つ学んだのが、3年スパンで計画を立てて指導することの大切さです。

「教師はつい、先のことまでやりすぎてしまいます。でも、1年生のうちは欲張りすぎずに言葉がけをして、3年間をかけて生徒を育てていく。そうして段階を追って指導することで、生徒は達成感や成就感を持つことができます。これを続けることで活力が生まれ、3年後には自主性が育ちます。教師にとっては我慢が必要ですが、それが子供を伸ばす秘訣だと学びました。」

 

大変であればあるほど自分の出番が来たと感じる

これまで順調にキャリアを重ねてきたかのように見える斎藤先生ですが、頭ごなしに生徒を叱ってしまった後、誤解していたことに気付くなど、失敗もたくさんしてきたと言います。また、子供たちが抱える課題の大きさに、煩悶したことも一度や二度ではなかったとのこと。しかし、問題を起こす生徒も、そうしたいと考えているわけではないわけで、その人間性を認めつつ、個々に向き合っていけばいいのだと、生徒から教わったそうです。

それでも、中学校の教師が支えられるのは、生徒が中学校を卒業するまで。だからこそ、中学3年間で、生徒に自己決定力をつけさせたいと、斎藤先生は言います。

「中学生にもなれば、生徒はやっていいことといけないことの区別がついています。でも、流されたり、判断が緩んだりして間違ってしまう。だからこそ、『これがいけなかった』『ああすれば良かった』など、自分で振り返り、言葉にする。それが自己決定力を身に付けることにつながります。」

言葉にできない生徒は、できるまで粘り強く待つのが“斎藤流”です。

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「生徒にとっては忍耐のいる作業でしょう。でも、それが成長には欠かせません。」

そんな斎藤先生ですが、教員という仕事を「辛い」「しんどい」と感じることはなかったのでしょうか。

「大変であればあるほど、自分の出番だと感じます。生徒も保護者も、偶然の出会いである先生に「いてほしい」と間違いなく思っていることでしょう。私が諦めたら誰も助けられない。そう感じます。ただし、一人で全部背負い込んだらくじけてしまいます。他の先生と役割分担して、一緒に生徒を支えればいいのです。」

生徒にただ教えるのではなく、生徒や保護者と一緒にやっていく気持ちがあれば、教師はやりがいのある職業になる。斎藤先生は、そう教師の醍醐味を語ります。

 

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Profile

斎藤 美紀
1965 年9月21 日生

平成元年3月…… 大学卒業
平成元年4月…… 横浜市立松本中学校赴任
平成8年4月…… 横浜市立上永谷中学校に異動
平成17年4月……… 横浜市立岡津中学校に異動
平成27年3月……… 平成26年度横浜優秀教員表彰制度で「最優秀教員」を受賞
平成27年4月……… 横浜市立笹下中学校に異動(現職)

趣味・特技
バスケットボールなどスポーツ観戦。バスケットボール部で指導した生徒がプロになり、最年少で全日本のメンバーにも選出。

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