編集長コラム

1クラスあたりの人数が決まる仕組み

201509P138佐藤 明彦(時事通信出版局『教員養成セミナー』編集長)

学校判断では決められないクラスサイズ

「小学生の頃、クラスの人数は何人だった?」

そう聞かれたら、皆さんはどう答えるでしょうか。 「30人くらい」と答える人もいれば「40人くらい」と答える人もいるでしょう。中には「25人くらいだった」と言う人もいるかもしれません。しかし、「20人以下だった」と答える人は、恐らくごく少数であろうと思います。

1クラスの人数(クラスサイズ)は、きちんとしたルールに基づいて決められます。言い換えれば、学校が独自の判断で決めることはできません。

「うちの学校の3年生は、落ち着きのない子が多いから、1クラス20人ずつの3クラスにしよう!」

どこかの校長先生がそんなアイデアを思いついたとしても、原則として認められないのが、日本の公立学校なのです。

では、具体的にどのようなルールで決められるのでしょうか。

その基準を定めているのが「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」です。同法の第3条には、クラスサイズの“上限”が、次のように定められています。

・小学校=40人(1年生のみ35人)
・中学校=40人

上限が40人なので、41人のクラスは認められません。よって、学年の児童生徒数が41人であれば、20人と21人のクラスに分割することになります。同じく80人までは2クラス、81人ならば3クラスとなります。

1学年が80人・・・「40人」「40人」の2クラス
1学年が81人・・・「27人」「27人」「27人」の3クラス

この「上限40人」というルールは、一方で「40人までは1学級ですよ」ということでもあります。例えば、学年の人数が40人なのに、20人× 2クラスにすることはできません。よって、下限は原則「20人」ということになります。

 

上限・下限には例外もある

では、「40人以上」の学級や「20人以下」の学級は、全国に一つもないかと言えば、そうではありません。ごく少数ではありますが、例外はあります。

例えば、ある学校に40人× 2クラスの学年があったとします。そこに、2学期から転校生が1人入ってきた場合、合計が81人になったからといって、年度途中で3クラスにするようなことはありません。クラスの数は年度途中では変更しないルールになっているので、転校生はそのまま既存のクラスに加わります。そして、年度末までは、例外的に41人のクラスができることになります。

一方で、1クラスの人数が20人以下になることもあります。学年全体で20人に満たないような場合です。児童生徒数が少ない山間部や離島の過疎地には、そうした学級が少なくありません。

そして、学年の児童生徒数があまりにも少ない場合は、2つの学年を1つのクラスにすることもあります。いわゆる「複式学級」というやつです。

複式学級は児童生徒数が「2学年合計で16人以下」の場合に編制でき、極端な場合2年生が15人いても、3年生が1人しかいない場合は、16人の複式学級が作られることがあります(ただし、小学校1年生を含む場合は「8人以下」)。

このように、クラスサイズの基準が国レベルで統一されているのは、公立学校の“品質”を一定に保つためです。一般的に、1クラスあたりの児童生徒数が少ない方が、先生の目は行き届きやすくなります。そのため、地域によってクラスサイズが違うと、「教育の機会均等」に反するというわけです。

しかし、近年はその原則も崩れつつあります。2001年からは都道府県が独自の裁量で、国の基準を下回る場合に限り、クラスサイズを決められるようになりました。現在では多くの都道府県が、小学校低学年を中心に、上限を「35人」や「30人」などと設定しています。

 

財務省と文部科学省のバトル

国の基準では、小学1年生だけが「35人」に上限が設定されていますが、背景には「小1プロブレム」と呼ばれる学校教育上の課題があります。小学校に入学したばかりの1年生が、授業中に立ち歩いたり、集団で行動できなかったりといった状況が、全国的に見られるのです。

原因はさまざまなことが言われていますが、改善策の一つとして打ち出されたのが、クラスサイズの縮小でした。2011年4月から、小学1年生だけ「40人」から「35人」に引き下げられたのです。小学1年生だけとはいえ、クラスサイズが変更されるのは、1980年度に「45人」から「40人」に引き下げられて以来、約30年ぶりのことでした。

しかし、「その効果が出ていない」として、2014年秋に財務省が「元に戻す」と言い出したことから、文部科学省とのバトルが勃発しました。結論として、「35人」のラインは維持されましたが、国家財政が逼迫する中で、今後も同様の論争が再燃する可能性はありそうです。

近年、いじめや不登校、学力向上など、学校が掲げる教育課題の改善に向け、さまざまな施策が展開されています。しかし、その多くは対症療法的なものに過ぎません。学級からいじめや不登校を減らし、確かな学力の向上を図っていく上で最も効果的な方法、それはクラスサイズを縮小し、教師が1人1人の子供により多くの目をかけられる環境を整えることです。

もちろん、中には高い指導力でもって、小学1年生の40人学級を上手に束ねていける先生はいることでしょう。しかし、若い先生が増えつつある学校現場において、すべての教員に同様の技量を求めるのは厳しいと思われます。

そうした状況を考えれば、なるべく教師1人が見る児童生徒の数は少なめに押さえるべきだというのが、学校関係者に共通する思いなのではないでしょうか。

 

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