Professional の仕事

第 1 回 スクールカウンセラー 束田 恭子さん

教育活動に関わるのは教師だけと思っていませんか?学校は実にさまざまな人たちの支えによって成り立っているのです。「チーム学校」の一員として子供たちの健やかな学びを支える人々に、話を伺いました。

文・黒澤 真紀

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束田 恭子(つかだ・きょうこ)さん
福島県郡山市出身。山羊座B 型。銀行勤務から警視庁警察官となり、出産・育児により退職。1男1女(警視庁勤務)。合気道2段、剣道3段。夫の転勤で伊豆大島で2年間勤務後埼玉県に戻り、法律事務所勤務を経て吉川市少年センター教育相談員に。これを契機に教育相談を10 数年間経験して、栃木県スクールカウンセラーに。現在は、埼玉県と栃木県でスクールカウンセラーを務めるほか、市役所の家庭児童相談員として子育て支援も行っている。

 

―束田さんは、どのような経緯でスクールカウンセラーを目指されたのでしょうか。
私が思春期の子供たちと接するようになったのは、女性警察官だったときに少年係へ配属されたときからでした。万引きや暴行をしてしまった子供たちの調書を取りながら「もうやっちゃいけないよ」と声をかけるのですが、彼らの心の中にまで入り込めないむなしさが残りまして…。その経験が心のどこかにあったのでしょう。結婚、出産を経て警察官を退職してからも「子供たちのためになりたい」という思いを持ち続けていました。

退職後、2年間を伊豆大島で過ごした後、埼玉県の春日部市に移り、「吉川市の少年センターで教育相談の仕事をしてくれないか」と声をかけられたのが、今の仕事に続く第一歩でしょうか。

―その後、スクールカウンセラーになるまでの話を聞かせてください。
少年センターで仕事をする中で気付いたんです。「何事も白か黒かと決めつけてはいけない。グレーという色もあるのだ」と。相談員としてのスキルをもっと向上させたいと思い、放送大学で臨床心理学の勉強を始めました。その過程で、「現場である“学校”に入りたい」と強く思うようになったんです。同じ雰囲気の中にいなければ感じられないことがありますよね。そうしているうちに縁があって、栃木県でスクールカウンセラーを務めさせていただくことになったんです。

それから現在に至るまで、小学校や中学校、高校などでスクールカウンセラーとして相談業務に携わってきました。今はスクールカウンセラーの他に、市役所の家庭児童相談員もしています。

―スクールカウンセラーになるために必要な資格や条件について教えてください。
スクールカウンセラ一応募の要件としては、文部科学省の規定する「臨床心理士」「精神科医」「大学教員」が中心となっています。地方自治体によっては、ガイダンスカウンセラーや学校心理士などの資格や、心理臨床業務または児童生徒を対象とした相談業務の経験も要件として加わっていたり、その準ずる者として心理臨床業務または児童生徒を対象とした相談業務の経験に基づく募集も行われています。スクールカウンセラーになりたいのであれば、まずは各自治体が規定する任用規程を確認しておく必要があります。

私は2005 年に日本カウンセリング学会の認定カウンセラーを取得したほか、学校心理士、教育カウンセラー上級、ガイダンスカウンセラー等の資格を取得しています。

―日々の具体的な仕事内容について教えてください。
中心となるのは相談業務。相手は児童生徒、保護者、先生などさまざまです。相談内容として最も多いのは不登校と対人関係ですね。保護者が教育熱心すぎるあまり、子供に過重なプレッシャーがかかり、期待に応えられない自分を責めて、学校に行けなくなってしまう子供は少なくありません。相談は、相談室(ご自身の名前から「ツカキョンルーム」と呼ばれている)で行うこともあれば、先生と共に家庭へ出向いて行うこともあります。

―子供が会ってくれないことも、あるのではないでしょうか。
そんな時、私の場合は一緒に「UNO」をするなどして、同じ目線から入っていくようにしています。そうして何度も訪問するうちに、布団から出て来なかった子が、座って待っていることもあります。「一人じゃないよ」とのメッセージを子供にも保護者にも伝えるのです。今、大事なのは諸冨祥彦先生の推奨されている「キャリア教育」だと思います。自分づくり、人生づくりの力を、子供たちに付けていきたいと思っています。

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「教育の荒波に飛び込んできた先生方を応援したい」と語る束田さん。
先生方にとっても、よき相談相手となっている。

 

―日々の仕事において、どんなことを心がけていますか?
学校の先生とは、クラスで気になることがあったときに、なるべく情報を共有するように心がけています。また、先生ご自身も仕事のこと、プライベートのことなどで多くの悩みを抱えているので、若い先生の“お母さん役”になることもあります。

この仕事に欠かせないのは、使命感です。私はいつも「この子たちが日本を支えていくんだから、それをしっかり見守ってあげるんだ。子供を取り巻く大人を元気にしてあげなければ」との思いを心に留めています。

―束田さんご自身が感じるスクールカウンセラーの魅力とは何でしょうか?
私の場合、とにかく“人間”が好きなんです。仕事を通じて、子供たち、保護者、先生方の幸せのために尽くすことができます。私にとってこれほど喜ばしいことはありません。子供たちが情報化社会の波に流されず、日本の未来をしっかり築いていける人材に成長するために、サポートしていくことが私の使命だと考えています。

保護者に対しては、共に手を取り合っていくことで、子供たちに良い影響を与えていきたいと思っています。「子育てしながら、親も育つ」ということを身を持って実感しているからこそ、伝えられることがあると思っています。

また、教育の荒波に飛び込んできた先生方を応援したいとの思いもあります。社会人として経験を積み重ねる中で、私自身も成長してきました。これからも、目の前の人がうつむいていたら、ほんの少し顔を上げてもらい、同じ目標に向かっていけるように寄り添っていきたいと思っています。

束田さんのある1 日
8:00 中学校出勤
職員会議出席。各学年、生徒指導情報共有。1時間目から4時間目まで保護者面談。教頭先生、養護教諭、心の相談員と情報共有。
……移動……
13:30 小学校出勤
教育相談主任と打ち合わせ。6年生授業参観。児童の行動観察、面接。担任とコンサルテーション。授業、保護会の進め方の指導。管理職と情報共有。
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