ICTが創る新しい学び

全教室に電子黒板を配備 各教科の授業で幅広くICT を活用

top東京都墨田区立小梅小学校

他校に先駆けて電子黒板を導入するなど、ICT 教育に力を注いできた東京都墨田区立小梅小学校。現在では、全教室に電子黒板や実物投影機を配備し、全教員がタブレット端末を持つなど、ICT のさらなる活用に取り組んでいます。そんな同校でICT 教育の推進役を務める濱宗伸先生の授業を拝見させていただきました。
(文・編集部)

デジタルツールとアナログツールを併用しながら授業を展開

隅田川のほとり、言問橋の近くにある同校は、今年で創立95 周年目を数える伝統校です。「開かれた学校づくり」に力を入れ、地域の人をゲストティーチャーに招いての授業等も展開しています。そんな同校の特色の一つが、ICT の活用です。約6年前に電子黒板を各フロアごとに導入した後、昨年夏には全教室に電子黒板と実物投影機を配備しました。

この日、拝見させてもらったのは、濱先生が担任する6年生の社会科の授業。単元は、歴史の戦国時代です。

「みんな、スクリーンをよく見てね。この人は誰でしょう?」

授業の冒頭、濱先生はそう言うと、スクリーン上部から少しずつ、ある人物の肖像画を表示し始めました。ぐっと身を乗り出す子供たち。肖像画の頭部が半分くらい見えたところで、手が挙がり始めます。

「織田信長!」
「そうですね。この人は何をした人だったかな?」
「安土城を築いた。」
「城下町を作って自由に商売ができるようにした!」

前回授業のおさらいとあって、子供たちから次々と回答が出てきます。信長が明智光秀に倒され、豊臣秀吉が台頭するまでの説明を一通りした後、濱先生は「秀吉が行った政治について調べよう!」と授業のめあてを黒板に書きました。

続いては、教科書の音読。濱先生の指示に従い、児童の一人が本文を読み上げていきます。その間、スクリーンには教科書の該当部分を表示し、子供が手元の教科書とスクリーンのどちらを見ても、内容が把握できるようにしています。

音読が終わると、秀吉がどんなことをしたかについて、濱先生は子供たちに意見を聞きながら、その内容を板書していきます。その間も、スクリーンには大阪城の絵を表示するなど、デジタル&アナログツールを併用した授業が続きます。

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授業の冒頭、肖像画の人物を上部から少しずつ表示させる濱先生。顔が半分ほど現れたところで、子供たちの手が挙がりだします。

 

スクリーンに表示された「検地」の絵に子供たちの“気づき”をマークしていく

続いてスクリーンに表示されたのは、「検地」の様子を表した一枚の絵。

「この絵を見て、気づいたことを挙げてみてください」

濱先生が問いかけると、早速児童の一人から「ほうきみたいな物を立てている人がいる」との意見が出てきました。すると濱先生は、「電子ペン」を持って、その部分に丸印を書き込みます。続いて、「紐みたいなもので、何か測っている」との意見が出てくると、同じくその部分に丸印が入ります。

スクリーンの絵が子供たちの“気づき”で一杯になった後、濱先生は「検地」のやり方とその意義について、説明を始めました。絵を見ながら、あれこれと考えをめぐらせただけあって、子供たちはしっかりと先生の説明を理解できている様子です。

授業の後半、濱先生が「少し時間があるので、ハガキ新聞を作りましょう」と言うと、子供たちから「やった~」と歓声が上がりました。歴史上の人物が残した功績等をハガキサイズの紙にまとめていくという活動です。

「この見本のように、作るときに絵や図表を入れると新聞らしくなります。」

濱先生は、そう言いながら、「ハガキ新聞」の見本を次々とスクリーンに表示させていきます。先生の説明が一通り終わると、早速制作にかかり始める子供たち。ほぼ完成に近づいたところで、授業終了のチャイムが鳴りました。

スクリーンと黒板を効果的に使いながら展開された45 分間の授業。6時間目にもかかわらず、子供たちは集中力を切らすことなく、授業に没頭していました。

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左側のスクリーンと右側の黒板を併用しながら授業が進みます。
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「検地」の様子を描いた絵に、子供たちの“気づき”を書き込んでいく濱先生。

 

最大のメリットは “視覚的な提示”で学習効果が高まること

放課後、この日の授業について濱先生に話を伺いました。まずは、ICT 活用の“効果”について。黒板と教科書だけの授業とは、何がどう違うのでしょうか。

「何より、“視覚的な提示”が効果的になされることで、子供たちの学習効果が高まる点です。例えば、音読の場面では、教科書のどこが読まれているのか、分からなくなってしまう子供がいます。そんな時、読まれている部分がスクリーンに表示されれば、子供はしっかりと内容を追っていけます。また、理科実験などで教師が手本を示す際、子供たちを教壇の前に集めて実演することがあります。でも、40 名近い児童がいると、人だかり後方の子はよく見えません。そんな時、スクリーンに映し出せば、子供たちは席にいながら、じっくりと手順を確認することができます。」

同校の全教室に配備された電子黒板機能付きプロジェクター(以下、電子黒板)は、マグネット式のスクリーンを黒板に貼り付けて使います。上部から投写するため、教師がスクリーンの前に立っても、画面がさえぎられることはありません。「視認性が良く、多少教室が明るくても、支障なく使えます」と濱先生は言います。使わないときは取り外しておけば、黒板全面を使うことができます。

電子黒板は、さまざまな機器から、スクリーンに出力できます。この日の授業も、教科書本文は実物投影機、「検地」の画像はパソコン、ハガキ新聞の見本はタブレット端末から、スクリーンに出力されていました。加えて画面の切り替えは、教室前方のスイッチャーを使って、瞬時にできるようになっています。

「どの教室にも“普通”に電子黒板があって、使い方も難しくありません。“手軽に使える”からこそ、多くの先生が使ってみたいと思うのではないでしょうか」と濱先生は言います。

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蓄積した学習の記録は、授業の復習や他のクラス等で有効活用

ICT 活用のもう一つのメリットとして、学習の記録を蓄積し、再活用できる点を濱先生は挙げます。

「電子黒板には、画面を保存できる機能があります。これを活用すれば、授業の冒頭で、前回授業の学習記録を映し出し、復習をしてから入っていくことができます。」

本校で活用している電子黒板は、付属の「電子ペン」を使用して、画面上に書き込んでいくことができます。この日の授業でも、「検地」の絵に子供たちの気づきを書き込んでいきましたが、こうした学習記録は保存されているので、復習に使ったり、他のクラスで活用したりできます。

ICT の活用は、子供にきめ細やかな指導を行う上でも有効だと濱先生は言います。

「例えば、書写の授業では、実物投影機を使ってスクリーン上で手本を示し、その様子を保存しておきます。その後、保存した映像をループ再生しておけば、子供たちはそれを見ながら書写をすることができます。そうすることで、私自身は子供たちの席へ行って、より丁寧に指導することができます。」

タブレット端末を使って、子供たちが熱心に学習する様子を撮影・録画することもあると濱先生は言います。

「体育の授業では、上手な子供の実演・実技を録画し、他の子供たち見せたりしています。また、子供たちが一生懸命取り組んでいる様子は、保護者面談で見せることもありますが、とても喜ばれます。ICT は授業だけでなく、あらゆる活動で使うことができます。」

 

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タブレット端末はiPad を利用。この日の授業の最後に提示した「ハガキ新聞」
の見本は、ここから出力したものです。
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音読中は、教科書の該当部分をスクリーンに表示します。そうすることで、子供
はどこを読んでいるかを見失わずにすみます。
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今後は、子供たち自身がICT 機器を活用する学習活動などをもっと取り入れた
いと話す濱先生。

今後は子供自身がICT を活用する実践も展開していきたい

同校の全教室に電子黒板が入ったのは、2014 年の夏。約1年近くが経ち、現在は多くの教科で、ICTを活用した教育活動が展開されています。しかし、導入当初から、すべての先生が活用に積極的だったわけではありません。濱先生は、当時をこう振り返ります。

「本校の教員には、1人1台タブレット端末が渡されていますが、導入当初は1日1枚でよいので、これを使って何かを撮りましょうという呼びかけからスタートしました。そうして“使う習慣”を身に付けたことで、多くの先生が『もっと活用してみたい』と思ってくれたように思います。大人も子供と同じで、身近にICT 機器があれば、使ってみたくなるのです。」

国語や算数などの主要教科はもちろん、体育や図工、課外活動などでもICT の活用が進む同校ですが、今後はどのような実践を考えているのでしょうか。

「パソコン室には、1クラス分のタブレット端末があり、無線LAN も整備されています。今後は、1人1台での活用や1台を複数人で共有してのグループ学習なども行っていきたいと考えています。」

電子黒板の活用から始まった同校のICT 活用。先生方の活用力が高まるにつれて、授業の幅が広がり、子供たちのリテラシーも高まりつつあるといいます。

「子供にICT ツールを与えると、あっという間に使い方を覚えてしまいます。私の学級の子供たちは、電子黒板も実物投影機も、完璧に使い方をマスターしています。教師だけでなく、児童生徒がこうしてICT を活用する場面が増えれば、教育活動の幅はさらに広がっていくように思います。」

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