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おすすめ書籍紹介〜今月のテーマ「ホッコリ癒されたいとき」

丸山 匠勇(板橋区立西台中学校)

児童文学と侮るなかれ

『ミラクル・ファミリー』
柏葉幸子=著/2010年/講談社文庫/¥448+税

柏葉幸子、数々の児童文学賞を勝ち得ている作家です。本書にも、たぬき親父・ミミズクの司書・キツネのお嫁さんなど、いかにもファンタジーらしい登場人物が次から次へと登場します。ホッコリと心癒される物語ばかりなのですが、そのもう一歩奥には、人間としての尊厳まで考えさせられるものが潜んでいます。どうぞカラカラと笑いながら、このファミリーたちの醸し出す秘密の匂いを嗅ぎ取ってください。
私はこの中では「『信用堂』の信用」という1編が大好きで、それこそ心が疲れて暗くなってしまいそうなときには、このたった15ページを読んでは癒されてきました。どうぞ児童文学にもどんどん手を伸ばしていってください。

教師のスイッチ

『ジョナサンと宇宙クジラ』
ロバ-ト・F・ヤング=著、伊藤典夫=編・訳/2006年/ハヤカワ文庫SF/¥840+税

私は高校生のころから、何度となくF・ヤングの短編に心癒されてきました。実は当時ヤングの本はほとんど刊行されておらず、あちこちの図書館や古書店に通っては探し回り、最後はとうとうペンギンブックという原書まで探し出してむさぼり読んだものです。
宇宙軍に入隊したジョナサンは太陽系に侵入し小惑星帯をひと呑みにした、怪物のような宇宙クジラの腹の中に呑み込まれてしまいます。しかし、そこでジョナサンが目にした光景は! そして、驚愕の最後3行は!! 今読み直しても暖かい涙がこぼれてしまいます。もしこれでヤングに興味が湧いた方には、やはり名作の誉れ高い『たんぽぽ娘』も紹介しておきます。

子供たちを中心にした超名作短編集

『だれもが子供だったころ』
内海隆一郎=著/1997年/河出文庫/¥600+税(現在、品切れで重版未定)

たった235ページの中に、49もの短編が収められています。1編5ページ程度の作品集なのですが、どれもホッコリと心癒されるだけでなく、考えさせる含蓄に富む奇跡のような短編集です。私の大好きな「二人だけで」という1編はこんな風に始まります。
「窓際の席で外の風景を眺めていた妹の久子が、モゾモゾと躰を動かしはじめた。東北新幹線は、そろそろ福島に差しかかるところである。一時間たらずのあいだに、久子は三度もトイレに立っている。『なんだ、またかよ?』小学四年生の恭一が漫画雑誌から目を上げて、さも面倒臭そうに言うと、『うん。・・・・ジュース飲んだから』」
実に分かりやすく平明な文章ながら、この後どうなるのだろう、と読者を強く引きつけるような出だしです。そして5ページ後には、ホッコリと心癒されるようなエンディングが待っているのです。凄いですよね。しかもそれを49回も味わえるなんて、なんて素敵な短編集でしょうか。どうぞ子供のころに返ったような気持ちで手に取ってみてください。

おまけに、映画の紹介をされている吉田和夫先生の『なぜ、あの先生は誰からも許されるのか』(東洋館出版社)もご紹介しておきますので、目に付いたら是非ご一読ください。

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