最新号の内容 | 教師のための法律相談

教師のための法律相談 〜学校外での迷惑行為。学校の責任は?

教師であり弁護士でもある神内聡先生が、教師の学校での悩みを法律に基づいて解説します。

スクールロイヤー神内聡の
教師のための法律相談

著・監修 神内聡
弁護士・高校教員。教育法を専門とする弁護士活動と東京都の私立学校で高校教師を兼業する「スクールロイヤー」活動を行っている。著作に『スクールロイヤー 学校現場の事例で学ぶ教育紛争実務Q&A170』(日本加除出版)など。また、NHKドラマ「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」の考証を担当。

学校外での迷惑行為。学校の責任は?

通学路にある家の窓ガラスを、児童がふざけて割ってしまいました。「学校の管理責任だ」と言われたのですが、学校にはどんな責任が生じるのでしょうか。

1 指導監督責任は誰にあるか考える

学校と地域社会の関係は今日の教育現場における重要なテーマであり、特に公立学校と地域社会との連携は教育政策上も重視されています。そうした政策を反映してか、設問のように、在籍する児童が地域社会の住民に迷惑をかけた場合、住民からのクレームが学校に寄せられることがしばしばあります。
しかし、結論から言えば、設問のような場合に学校が法的責任を問われることはありません。まず、学校の管理権限は学校外には及びません。児童生徒が学校外の通学路で事故に遭った場合には、「学校の管理下」で起きた事故として日本スポーツ振興センターの災害共済給付が適用されますが、これはあくまでも負傷した児童生徒を救済するのが目的であり、児童生徒が地域住民に加害行為を行った場合とは全く別問題です。
日頃より児童生徒の学校外での行動が不適切であるにも関わらず、対策をとっていない状況で設問のような事件が発生した場合には、学校の指導監督責任が問われる可能性があります。しかし、設問のように、他人の家の窓に石を投げる行為は、社会生活を営む上での基本的な倫理規範があれば、子供でも「いけないことだ」と判断できます。そうした倫理規範の習得は学校ではなく家庭のしつけや教育によって培われるべきものです。
したがって、仮に児童生徒の指導監督責任が問われるとしても、それは学校ではなく保護者になります。そのため、設問のような状況で、地域住民からのクレームが学校に届いた場合、学校としては再発を防止するための注意指導の実施を約束することはできますが、管理責任を負う立場ではないことを地域住民に明確に示すべきです。

2 本人(加害児童)はどうなる?

では、設問のような事件が発生した場合に、法的にはどのような対応があり得るでしょうか。他人の家の窓に石を投げて割った行為は、器物損壊罪の構成要件に該当します。そのため、地域住民が警察に告訴すれば、警察が犯罪として捜査することになります。しかし、設問では14 歳未満の小学生による行為であり、加害児童に責任能力がないため、処罰されません。そのため、「触法少年(法に触れるようなことをした未成年)」として扱われ、少年法及び児童福祉法の適用により、警察による調査と、場合によっては児童相談所の調査が行われることになります。

3 学校と地域住民とのトラブルはよくある

なお、学校と地域住民との間には、しばしばトラブルが発生します。私立高校の事案ですが、隣地居住者が学校に設置されているエアコン室外機の騒音が我慢できる限界を超えているとして学校を訴えた事案があります。この裁判では、学校は「騒音規制法」による「特定工場等」に該当する施設とされ、同法による規制基準を超える騒音が隣地に到達すれば隣地居住者に対する不法行為になる、と判断した裁判例(京都地方裁判所平成20年9月18日判決)があります。
つまり、学校と地域住民との関係は、子供の教育のための「連携パートナー」ではなく「公害を生じさせる迷惑施設と被害者」として扱われる場合もある、ということを学校関係者は認識しておかなければなりません。地域住民であっても、子供を学校に通わせていない住民にとって、学校は教育施設ではなく迷惑施設でしかない場合すらあります。学校と地域住民の関係は、教育政策上で理念的に尊重されるほど、現実は単純なものではないのです。

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