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文部科学省担当官に聞く 学校の「働き方改革」って何?

教員採用試験で出題急増中の「働き方改革」。そもそも一体どんな改革なのでしょうか。詳しく知るために、文部科学省の政策担当官に働き方改革の「基礎知識」をお聞きしました。

(話:文部科学省初等中等教育局企画官 佐藤人海さん)

 

CHAPTER 1
社会に衝撃を与えた
「TALIS2013」の調査結果

―近年、教員の働き方改革が活発に議論されるようになったきっかけは何ですか?

文部科学省は10年ほど前に、「学校現場の負担軽減プロジェクトチーム」を設置するなど、各教育委員会や学校に対して学校現場の負担軽減のための取り組みを促してきました。そのきっかけは、2006年に実施した「教員勤務実態調査」の結果で教員の長時間勤務の実態が分かったことです。さらに、2014年6月に発表されたOECD国際教員指導環境調査(TALIS 2013)の結果により、教員の長時間勤務が広く注目されるようになりました。
TALIS調査によれば、日本の教員の1週間当たりの勤務時間は参加国・地域の中で最長(日本53.9時間、参加国平均38.3時間)でした。
その内訳を見ると、授業時間は参加国平均と同程度でしたが、部活動等の課外活動(スポーツ・文化活動)の指導時間が特に長く(日本7.7時間、参加国平均2.1時間)、また、事務業務に当たる時間も長い(日本5.5時間、参加国平均2.9時間)という結果が出て、日本の教員の多忙化が指摘されたわけです。
日本の学校および教員は諸外国と比較して、広範な役割を担っています。もともと学習指導のみならず生徒指導などの面でも主要な役割をもつという、いわゆる「日本型学校教育」が行われていますが、近年、社会や経済の変化によって、学校が抱える課題は生徒指導上の課題や特別な支援を必要とする児童生徒の増加等により、多様化・複雑化し、ますます学校の役割が拡大せざるを得ない状況も生まれています。ただ、だからといって教員の長時間勤務の実態を放置しておくわけにはいきません。こうして、働き方改革の議論が活発化していきました。

―文部科学省は2017(平成29)年4月にも教員の勤務実態調査(平成28年度)の集計結果(速報値)を公表しましたが、これで分かったことは何ですか?

10年前の前回調査(平成18年度)結果と比較して、小学校も中学校も全ての職種で勤務時間が増加しているという、危機的な状況が改めて分かりました。TALIS調査と同様の結果が見られたわけです。

 

CHAPTER 2
文部科学省が学校における
働き方改革の緊急対策を公表

―教員の勤務実態調査を踏まえて、どのような政策が取られていますか?
教員の働き方改革を実行するためには、まず教員の長時間勤務の要因を見直し、教員が担うべき業務の精選・明確化などを行う必要があります。そのため、文部科学大臣から中央教育審議会(中教審)へ「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」を諮問し(2017年6月)、中教審に「学校における働き方改革特別部会(以下、働き方部会)」を設置し、有識者に議論してもらうことにしました。
中教審の「働き方部会」からは「緊急提言」(2017 年8月)がまとめられ、その後、上記の諮問に応じた「中間まとめ」(2017年12月22日)が出されました。ここでは改革の具体的な方策として示された、次の5つの観点が重要です。

これを踏まえて文部科学省が中心的に実施していく内容を学校における働き方改革に関する緊急対策」(2017年12月26日 文部科学大臣決定)としてとりまとめました。また、これらを踏まえて、学校における働き方改革に関する緊急対策の策定並びに学校における業務改善及び勤務時間管理等に係る取組の徹底について」(2018年2月)を各教育委員会に通知しました。
働き方改革を進めるためには、まず誰が主体的に取り組んでいくのか、業務の役割分担を明らかにすることが重要です。学校や教員が抱えている「業務の仕分け」を行い、そこに教員の「各人の取り組み」が加わることで、学校における働き方改革を実行できると考えています。
また、物理的な環境の整備としては、児童生徒の出欠管理や成績処理などの校務にICTを活用した校務支援システムの導入や、客観的に勤務時間を把握するためのタイムカードの導入があります。さらに、教員以外の専門スタッフ(スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等)、部活動指導員といった外部人材の活用も重要です。
各学校が地域や保護者との連携を一層強化するために、文部科学省としてコミュニティ・スクールや地域学校協働活動等を通じた学校教育の質の向上も進めます。
今後は、研修や人事評価を通じて教員の意識改革も進めます。教員の勤務時間の上限に関するガイドラインも年内に策定する予定です。

 

CHAPTER 3
改革の目的は
「日本型学校教育」の維持にある!

―中教審の「中間まとめ」、文部科学省の「学校における働き方改革に関する緊急対策」について、重要なポイントを教えてください。

まず、今、進められている働き方改革の背景や意義をしっかり理解していただくことが一番大事です。
欧米などには、教員は生徒指導に関わらず、教科指導に特化している国もあります。一方で、前述した通り、「 日本型学校教育」は、教師が総合的な指導を行って児童生徒の人格の完成を目指すというのが特徴です。この日本型教育は、教員が懸命に不断の努力を重ねてきたことで、多くの成果がもたらされ、諸外国からも高く評価されてきました。例えば、PISAやTIMSS などの国際的な学力調査の結果を見ても、日本の児童生徒の学力は、世界トップの水準にあると見て間違いありません。
一方で、教員の長時間勤務も問題になっています。さらに、今年度から移行期間に入っている新学習指導要領に対応するため、カリキュラム・マネジメントやアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)の実現に向けた授業改善にも取り組まなければなりません。小学校では新学習指導要領が完全実施される2020年度から、中・高学年で年間35単位時間、授業時数も増えます。
こうした状況の中で、引き続き日本型学校教育の良さを維持し、しっかりと展開できるようにする必要があります。そして、教員の業務内容を見直すことによって、より児童生徒に向き合う時間を十分に確保できるようにすること、これを目指すことが教員の働き方改革の一番のポイントです。
教員の長時間勤務を見直し、教員自身の健康安全を保持することはもちろん大切です。それに加えて、教員本来の業務である児童生徒に対する学習指導、生徒指導に限られた時間を十分に使えるようにすることで、教育の質を高めていかないといけない。そのための働き方改革ですので、この目的をきちんと押さえていただきたいと思います。

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