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教師のための法律相談 〜長期欠席中の給食費はどうなるの?

教師であり弁護士でもある神内聡先生が、教師の学校での悩みを法律に基づいて解説します。

スクールロイヤー神内聡の
教師のための法律相談

著・監修 神内聡
弁護士・高校教員。教育法を専門とする弁護士活動と東京都の私立学校で高校教師を兼業する「スクールロイヤー」活動を行っている。著作に『スクールロイヤー 学校現場の事例で学ぶ教育紛争実務Q & A170』(日本加除出版)など。また、NHKドラマ「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」の考証を担当。

長期欠席中の給食費はどうなるの?

ケガで長期欠席していた子供の保護者から、「休んでいた間の給食費はどうなるのでしょう?」と質問されました。実際、どうなるのでしょうか?

1 給食業者への発注時期がカギ

給食費は給食を提供してもらう対価として保護者が負担する費用ですが、給食を提供する業者と保護者との間に直接の契約関係はありません。そのため、給食費の法的性質をどのように考えるかは議論があります。
1つは、給食費は各学校の会計(私費会計)として各学校の責任で徴収し、給食業者に支払うという考え方です。もう1つは、給食費を地方自治体の予算に計上する公会計として自治体が直接保護者から徴収し、給食業者に支払うという考え方です。
前者は学校給食制度の沿革に沿う考え方ですが、給食費の徴収事務を事実上教員が行わなければならず、教員にとって多大な負担である点が問題になっています。一方、後者は給食費の徴収事務を教員が行う必要がないことから、近年多くの自治体で採用されていますが、徴収システムの導入に伴うコストの弊害もあります。また、滞納されている給食費を支払督促や裁判で回収する際の債権者を誰にすべきか、給食費の消滅時効期間をどう考えるべきか、といった点でも両者には法的な違いが生じます。なお、海外では給食費をはじめ学校でお金を徴収するのは教員ではなく事務職員です。
設問のように病気やケガ等で長期欠席した児童生徒の、既に納入されていた給食費は、あらかじめ一定時期までに長期欠席する旨が伝えられていた場合、返還されます。つまり、あらかじめ長期欠席することを学校に連絡していなかった場合や、急な病気などで欠席して給食を食べることができなかった場合は、納入していた給食費は返還されません。
給食は学校や自治体が給食業者に発注して提供してもらうので、発注までに保護者が欠席することを学校に連絡していればその児童生徒の分の給食を提供しないことができます。しかし、発注が行われる時点までに保護者が欠席を学校に連絡しなかった場合、給食の提供自体はなされることになるので、たとえ欠席して給食を食べなかったとしても給食費の支払義務は消滅しません。もっとも、この法律論を、保護者が理解しているとは限らないため、実際に給食費の法的性質をどのように考えるにしても、保護者に対して校長または自治体から欠席した場合の給食費の取り扱いを説明しておくことが望ましい、と言えます。

 

2 給食費滞納は教育問題?

前述のような給食費の法的性質は、滞納されている給食費を徴収する際に問題が生じます。そのため、教育行政にとっては、給食費の滞納防止が重要になります。給食費滞納への対応は、子供の貧困状態や経済的に困窮する家庭に配慮し、慎重であるべきとする考え方もありますが、経済的に困窮する家庭に対しては教育扶助の一環として給食費が支給されます。つまり、実際の給食費滞納者は、支払うことができるにも関わらず支払わない者がほとんどです。
滞納を防止する1つの方法は、給食費を前払いにし、支払いがない場合は給食を提供しない(弁当持参を可能とする)対応を定着させることです。給食費を支払えるのに支払わず、弁当も持参させないようであれば、虐待行為であり、児童相談所等が厳正に対処すべきであって、学校が対応すべきではありません。真面目に給食費を支払っている保護者のためにも、学校の善意と子供の権利を濫用して給食費を滞納する保護者を助長させてはなりません。本来ならば起きてはならないはずの給食費の滞納が当然のように発生している状態は、法治国家における教育としては異常であると考えるべきなのです。
学校給食は法制度的には多くの問題をはらんでいますが、公正かつ公平に行われるべき学校教育に密接関連した事業であることを忘れてはいけません。

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