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スイスイ分かる! 「新学習指導要領」スーパーガイド 第8回「小・中学校 道徳」 

大改訂となった新学習指導要領(2017年3月告示)。膨大な内容の中から、試験に出るポイントを12のテーマに分け、専門家が分かりやすく解説していきます。

第8回テーマ「小・中学校 道徳」

著/鈴木 和正(常葉大学教育学部  准教授)

「道徳の時間」から「道徳科」へ

これまで行われていた、いわゆる「道徳の時間」は、「特別の教科 道徳」(以下、「道徳科」という)となり、小学校では2018(平成30)年4月から、教科としての道徳科の授業が行われています。中学校でも2019(平成31)年4月から「道徳科」が完全実施されます。
「道徳科」はこれまでの「道徳の時間」のように、学校の教育活動全体としての道徳教育の「要」であることに変わりはありませんが、教材は従来の副読本や読み物資料だけでなく、検定教科書が使われることになり、また、教科になったことで、評価も導入されました。
それでは、従来の道徳教育と何が変わるのでしょうか。変化のキーワードは、「読む道徳」から「考え、議論する道徳」への転換と言われています。
これまでの「道徳の時間」では、読み物教材の登場人物について、「○○さんの気持ちはどうでしたか」といった、心情の読み取りに偏った指導が行われがちであったと指摘されています。このような人物の心情や感情を推察させるだけの授業では、子どもたちは教師が求める「模範解答」を予測し、授業が形骸化したりマンネリ化したりするようになってしまいます。心情を理解する授業も大切ですが、道徳の授業では実生活で子どもたちが直面する現代的課題(例えば、いじめ問題や情報モラルの問題)に対処するため、自分自身の問題と捉え、ときに意見が対立するような場面にも向き合い、「考え、議論する」授業が必要とされています。
それでは具体的に、小学校を例に新学習指導要領の道徳教育の目標を見てみましょう。

これは、学校における全体的な道徳教育の目標となります。各教科、外国語活動、総合的な学習の時間および特別活動の指導を通じて行う道徳教育も、道徳教育の要としての「道徳科」の指導も、基本的にはこの目標を目指して行われます。次に「道徳科」の目標を見てみましょう。

ここで注目しておきたいのは、道徳教育の目標と道徳科の目標が「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養う」ものと統一されたことです。これまでは別々に立てられていた目標が一本化されることによって、育成すべき資質がより明確になり、理解されやすい形になったといえます。
ただし、ここで、「道徳性」の定義が問題になるのではないでしょうか。『小学校学習指導要領(平成29 年告示)解説 特別の教科 道徳編』によると、「『道徳性』とは、人間としてよりよく生きようとする人格的特性であり、道徳教育は道徳性を構成する諸様相である道徳的判断力、道徳的心情、道徳的実践意欲と態度を養うこと」とあります。この道徳的判断力とは例えば、善悪を判断する能力です。また、道徳的心情とは善を行うことを喜び、悪を憎む感情です。そして、この道徳的判断力や心情を基盤として、道徳的価値を子どもたちが自覚し、実現しようとする意欲や態度を養うことが目指されているわけです。

 

具体的な指導方法について考えよう

小・中学校では、新学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」というキーワードが掲げられ、そのための指導方法の改善が求められています。道徳の授業においても、「問題解決的な学習」や「体験的な学習」などを取り入れ、指導方法の工夫を行うことが示されています。
では、道徳の授業における指導方法の改善とは、具体的にどのように進めていけば良いのかを考えてみましょう。ここでは、先進的な取り組みを実施している千葉大学教育学部附属中学校(以下、「千葉大附属中」と略記)の事例を見ておきたいと思います。

千葉大附属中では大ブームを引き起こしたゲーム「ポケモンGO」にまつわる問題から着想を得て、道徳科の自作教材を作成し、2017年に授業を行いました。
このゲームは、現実空間がゲームの舞台となることから、そのブームの加熱とともに、歩きスマホやながら運転による交通への支障など社会問題が起きました。この実践の特色は、はっきりとしたルールがない中で、生徒自らがどのように判断して行動するのかを考えさせることをねらいとしています。
授業では「どのように行動すればよいか」という中心発問が行われ、単なる登場人物への心情理解にとどまるのではなく、生徒たち自身の価値観が表出できるよう工夫がなされています。また、指導案の共有や授業を公開することで、教員同士が道徳の授業への意識を高めることにも配慮がなされています。
道徳科の授業においては、特別な「型」があるわけではありません。生徒自らが道徳的な課題を自らの問題として主体的に捉え、能動的かつ協同的、対話的な学習活動を通して問題解決ができることを目指しています。

出典:鹿瀬みさ、嶌田陽一、渡辺明日子、加藤幸太、小橋陽一「特別の教科『道徳』における授業の在り方について」『千葉大学教育学部附属中学校研究紀要』第48巻、2018年。

 

道徳科の「評価」について考えよう

最後に、教科としての「道徳科」の評価の問題を考えてみましょう。
そもそも学習における評価とは、児童にとっては、自分の成長を実感したり、意欲の向上につながったりするもので、教師にとっては、指導目標や計画、指導方法を振り返り、改善に取り組むための資料になるものです。「道徳科」における評価も同様で、新学習指導要領では、「第3章 特別の教科 道徳」の「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」の4において,「児童(生徒)の学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し、指導に生かすよう努める必要がある。ただし、数値などによる評価は行わないものとする」と記されています(カッコ内は中学校版)。
これは、道徳科の評価を行わないとしているのではありません。道徳科において養うべき道徳性は、「児童生徒の人格全体に関わるものであり、数値などによって不用意に評価してはならないことを特に明記したもの」(前出・解説書より)だからです。
道徳科の授業は、学習活動である以上、児童生徒の学習状況や成長の様子を適切に把握し評価することが求められます。ただし、道徳性は、「極めて多様な児童の人格全体に関わるものであることから」、「他の児童(生徒)との比較による評価ではなく、児童(生徒)がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め、励ます個人内評価として記述式で行う」(前出・解説書)ことが求められているのです。
また、評価の方向性については、文部科学省の専門家会議がその報告書(「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について」2016年7月)によって、次のようにまとめています。

この報告書が示す評価のポイントとしては、①児童生徒の学習の過程や成果などの記録を計画的にファイル等に集積して学習状況を把握すること(ポートフォリオ評価等)、② 1 回の授業の中で全ての児童生徒について評価を意識してよい変容を見取ろうとすることは困難であるため、年間35 単位時間の授業という長い期間の中でそれぞれの児童生徒の変容を見取ることを心掛けるようにすること、③教員同士で互いに授業を公開し合うなど、チームとして取り組むことにより、児童生徒の理解が深まり、変容を確実につかむことができるようにすることなどが挙げられます。
基本的には、児童生徒一人ひとりの学習状況を把握し、認めて励ますような個人内評価を中心に記述していく評価方法が求められています。

 

次号では「小学校  プログラミング教育」を解説します。
※内容は変更になる可能性があるのでご了承ください。

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