スイスイ分かる!「新学習指導要領」スーパーガイド

スイスイ分かる! 「新学習指導要領」スーパーガイド 第6回「小・中学校 理科」 

大改訂となった新学習指導要領(2017年3月告示)。膨大な内容の中から、試験に出るポイントを12のテーマに分け、専門家が分かりやすく解説していきます。

第6回テーマ「小・中学校 理科」

著/田代 直幸(常葉大学教職大学院教授)

理科の見方・考え方

今回の学習指導要領の理科の改訂の重要なポイントとして、まず目標の表現に注目してみましょう。
現行の小学校学習指導要領での理科の目標は次のようになっています。

自然に親しみ、見通しをもって観察、実験などを行い、問題解決の能力と自然を愛する心情を育てるとともに、自然の事物・現象についての実感を伴った理解を図り、科学的な見方や考え方を養う。

一方、新しい小学校学習指導要領では理科の目標は次のように記述されています。

自然に親しみ、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行うことなどを通して、自然の事物・現象についての問題を科学的に解決するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
⑴ 自然の事物・現象についての理解を図り、観察、実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
⑵ 観察、実験などを行い、問題解決の力を養う。
⑶ 自然を愛する心情や主体的に問題解決しようとする態度を養う。

現行と新学習指導要領の目標では何が違っているでしょうか。
新学習指導要領では、「何ができるようになるか」という観点から、児童生徒に育成すべき三つの資質・能力がすべての教科等の目標に整理されました。理科の目標の中にも、この育成すべき資質・能力が⑴に「知識及び技能」、⑵に「思考力、判断力、表現力等」、⑶に「学びに向かう力、人間力等」という3側面から明確に示されるようになっています。
また、これまで「科学的な見方や考え方を養う」ということが理科の大きな目標でした。しかし、新学習指導要領においては、「理科の見方・考え方」を働かせながら、身に付けるのは⑴〜⑶の資質・能力であるとしています。理科(科学)の見方や考え方は、身に付けるだけでなく、身に付けた見方や考え方をきちんと使う、児童生徒に使う機会や場面を授業中に設定するということが示されたのです。
では、理科の「見方」とは何でしょうか。「小学校学習指導要領解説 理科編」では、下の囲みの通りになっています。

自然の事物・現象を、「エネルギー」を柱とする領域では、主として量的・関係的な視点で捉えることが、「粒子」を柱とする領域では、主として質的・実体的な視点で捉えることが、「生命」を柱とする領域では、主として多様性と共通性の視点で捉えることが、「地球」を柱とする領域では、主として時間的・空間的な視点で捉えることが、それぞれの領域における特徴的な視点として整理することができる。

自然の事物・現象を見る際の視点として、量や質、多様性と共通性、時間や空間などの視点が強調されています。
ここで、「実体的」というのが少し分かりにくいかもしれません。これは、「物質というものには実体がある」ということで、例えば「空気のように目には見えなくても、空気をポリスチレン袋に閉じ込めてみればちゃんと弾力があり、そこにちゃんと実体がある」という見方です。
このような「見方」ができていれば、小学校5年生の水溶液で、水に食塩が溶けてなくなったように見えても、「きっと食塩はなくなってはいない、実体があるはず」というように児童が推論することもできるかもしれません。
一方、「考え方」というのは、問題解決の過程において、どのような考え方で思考していくかということです。これまで学年ごとに目指してきた問題解決の能力に相当する「比較する」とか「関連付ける」とか「条件を整理する」とか「多面的に考える」などが、この「考え方」に相当します。
このことは実はこれまでも重視して指導してきました。ただし、従来はどちらかと言えば教師が「比較してごらん」とヒントを出すようなことが多かったと思います。これから求められているのは、児童生徒が自らが「比較したらどうだろう」とか「関係付ければいいんじゃないか」と考えるようにするという点です。ここがこれまでと、大きく異なる点だと思います。

 

「主体的・対話的で深い学び」とは

主体的というのは、児童生徒が学習に対して自ら取り組んでいる様子がイメージしやすいでしょう。対話的というのも、友人たちと積極的に対話している姿はイメージしやすいでしょう。さて、それでは深い学びというのはどのような姿でしょうか。
中央教育審議会の答申(第197号)には、

習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、①知識を相互に関連付けてより深く理解したり、②情報を精査して考えを形成したり、③問題を見いだして解決策を考えたり、④思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。

(〇数字は筆者が加筆)

と書かれ、深い学びが読み取れる例が①から④のような形で示されています。
理科の授業においては、問題解決(科学的な探究)の過程を体験する中で、「理科の見方・考え方」を働かせる場面を設定して、さまざまな知識がつながって、児童生徒の「素朴な思いや考え」がより「科学的な概念」となっていることが、深い学びとして必要なことです。「主体的・対話的で深い学び」を実現することで、理科の目標に記された⑴〜⑶の育成すべき資質・能力を育んでいくことになります。
そして、授業を受けたことで深化した「理科の見方・考え方」を、児童生徒が次の学習や日常生活などにおける問題発見・解決の場面で働かせているかなどを教師が見取っていく必要があります。児童生徒がどのような場面で「理科の見方・考え方」を働かせることができそうかを把握するためには、「小学校学習指導要領解説 理科編」の第2章「第2節 理科の内容構成」において、図1・図2として示されている「小学校・中学校理科の『エネルギー』、『粒子』、『生命』、『地球』を柱とした内容の構成」などを参考にして小・中学校を通しての単元間のつながりを意識して授業を行うことが大切です。

探究の過程とは

小学校の理科の場合、この探究の過程のことを問題解決の過程と呼んでいます。具体的には、「小学校学習指導要領解説 理科編」には、「問題解決の過程として、自然の事物・現象に対する気付き、問題の設定、予想や仮説の設定、検証計画の立案、観察・実験の実施、結果の処理、考察、結論の導出といった過程が考えられる」として、一例が8つのステップに分けて示されています。これまでも理科の授業の中で、この問題解決の流れを意識して授業をしてきました。新学習指導要領で重視されるのは、これらのステップについて教師だけでなく、児童や生徒も意識して使えるようになることが求められているのです。
小学校でも高学年であれば、今、自分たちが仮説を立てているとか、自分たちの考えを検証するための実験の計画を立てているといったように自らの行動をメタ認知的に捉えることが大切なのです。
児童や生徒の一人一人の思考がこのような探究の過程に沿って行われるよう、教師はさまざまな環境整備や支援等を行い、理科で育むべき資質・能力を児童生徒に育成していく必要があるのです。

※メタ認知:自分の思考や行動・学習過程などを、(意識の中の)もう一人の自分が大局的に把握して認識する能力のこと。

次号では「小・中学校  社会 」を解説します。
※内容は変更になる可能性があるのでご了承ください。

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