教師のそのアクション イイ?ダメ?どっち!?

教師のそのアクション イイ?ダメ?どっち!? 〜市販ドリルの授業での使用

教壇に立つ弁護士・神内聡が一刀両断!
教師であり弁護士でもある神内聡先生が、教師がやりがちなアクションを法規に基づいて解説します。

教師のそのアクション
イイ?ダメ?どっち!?

著・監修 神内聡
弁護士・高校教員。教育法を専門とする弁護士活動と東京都の私立学校で高校教師を兼業する「スクールロイヤー」活動を行っている。担当科目は社会科。著作に『学校内弁護士 学校現場のための教育紛争対策ガイドブック』(日本加除出版)など。

設例7 市販ドリルの授業での使用

同僚が、市販の漢字ドリルを小テストに使うと言ってクラスの人数分コピーしていました。問題はないのでしょうか?

1 授業の過程での使用であっても、条件はある

著作権法第35条第1項は、著作権者の許諾なく著作物を複製することを禁止していますが、例外として、学校で教員と児童生徒が授業の過程において使用する場合には、必要と認められる限度で著作物を著作権者の許諾なく複製できます。しかし、こうしたケースであっても、「著作権者の利益を不当に害する」場合には、複製できません(同法同条但書)。では、設問のような著作物の複製は「著作権者の利益を不当に害する」場合に当たるのでしょうか。
同法同条のガイドライン(「学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法第35条ガイドライン」)は、「児童・生徒・学生が授業を受けるに際し、購入または借り受けて利用することを想定しているものを購入等に代えてコピーすること」は認められないと解しています。例えば、「参考書、問題集、ドリル、ワークブック、資料集、テストペーパー、白地図、教材として使われる楽譜」といった著作物をコピーする場合がこれに該当します。また、複製の部数と態様によっても「著作権者の利益を不当に害する」可能性があり、原則として複製の部数は「通常の1クラスの人数と担任する者の和」が限度とされています。さらに、「同一の新聞・雑誌などのコラム、連載記事を継続的に複製」することは認められないと解されています。以上から、設問のように、市販の漢字ドリルをコピーして授業で小テストとして使用することは、「著作権者の利益を不当に害する」として認められません。

2 「引用」ならば、市販のドリル等も使用可能

しかし、市販のドリルであっても、教員自身の教育力と創造力に依拠した授業の過程でこれらの著作物の一部のみをコピーして学校の教育活動で使用するならば、「購入または借り受けて利用することを想定しているものを購入等に代えてコピーすること」とはただちに評価できないとも思われます。つまり、教員が市販のドリルをコピーした上で、教員自身の教科指導観に基づき編集して別の著作物と評価できるような教材を作成したならば、著作物の複製には該当しないため著作権法に違反しない、と考えられます。
設問でも、教員が市販の漢字ドリルをコピーした上で、児童生徒の理解をより深めるために、易しい問題から難しい問題へと並べ変えるような編集をして児童生徒に配布した場合は、教員が市販ドリルを引用して作成した別の著作物と評価できる可能性があります。
ただし、この場合には著作権法第32条第1項により、市販のドリルの引用が「公正な慣行に合致」しなければなりません。すなわち、教員が作成・編集した教材を全体的に考察して、教員が作成・編集した部分が「主たるもの」であり、市販ドリルを引用した部分が「従たるもの」であると評価できる場合でなければいけないということです。もっとも、「公正な慣行に合致」する引用かどうかは、著作権を専門とする弁護士でも見解が分かれるほど難しい論点です。
なお、仮に市販のドリルのコピーが複製ではなく引用であると認められる場合であっても、著作権法第48条第1項第三号により、「出所を明示する慣行」があれば出所を明示しなければならず、「書名、作品名、著作者名、出版社名、発行年」を明示することが望ましいとされます。

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