スイスイ分かる!「新学習指導要領」スーパーガイド

スイスイ分かる! 「新学習指導要領」スーパーガイド 第5回「小・中学校 算数・数学科」 

大改訂となった新学習指導要領(2017年3月告示)。膨大な内容の中から、試験に出るポイントを12のテーマに分け、専門家が分かりやすく解説していきます。

第5回テーマ「小・中学校 算数・数学科」

著/笛木 茂雄(常葉大学教育学部教授)

 

育成を目指す資質・能力

小学校の新学習指導要領では、「何ができるようになるか」という観点から、育成を目指す三つの資質・能力(三つの柱)が整理されています。三つの柱は次の通りです。
① 何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)
② 理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)
③ どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)
算数・数学科もこの新たな枠組みをもとに整理されています。

言葉による見方・考え方を働かせる子どもとは?

現行(旧)小学校学習指導要領の算数科の目標では「算数的活動」という表現が用いられてきましたが、新学習指導要領では「数学的活動」と改められ、小・中・高を通じてじっくり、しっかりとした数学力(数学を用いて諸問題を考える力)を育成・錬成することが求められています。数学的活動とは、「事象を数理的に捉え、数学の問題を見いだし、問題を自立的、協働的に解決し、解決過程を振り返って概念を形成したり体系化したりする過程」のことを指しています。
算数科の目標の冒頭には「数学的な見方・考え方を働かせ」ることが掲げられています。これは「事象を、数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉え、論理的、統合的・発展的に考えること」で、学習指導の前提になります。この「数学的な見方・考え方」は、先の三つの柱のすべてに働くものであり、各学年の目標もこの三つの柱に対応させた記述になっています。加えて、新学習指導要領では、学習指導の過程に数学的な問題発見や問題解決の過程を重視することが求められています。
これまでも思考力・判断力・表現力等の育成を目指し、問題解決型の授業が行われて成果を上げてきました。しかし、問題理解⇒自力解決⇒全体検討⇒まとめの各段階を形式的に踏む「直線的な思考過程」をたどったり、子どもが考えるべきことを教師が替わりに解説してしまったりといった、コンテンツ・ベース(知識・技能の習得を重視すること)の授業も見受けられました。新学習指導要領では、「知識及び技能」と「思考力・判断力・表現力等」で整理され、「何に着目するか」「何を考察するか」とよりコンピテンシー・ベース(資質・能力の育成を重視すること)で整理された、「循環的な思考過程」の育成が要求されています。このプロセスは以下のように示されています。

新学習指導要領(平成29年3月告示)

「知識及び技能」は、「思考力・判断力・表現力等」を支えるための重要な要素です。子どもたちにはまず、この「知識及び技能」を定着させることが必要ですが、その過程においては、既習事項と新たに習得すべき事項とを関連づけていくことが求められます。したがって、単元構想・授業づくりにおいては、これまで子どもたちに培ってきた数学的な見方・考え方(既習事項)をこれから扱う単元でどのように働かせていくかを考えていきます。
小学校2年生「かけ算」の授業を例に、単元構想・授業づくりを考えてみましょう。

ものが何個あるかを知るために、数を頭に浮かべます(ものと数の1対1対応を考えます)、これは順番に並べ直して数え上げていく操作です。「同じ(個)数AのものがP個あったら全部で何個になるのでしょう」を考えることが「かけ算」の概念を考えることになります。

 

かけ算の構造を考えさせる

代表的な指導の流れは、①「乗法の意味理解」⇒ ②乗法九九⇒③乗法の活用⇒④簡単な2位数の乗法、というものです。
かけ算の学習では、九九を何度も唱え暗唱し覚える学習も知識及び技能の習得として重要です。ただし、今後はより、左ページで示したかけ算の構造と概念図のように、「学習場面から見いだした問題を、図や式などを用いて解決する数学的活動」も求められます。すなわち、かけ算の意味に基づいて計算の仕方を考え、かけ算に関して成り立つ法則や性質(交換法則や分配法則)を子ども自身が発見的に考察する数学的活動です。子どもが段階的に自力で九九の構成ができるような単元構想も必要です。

例えば、5以下の自然数同士のかけ算の答えを求める場合は、かけ算の構造を考えれば 、ある意味自然な解決法として、両手を用い、指を折って数え上げ確認して求めれば良いでしょう。
しかし、巨大な数まで簡単・便利に、機械的に扱えるようにするには、かけ算の構造をより構成的に見直し、九九表(各段の答え)を作る指導が必要となります。例えば、5の段を考えてみましょう。

このように表現すると、「5×4の答えは、前の5×3の答えに5の段の5を足せばいい」とか、「5×4の答えは、2×4の答えと3×4の答えを足せばいい」
●5×4=2×4+3×4
というように構造を直視させることができます(多くの先行研究で紹介されているので確認しましょう)。

 

 算数科における「対話的な学び」

算数・数学の授業において、子どもたち同士の協働学習を取り入れた「対話的な学び」も、今後はより一層求められます。算数・数学にとっての「対話的な学び」とは、さまざまな事象を図や数、式などの数学的な表現を用いて論理的に説明したり、話し合いを通じて事柄の本質を明らかにしたりすることです。子どもたち一人一人が自分の考えを表現する活動や、それをクラス全体で共有しつつ、より数学的に洗練された表現に高めるような活動を設けることが重要となります。
その際、子どもたち一人一人の個のアイデアや式の表し方、発見のプロセスをお互いに認め合う体験と、教師から褒められる体験を、個とクラス集団それぞれにさせることが期待されます。
授業後には、新たな知識や技能の習得だけに留まらず、数学的な見方・考え方をより一段高め、日常生活や社会で活用できる場面を考えることも求められています。

 

次号では「小学校・理科 」を解説します。
※内容は変更になる可能性があるのでご了承ください。

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