映画・ドラマに学ぶ教育の本質 | お知らせ

「幸福な食卓」

 

2007年/日本/108分
監督:小松隆志  原作:瀬尾まいこ  音楽:小林武史
キャスト:北乃きい、勝地涼、平岡祐太 他

元中学校国語教師が描く、ある家族の物語

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

 どこの家庭にもさまざまな事情があり、いつの時代も子どもたちはそうした事情の中で懸命に生きている――そんな風に感じさせる映画です。

本作は、第26 回吉川英治文学新人賞に輝いた瀬尾まいこ氏の同名小説(2004 年講談社刊)を映画化したもの。映画のキャッチコピーは「やさしい気持ちになりたいすべての人に贈る、この冬一番の感動作」です。学校教育だけでは、子どもに関わるすべてのことを解決できません。しかし、一人の児童生徒の背後にある、家庭環境の違いを知り、それに寄り添うことが大切だと改めて感じます。そうした意味でも、ぜひ一度観ていただきたい映画です。

「父さんは、今日で父さんを辞めようと思う」。

始業式の朝、家族の食卓で、突然父が口にした意外な一言。主人公の女子中学生・佐和子の中学校生活最後の1 年は、ここから始まります。

自殺未遂の後に教師を辞めた父、専業主婦で現在は別居中の一人暮らしの母、高校では伝説の優等生だったのに大学進学を辞めて農業をやっている兄、そして佐和子の4 人は、何かをするときに朝食の食卓で「宣言」をする、ちょっと不思議な家族。3年前のある日、父が風呂場で自殺を図って以降、家族の歯車は少しずつ狂い始めました。そうした状況の中でも、朝の食卓はありましたが、突然の父の「宣言」に、高校受験を前にした佐和子の心は揺れ動きます。そんな佐和子の前に現れたのが、転校生の大浦勉学。大らかでストレートな彼の存在は、次第に佐和子にとって大きなものとなっていきます。

その後、佐和子と彼は二人で同じ高校を目指し、同じ塾に通い、合格。互いに支え合いながら、学級委員の仕事にも取り組みます。そして、恋人同士になった二人はお互いのクリスマスプレゼントを用意するのですが…。

崩壊しつつある家族を健気に支えてきた佐和子に起こる突然の悲劇。しかし、その悲劇がきっかけとなり、家族一人ひとりが再生への道を歩み始めます。

作家の瀬尾まいこ氏は大学卒業後、中学校の国語講師を9年間務めた後、2005 年に教員採用試験に合格。その後2011 年に退職するまで、中学校の国語教諭として勤務しました。『幸福な食卓』を執筆したのは2005 年ですから、講師として勤務しながら書き上げたことになります。

これは実にすごいことです。私自身、中学校の国語教師でしたから、授業や教材研究、評価、生活指導や部活動顧問の傍ら、平日の夜や土日に執筆活動を行うなど、至難の業です。よほど時間管理が上手いのか、手抜き(?)が上手いのか、あるいは「仕事に愛された奇跡」なのか…。

瀬尾氏の小説やエッセイは、文体が実に柔らかく、優しく、ほんわかとした感じがして、私は好きです。ずっと以前、ある国語教科書の編集委員を務めていた頃に、まださほど有名ではなかった瀬尾氏の作品を教科書教材にと提案したことがありましたが、残念ながら採用されませんでした。後に他社の教科書に採用され、ちょっと悔しい思いをしたものです。

映画はもちろん、瀬尾氏の原作も面白いので、ぜひ読んでみてください。

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