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おすすめ書籍紹介〜今月のテーマ「傘」

丸山 匠勇(板橋区立西台中学校)

「掌」には入りきれない122編の小説群

『掌の小説』
川端康成=著/1971年/新潮文庫/¥890+税

最近の若い方々は川端康成を読んだりするのでしょうか?日本人初のノーベル文学賞受賞者、代表作『雪国』『伊豆の踊子』といった知識はお持ちのこととは思いますが、実際に手に取られた方は少ないのではないでしょうか。なんとなくとっつきにくい、分かりにくい、古くさい、そんなマイナスのイメージがややもすると定着しかかっているのかもしれません。しかし、川端康成は本当に一筋縄ではいかない、とても深くて奇妙な作品を多々書いているのです。特に男女の機微や仄暗い情感を書かせては天下一品。
この『掌の小説』の中の「雨傘」はたったの2ページしかありませんが、別れゆく少年少女の秘められた慕情を、たった一本の雨傘で描き出しています。本書は、川端康成の凄さが凝縮されていますので、どうぞどのページからでも読んでみてください。また、川端康成と三島由紀夫の不思議な関係の後日談として、工藤美代子『もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら』の中の「三島由紀夫の首」がありますので、興味を持たれた方はそちらも是非どうぞ。

 

豪腕の詩人、金子光晴の反戦詩集

『女たちへのいたみうた-金子光晴詩集-』
金子光晴=著/1992年/集英社文庫/¥480+税

教師になろうと志している方にとって、どうしても欠かせない素養として平和への思いがあると信じています。私も毎年平和教育の一環として、いくつかの詩を生徒に紹介し続けています。中1には金井直「木琴」、中2には原民喜「水ヲ下サイ」、そして中3にはこの詩集の「落下傘」を。どれも次の世界を担う子供たちには、知っておいてもらいたいものばかりです。「落下傘がひらく。じゆつなげに、」という表現は分かりにくいかもしれませんが、そこに打ち出された危うさ、頼りなさ、不安感といった厭戦気分を味わってみてください。これを期に、今や忘れ去られようとしている詩人、金子光晴の諸作品を再発見してみませんか。

 

温かさが伝わる絵本

『かさ』
太田大八=作・絵/2005年/文研出版/¥1100+税

今回は川端康成、金子光晴とやや重い本を紹介しましたので、3冊目は軽いものを、と思い絵本を選びました。
実はこの絵本には、言葉が一つも出てきません。その上、色も黒と赤の2色しか使われていません。しかし、ここからは父と娘(まだ小学校低学年と思われます)の間に流れている温かさがひしひしと伝わってきます。まったくセリフがないので、それに言葉を付けていく、といった授業も展開できます。
雨降りの日に傘を持ってお父さんのお迎えに行く少女の心境はどのようなものだったのでしょうか?雨で誰もいない公園、雨の中でも楽しそうに池を泳いでいくアヒルの家族、ケーキ屋さん、オモチャ屋さん、それぞれの場面での心情を考えるだけでも楽しくなってきます。そして帰り!大人になってもいつまでも手元に置いておきたい絵本です。

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