教職探検隊

学校にまつわる謎を解け!教職探検隊「教員採用試験の移り変わり」

このコーナーは、学校や教育にまつわる、知っていそうで知らない素朴な疑問を解き明かすもの。編集部による「探検隊」が、教職のプロ・高野敬三先生の元へ「遠征」します。
今月の謎は教員のズバリ「教員採用試験」。当たり前のように受験している教員採用試験ですが、何を目的としているか、じっくり考えたことはありますか?

監修 高野 敬三(明海大学副学長)
1977年に都立高校英語科教員となる。都教育委員会理事、都教職員研修センター所長、都教育監などを歴任し、2016年より現職。

「一定の質」がないと受験すらできない試験

(以下 高=高野先生、隊=探検隊員)
隊1:高野先生こんにちは、4月に入って、2018年度が始まりましたね。
隊2:各自治体も2018年夏実施の試験日程や実施要綱を発表し始めています。
高:いよいよ試験本番の時期に突入だ。各自治体も慎重に慎重を重ねて準備を進めているだろうね。
隊1:単純な疑問なんですが、教員採用試験って、何で自治体ごとに違うんですか。
高:これは、教育職員免許法の規定によるものだ。同法第6条で「教育職員検定は、受検者の人物、学力、実務及び身体について、授与権者が行う」とある。
隊2:授与権者って、教員免許を与える人、つまり各都道府県教育委員会ということになるわけですね。
高:その通り。そして政令指定都市は、都道府県教育委員会から教員の人事権を委任されるから、政令指定都市の中には独自で実施するところもあるというわけだ。
隊1:「人物」「学力」「実務」「身体」って、いろんなことが見られているんですね。
高:教育は国の根幹。それほど教師の仕事は重たいものであることの証とも言える。そもそも、教員採用試験は、教員免許を持つ人か、取得見込の大学生しか受験ができない。つまり、教職課程を学んで「一定の質」が保証された人物にのみ、受験が許されているということだ。
隊2:教員免許を持っている人は、誇っていいですね!
高:大学の教職課程は大変だし、学生諸君にとっては辛いときもあるだろう。でも、これも「質」を確保するためのもの。受験生は、まず第一段階の「ふるい」は通過したのだと、自信にしてほしいね。

 

試験内容は学習指導要領とともに
変わってきた

隊1:ところで、各自治体は試験の内容をどうやって決めているんでしょうか。
高:国の教育方針や、求める教師像など、さまざまなことを総合的に勘案して決めていることだろう。その中でも、特に学習指導要領の影響は大きい。特に、専門教養は、学習指導要領の改訂によって、試験内容ががらりと変わることもあるほどだ。
隊2:過去にそういうことがあったのですか?
高:うん。例えば、私の専門である高校の英語を例に挙げると、平成元年の改訂の際には、それまで「読み」「書き」が中心だったのが、「オーラル・コミュニケーション」が加わった。
隊1:今では当たり前の授業ですけど。
高:うん。だが、当時はそのような考え方はあまり一般的ではなかった。教員にも知識がなく、教育界はまるで「黒船」が来たような騒ぎになった。
隊2:先生方はこれに対応しなくてはいけません。
高:現場の先生方だけでなく、各教育委員会も対応する必要がある。この結果、教員採用試験でも、オーラル・コミュニケーションについて出題する自治体が激増することになったんだ。
隊1:具体的には、どんな出題が増えたのですか?
高:筆記試験ではコミュニケーションを扱う問題が増え、模擬授業を取り入れたところや、英語でのプレゼンテーション試験を実施するようになった自治体もあった。
隊2:へー、当時の受験生は新たなことを学習しないといけなかったということですね。
隊1:そして今も、学習指導要領の改訂時期です!
高:そうだ。これでまた教員採用試験も変わっていくだろう。今号の『教セミ』の特集は学習指導要領を扱っていると聞いている。読み込んで、どこが変わったのかは、しっかり対策して試験に臨んでもらいたい。

 

各試験では何を見ているのかおさらい

隊2:先ほど、教育職員免許法では、受験生の「人物」「学力」「実務」「身体」を見ると規定していると伺いました。具体的に、各試験で問われているのは、どんなことなのでしょうか。
高:まず「学力」は筆記試験で問うのは想像しやすいだろう。「実務」は論理的思考力や文章力も含むので論作文で問われる。「身体」は実技。そして「人物」は、面接で問われるだろう。
隊1:面接には個人面接と集団面接がありますが、見てるところに違いはありますか?
高:うん。個人面接では、受け答えの仕方を通じて、人物を見極めようとしている。例えば、漠然とした質問をした際に、どんな態度をとるかということだ。集団面接では、協調性と独自性の両方をはかっている。つまり、他者の発言を尊重しながら、自分をどう表現できるかということだ。

 

「人物重視」の傾向が強まっている

高:ここまで、教員採用試験の変遷やポイントについて説明してきたが、実は、僕が本当に受験生に伝えたいことは、「試験対策」の重要性ではないんだ。
隊2:どういうことでしょうか。
高:教員とは、ただ子供に知識や技能を伝達する存在ではない。子供たちの「人間形成」を目指すのが、本当の教育だ。
隊1:はい!
高:だから、教育現場においても、かつて多く見られた「技法人間」のような教師では、通用しなくなってきている。だから、教員採用試験も、人物を見る面接の比重が高まってきているんだ。
隊2:人物重視の傾向が強まっているんですね。こう聞くと、受験生の中には、果たしてどうしたら「人間性」を磨くことができるのか、悩んでしまう人も多いのではないかと思います。
高:うん。「人間性」は一生をかけて身に付けていくものだし、何か具体的なことをすれば磨けるというものでもない。
隊1:では、受験生は、結局は「ありのまま」で勝負するしかないということでしょうか?
高:いや、決してそうではない。受験生には、「教育とは何か?」ということを、とことん突き詰めて考えてほしい。教育は、下手をすると人を誤った方向に導く可能性もある。教育の恐ろしさも含めて、とことん考え抜く。考えを深めた上で発言すれば、面接でどんなに意地悪な質問をされても、絶対に発言の趣旨はぶれないし、自然と重みを感じさせられるはずだ。
隊2:自分の言葉で語れる人物は、面接官の目にも魅力的に映るでしょうね。
高:その通りだ。受験誌の誌面で語るのは恐縮だが、参考書で読んだ模範回答を、そのまま話す受験生は、まったく魅力がない。大事なのは、回答の中身そのものではなく、どれだけ自分が物事を考えてきたかを表現することだ。
隊1:受験生には、ぜひこのアドバイスを頭に入れておいてもらいたいですね。
隊2:高野先生、ありがとうございました!

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