教師のそのアクション イイ?ダメ?どっち!?

教師のそのアクション イイ?ダメ?どっち!? 〜部活動と私的な予定が重なってしまいました!

教壇に立つ弁護士・神内聡が一刀両断!
教師であり弁護士でもある神内聡先生が、教師がやりがちなアクションを法規に基づいて解説します。

教師のそのアクション
イイ?ダメ?どっち!?

著・監修 神内聡
弁護士・高校教員。教育法を専門とする弁護士活動と東京都の私立学校で高校教師を兼業する「スクールロイヤー」活動を行っている。担当科目は社会科。著作に『学校内弁護士 学校現場のための教育紛争対策ガイドブック』(日本加除出版)など。

設例5 部活動と私的な予定が重なってしまいました!

好きなアーティストのコンサートがあるのですが、顧問をしている部活の試合日と重なってしまいました。「コンサート」というのは気まずいので、理由を伏せて有給休暇を取得し、引率を代わってもらうのは、まずいでしょうか。

1 法律的には、休暇取得の理由は伏せてもOK

労働基準法第39条は使用者に対して、一定の条件を満たす労働者に対して年次有給休暇を与える義務を定めており、この規定は教員にも適用されます。有給休暇は労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するという趣旨で労働者に権利として与えられているものであり、最高裁判所は「休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である」と示しています(最二小判昭和48 年3月2日)。したがって、設問のように好きなアーティストのコンサートに行くことを理由に有給休暇を取得することに全く法的問題はありません。
また、使用者が労働者の有給休暇の利用目的を聞くことは違法ではないかもしれませんが、労働者が利用目的を知らせなかったとしても法的問題は生じないので、理由を伏せて有給休暇を取得することも何ら問題ありません。

2 休みは権利!
ただし、業務運営への影響は考慮される

しかし、使用者は労働者が請求した時季に有給休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」には、他の時季に与えることができ、これは「時季変更権」と呼ばれます(労働基準法第39条第5項但書)。ここでの労働者の請求は「有給休暇の時季の指定」という意味です。また、最高裁判所は、使用者の時季変更権の行使については使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ないが、労働基準法第39 条の趣旨に沿う合理的なものでなければならず、使用者の判断が同条の趣旨に反し、使用者が労働者に休暇を取得させるための状況に応じた配慮を欠くなど不合理であると認められる場合は、時季変更権を行使できない、と解しています(最三小判平成4年6月23日)。その上で、教員に対する時季変更権の行使については、「校務の繁閑、その教職員の学校における職務上の地位、担当する職務の内容、代替要員確保の難易などを総合的に判断した上で、時季変更権を行使するか否かを決める」とする見解があります(菱村幸彦『Q&Aスクール・コンプライアンス111 選』P.53)。
設問では、質問者である教員の有給休暇の時季指定が、部活動顧問業務と衝突しています。しかし、引率を代わってもらえる教員がすぐに見つかるのであれば学校は時季変更権を行使できません。また、有給休暇の目的がいかなるものであっても「事業の正常な運営を妨げる場合」には該当せず、時季変更権の行使で考慮されることはありません(上記最高裁判例では組合活動を目的とする有給休暇に対して時季変更権の行使は認められませんでした)。引率を代わる教員を探すのも、本来は有給休暇を取得する教員ではなく学校が行うべきことです。
もっとも、引率を代わってもらえる教員がいない場合であっても、現行の学校教育法の下では教員ではなく部活動指導員が試合の引率を含む部活動の指導を担当できることから(学校教育法施行規則第78条の2参照)、今後は学校が部活動職員の導入を検討せずに部活動顧問業務に関して時季変更権を行使することは、法的に極めて難しいと言わざるを得ません。むしろ、部活動に参加する生徒や保護者も、教員が労働者であって理由の如何を問わず当然に有給休暇を取得する権利がある立場であることを理解しなければならない、と言えるでしょう。

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