教師の本棚 | おすすめ書籍

おすすめ書籍紹介〜今月のテーマ「旅」

遠江 久美子(町田市立鶴川第二中学校主任教諭)

あなたの旅を大切に

『ローカル線で行こう』
真保裕一=著/2016年/講談社文庫/¥880+税

この小説を読み終えると、「もりはら鉄道」への憧れが広がり、架空の鉄道なのに乗ってみたい気持ちが大きく膨らんだ。主人公は篠宮亜佐美、31歳。年に2億の赤字を出し存続が危ぶまれている「もりはら鉄道」の再生を託された地元出身の元新幹線カリスマ・アテンダントだ。「お金がないなら、知恵を出すのよ!」バイタリティ溢れる彼女の言動に社内も活気づくが、次々に邪魔が入り、何度も苦境に立たされる。それでももがいて前に進む豪快な姿に心がスッキリする1冊だ。そして私にとっては大切な人を思い出させた1冊でもあった。
教師にとって、「旅」とは同僚や生徒との「出会いと別れ」ではないかと思う。その中で私には忘れられない校長先生がいる。学校のトップで、学校の活気や雰囲気は大きく変わるというが正にその通りだった。
先生との初対面での会話は衝撃的だった。会ったばかりの私への第一声が「僕は癌だ。でもやりたいことはすべてやる」。その物凄い信念と勢いに私は圧倒されていた。そして本当に病気なのかと疑った。彼は「有言実行」のかたまりだった。新しい修学旅行を計画し実行したり、大きなバイクにまたがり下校指導に出かけたり、卒業式の式場に校庭の咲きかけの桜の大きな枝をのこぎりで切って飾り、ストーブをガンガンたいて満開にさせたり、彼の行動は大胆かつ周りの教師を常にあたふたさせた。しかし、学校は活気づいた。その無茶振りとは逆に病気は進行していった。入退院を繰り返し、自分を奮い立たせ、最後に学校に来たときは酸素ボンベをぶら下げ、両方の鼻にチューブが入っていた。それでも彼は生徒に近付き、「ヨッ!」と笑顔で声を掛けていた。その姿を見て、私は目尻にたまった涙の粒を指で押さえながら、「あなたの1番大切な場所は学校なのですね?」と独り言を言ってみた。
それから数日後、先生は亡くなった。雲一つない綺麗な青空の日だった。亜佐美と校長先生が重なり合い、凄いパワーで私に語りかける。「あなたの旅を大切に」と。

 

人生に迷ったとき、開いてみませんか

『旅する名言 最高の自分に出会う63の言葉と絶景』
2015年/リベラル社/¥1100+税

旅の目的は人さまざま。人はどんなときに旅をしたいと思うのか?のんびりと美味しい物を食べたいとき、失恋したとき、自分を変えたいときなど色々だ。「人生に迷ったとき」、そんなときに是非手にとって貰いたい1冊がある。
本書は世界の絶景とともに大きな成功を収めた経営者や歴史を動かした政治家や努力を続けるアスリートなどの言葉が一緒に添えられている。パッと開いたページが今の貴方への助言となり、力になってくれること間違いなしの1冊。
そう、私はこの本の1ページに、自分の教師としての自己満足を一瞬にして吹っ飛ばされた。スティーブ・ジョブスの「点はいつか線になる」という言葉が突き刺さり、パラオはいつか行ってみたい場所になった。時に人は、短い言葉と1枚の写真から多くを教えられる。

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