教職探検隊

学校にまつわる謎を解け!教職探検隊「授業以外の教師の仕事」

このコーナーは、学校や教育にまつわる、知っていそうで知らない素朴な疑問を解き明かすもの。編集部による「探検隊」が、教職のプロ・高野敬三先生の元へ「遠征」します。
今月の謎は教員の「働き方改革」。最近メディアでもよく教員の多忙が話題になっていますが、実際どうなの? 探検隊は、長年教育行政に携わった高野先生のお考えをズバリと聞いたようです。

監修 高野 敬三(明海大学副学長)
1977年に都立高校英語科教員となる。都教育委員会理事、都教職員研修センター所長、都教育監などを歴任し、2016年より現職。

そもそも「働き方改革」はなぜ必要?

(以下 高=高野先生、隊=探検隊員)
隊1:先月号では、教員の「授業以外の仕事」についてお話を聞きました。
隊2:校務分掌や委員会、部活動など、たくさんの仕事があって、先生方ってとても忙しそうと思いました。
高:率直に言って、教師が忙しいのは確かだ。学校の「働き方改革」が議論されるのも当然の流れだろう。
隊1:「改革」が必要とされるなんて、不安に思っている受験生も多いのでは?
高:うーん。「改革」と聞くと、まるで現状が「悪い」という印象を受けるのも分かるし、変えるべき点があるのも事実だ。でも、学校の場合は大きな視点で見ると、現状の「良さ」を「保つ」ための改革とも言える。
隊2:「保つ」のに「改革」?どういうことですか?
高:うん。まず、日本の教育は、欧米などの先進国と比べても、非常にユニークだ。欧米の学校では、一般的には生徒指導や生活指導もないし、教師は授業以外であまり子供たちと関わらない。でも、日本の教師は「人を育てる」ことが求められる。試験でも頻出の教育基本法の第1条は覚えているかな。
隊1:「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」です!
高:覚えていて安心した。そう、教育は「人格の完成」を目指す。つまり、授業で教えるだけではなく、全人格的に子供を育てることが求められているんだ。
隊2:日本の先生は、給食から休憩時間、放課後まで子供たちと濃密な時間を過ごしてますもんね。
高:これを「日本型教育」と言い、これまで多くの成果をもたらしてきた。例えばPISAやTIMSSの結果を見ても、日本が上位にあるのは、受験生なら知っての通り。日本型教育は効率がよいと言えるんだ。
隊1:でも今、先生方の多忙化が問題になっているから、日本型教育はよくないんじゃないですか。
高:それは一面的な見方だ。2017年12月22日に、中央教育審議会(中教審)が働き方改革の「中間まとめ」を発表したが、そこに働き方改革の背景と意義が書いてある。読んでごらん。
隊1:「『日本型教育』を維持し、新学習指導要領を実施するには、教師の業務負担の軽減が喫緊の課題(概要より抜粋)」。
高:つまり、今まで通りの教育の質を保つために教師の負担を減らすというのがこの改革の目的。働き方改革を語るなら、まずこの大前提を押さえるべきだ。

働き方改革で軽減を目指す教師の業務とは?

高:次に、教員の勤務実態を見ておこう。国の「教員の勤務実態調査」によれば、小学校の約34%、中学校約58% の教員が過労死ラインの80 時間の時間外勤務を行っている(2016年度)。
隊2:熱心な先生には頭が下がりますが、心配です。
高:同感だ。前述の「中間まとめ」では、学校が抱える課題はより複雑化・困難化していることや、教師の長時間勤務の実態を認めた上で、学校・教師が担う業務と、そうでない業務に、次のような線引きをしている。

●基本的には学校以外が担うべき業務
①登下校に関する対応
②放課後から夜間などにおける見回り、児童生徒が補導されたときの対応
③学校徴収金の徴収・管理
④地域ボランティアとの連絡・調整
●学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務
⑤調査・統計等への回答等(事務職員等)
⑥児童生徒の休み時間における対応(輪番、地域ボランティア等)
⑦校内清掃(輪番、地域ボランティア等)
⑧部活動(部活動指導員等)
●教師の業務だが、負担軽減が可能な業務
⑨給食時の対応
⑩授業準備
⑪学習評価や成績処理
⑫学校行事の準備・運営
⑬進路指導
⑭支援が必要な児童生徒・家庭への対応

隊1:先生はたくさんのことをやってきたんですね!

元行政トップの高野先生が語るリアルな「働き方改革」

隊2:高野先生は、東京都の元教育監。つまり、都の教育行政の責任者も務められました。元行政マンから見て、「中間まとめ」で示された案はどう感じますか?
高:基本的には同意だが、いくつか異論もある。まず①〜④はその通りだろう。⑥〜⑧は外部人材が入るのは賛成だが、教師がまったく関わらないのは疑だ。なぜなら、⑥休み時間や⑦清掃などは、子供たちの人格を育む役割も果たしてきたからね。
隊1:⑧部活動は、やりがいを感じている先生や、積極的な保護者もたくさんいると聞きます。
高:その通り。部活を通じて、子供たちの心を育ててきた先生からも異論が出るだろう。休日を潰さないよう、関わり方のバランスが大事になるだろうね。
隊2:⑨〜⑭はどうですか。
高:これらは賛成だ。特に⑭は重要だ。子供たちの心の悩みに向き合う教員は、自身の負担も大きい。スクールカウンセラーを積極的に導入すべきだ。

高野先生が考える改革の本丸は「調査統計」

隊1:あれ、⑤調査・統計等への回答についてのコメントが抜けてますけど。
高:よく気が付いた。実は、僕はこれが最も煩雑で負担の大きい仕事で、「学校以外が担うべき業務」に分類すべきだと思っている。
隊2:一体どんな仕事なんですか?
高:学校では、毎年決まった統計調査がたくさん実施される。その上、例えばいじめ事件や体罰など、社会を揺るがす事件が起きると、国はさまざまな調査を実施する。調査は、国→都道府県→市区町村→学校(管理職)→学校(教諭)へと降りてくるわけだが、都道府県→市区町村へ降りる際、必ずと言ってよいほど「ついでに」という感じで独自の調査項目が加わる。
隊1:一番割りを食うのは現場の先生……。
高:その通り。上は命令するだけだが、この調査統計が、どれだけ現場の時間を奪っていることか。僕が行政にいたときにはこの弊害を実感し、調査統計の3割減を掲げ改善に取り組んだよ。
隊2:無駄な事務作業は辛いですもんね!
高:これ以外にも、タイムカードや残業代など、働き方改革で議論すべき問題はたくさんあって、この紙幅ではとても足りない。でも、働き方改革で実現すべきなのは、どの先生も持っている「子供たちと接したい」という思いに沿うこと。教育の質をさらに上げていくためのものということを、押さえておいて欲しいね。

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