ICTが創る新しい学び

デジタル教科書が高める 確かな学力と学習意欲

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東京都世田谷区立駒沢中学校

全国的に普及の進むデジタル教科書。平成25年度の整備率は、全国平均で37.4%となっています。東京都の世田谷区立駒沢中学校(加藤敏久校長、生徒数410名)では区の方針の下、小学校と連携を図りながら、デジタル教科書をはじめとするICT 機器の効果的かつ効率的な活用についての実践研究を進めています。実際の授業では、どのように活用されているのでしょうか。同校の家庭科の授業にお邪魔しました。
(文・長尾 康子)

 

生徒たちが顔を上げながら先生の話を聞ける

世田谷区立駒沢中学校は、ICT 活用の先進校として知られています。平成24・25 年度の2年間は「ICTを活用した授業の改善」の研究に取り組むなど、デジタル教科書を積極的に活用してきました。

この日、見学させていただいたのは、1年A 組の家庭科の授業。単元は「わたしたちの衣生活と住生活」です。教室前方には大型テレビがあり、その横には実物投影機がスタンバイされています。教卓には、大型テレビに接続された1台のノートパソコン。ドライブには、東京書籍の中学校デジタル教科書「新しい技術・家庭」のDVD がセットされています。

最初に小嶋紗代子先生が、今日の目当てとして「着る目的を考える」と板書しました。「私たちは、どうして服を着るのでしょう?」と先生が問いかけると、生徒たちの手が次々と挙がります。

「体温を調節するため」
「けがをしないようにするため」
「ファッションのため」
「動きやすいように」

次々と意見が出てくる中で、一人の生徒が「着ていないと(警察に)捕まるから」と発言すると、教室中が笑いに包まれました。毎年、この単元では必ず出てくる“お約束”の発言なのだそうです。

教室の雰囲気が和やかになったところで、いよいよデジタル教科書の登場。服を着る目的の一つである「保健衛生上、生活活動上の働き」のページが、教室前方のテレビ画面に表示されます。先生が説明を始めると、生徒たちはテレビ画面と先生を交互に見ながら、話を聞きます。生徒が目線を下に落とさず、顔を上げたまま先生の話を聞くことができる点は、デジタル教科書の利点の一つです。

続いて、服を「TPO に合わせて着る」ことを教える場面で、小嶋先生は1枚の紙を実物投影機を使ってテレビ画面に表示しました。表示したのは、生徒会のオリエンテーションで配布された「TPO に合わせたあいさつの強化」というプリントです。こうして、黒板やデジタル教科書を活用しつつ、時に実物投影機も使うなどしながら授業が進んでいきます。授業に変化があるためか、学習に取り組む生徒たちのモチベーションは高いように見えます。

 

デジタルなら何度もシミュレーションできる

授業の後半は、服の「色の組み合わせ」が、人に与える印象についてです。ここでは、「気分が良くないコーディネート」や「自分が着てみたいコーディネート」を生徒たち自身が考え、色を塗ってデザインする作業が、学習活動の中心となりました。

どの教科、どの単元にも共通して言えることですが、教師がいかに分かりやすく、明確な指示をできるかによって、生徒たちの作業能率は大きく変わってきます。デジタル教科書は、そうした課題の提示において、時に大きな効果を発揮することがあります。



02 デジタル教科書を活用した授業の様子

この日の授業で、小嶋先生は生徒たちに実作業をさせる前に、デジタル教科書に付属のシミュレーション機能を活用しました。この機能を使うと、画面に表示された男の子の服色をドラッグ&ドロップで、簡単に変えることができます。

上のシャツがオレンジ色で、ズボンが黄色だと「同系色」、シャツだけを青色に変えると「反対色」といった具合に、小嶋先生はさまざまなコーディネートを画面に表示させていきます。そのたびに、生徒たちからは「わぁ」「いいね」などの歓声が上がります。

この段階まで来て、小嶋先生は作業用のプリントを配付し、生徒たちは一つ目の課題「気分が良くないコーディネート」を考え、色鉛筆で塗り始めます。直前にデジタル教科書のシミュレーションを見ていたこともあり、生徒たちは自分が何をすべきかをきちんと理解できている様子です。

作業を終え、何人かの生徒が“作品”を実物投影機を使って発表した後、小嶋先生は再びデジタル教科書をテレビ画面に表示させました。出てきたのは、先ほどと同じ、服の色を変えるシミュレーション画面。ただし、今度は「柄」が加わっています。小嶋先生が柄を次々と変更させ、縦縞の幅を変えていくと、生徒たちからは幅が細いと引き締まって見える」などの声が上がります。こうした操作を手軽にできる点は、デジタル教科書の特長の一つと言えます。

01色鉛筆を使って、服の色を塗る生徒。デジタル教科書を使いつつ、“アナログ”な作業も組み入れながら授業が進んでいきます。

 

デジタル教科書を活用した授業の例

03 【1】
ノートパソコンのドライブに、DVD 版のデジタル教科書を挿入。教室に置かれた大型テレビに接続します。テレビがない部屋の場合は、プロジェクターに接続しても構いません。
06 【2】
デジタル教科書のページをめくったり、一部を拡大したりという操作は、ノートパソコンのマウスから行います。電子黒板に接続すれば、電子黒板の画面をタッチして操作することも可能です。
05 【3】
東京書籍のデジタル教科書は、「ペンツール」や「描画ツール」「付せんツール」などが付いています。強調したい部分を赤丸で囲んだり、色を付けたりすることができます。
04 【4】
画面上のボタンは大きめに作られているので、タブレットや電子黒板などタッチパネル型のデバイスでも不自由なく使えます。誰もが感覚的に使えて、操作性も“ユニバーサル”です。

 

パソコン1台とディスプレイで始められるデジタル教科書

授業後、小嶋先生にデジタル教科書の活用法とそのメリットについて話をうかがいました。前任校ではデジタル教科書を使ったことがなかったという小嶋先生ですが、実際に使ってみた印象はどうなのでしょうか。

「まず、生徒の理解が深まるような指導ができるようになりました。今日の授業でも、実際に色の組み合わせのパターンを見せることで、生徒たちのイメージが膨らみました。こうしたイメージは、いくら言葉で説明しても、なかなか頭に思い描けません。デジタル教科書ならば、色と柄、柄のサイズという3要素を自由に組み合わせて、さまざまなデザインを提示できます。この機能は、デジタル教科書の中で最も気に入っている機能です。」

この日の授業では使わなかったものの、豊富な動画コンテンツもデジタル教科書の魅力だと小嶋先生は言います。

「着物を着る手順を示した動画や建物の免震構造を解説した動画などは、紙の教科書では伝わりにくいので重宝しています。また、裁縫などの実習中は、動画を教室前方でループ再生させておき、生徒がいつでも手順を確認できるようにしています。例えば、被服の“まつり縫い”の動画を流しておけば、『先生に聞くほどではないけど、針の運び方を確かめたい』という生徒にとっては、とっても便利ですし、私自身は本当に困っている生徒や手が止まっている生徒の指導に回ることができます。」

 

授業は“静”と“動”のメリハリが大事

家庭科の授業は年35 回。そのうち、デジタル教科書を活用するのは20 回程度だと小嶋先生は言います。デジタル教科書の活用時に気を付けているのは、“静”と“動”のメリハリを付けて、授業を組み立てることです。今回の授業も、デジタル教科書を活用しつつ、オリジナルのプリントを配布して、生徒に色塗りをさ
せるという“動”の実作業を取り入れました。

「デジタル教科書のシミュレーション機能だけで完結させることもできますが、やはり手を動かした方が学習効果は高まります。今日は個人作業でしたが、グループでの話し合い活動などを取り入れることもあります。動画の場合、視聴した時には理解したような気になっていても、後で誰かに説明しようとすると、覚えていないケースも少なくありません。その意味で、必ず実作業で確認をさせるなどして、実生活で活かせるように定着させたいと考えています。」

 

教材研究、授業力向上につなげる意識

ICT 機器を活用する際のポイントは、「提示するものをハッキリさせること」だと小嶋先生は言います。授業中、デジタル教科書を見る必要がないときは、テレビ画面には何も映しません。視覚から入る情報で生徒を戸惑わせないためです。こうした活用上の工夫や配慮は、近隣3小学校も含めた小中連携体「駒の学び舎」で研究し、取り入れてきたことだそうです。いわば、先生方が積極的にデジタル教科書を活用し、研究授業での意見交換などを通じて蓄積された “知恵”だと言えます。

「本校には3つの小学校から生徒が入学してきますが、どの小学校でもICT の活用を推進しています。パソコンを使うことに慣れているだけでなく、人前でプレゼンテーションすることや自分の意見を述べることにも抵抗感が少ない生徒たちが多く、その点で授業は進めやすいものがあります。学級には『ICT 係』がいて、ときに機器の準備を率先して手伝ってくれるなど、とても助かっています。」

デジタル教科書と聞くと、多彩かつユニークな機能で児童生徒の学習意欲をかき立てるようなイメージがありますが、同校ではごく普通のツールとして、日々の授業の中で活用されています。同校の実践を見ても、全国各地の学校でごく普通に使われるようになる日は、決して遠くはないのかもしれません。

 

デジタル教科書「新しい技術・家庭」(東京書籍)

【画面サンプル1】

08

 

【画面サンプル2】

07

 

【動画再生画面】

09

 

 

動作環境
■サーバ
Windows / Linux
■クライアント
OS:Windows XP / Vista / 7 / 8 CPU:高性能なCPU を推
奨 メモリー:4G

 

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