教壇の必殺技講座

教壇の必殺技講座・第9回・理科のカリスマ 桑名 正和先生

栄光ゼミナールの現役カリスマ講師が、教壇に立った時のテクニックをこっそり伝授。
授業の捉え方から、細かな伝え方のテクニックまで、実際の授業におじゃまして、教えてもらいました。

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教壇の必殺技講座

第9回 理科のカリスマ 桑名 正和先生

理科のセンスは日常の経験から養われる

「理科が得意な子と苦手な子の差は何ですか?」
そう質問すると、桑名先生は「こんな面白いことがあったのですが ──」と話してくれました。
「あるとき教室の壁に、小さなクモがはっているのを見つけたんです。しばらく様子を見ていると、恐がったり追い払おうとしたりする子もいれば、じっと観察する子もいました。それで、ふと思い出したのですが、自分が同じくらいの年齢だったときは、1時間くらいアリの巣を観察していても、まったく飽きないような子供だったんですよね。」
理数系の科目は、「センスが問われる」とよく言われます。しかし桑名先生は、「理科のセンスは身に付けることができます。結局は“経験値”の問題ではないでしょうか」と言います。
「理科が得意な子は、日常生活から周りをよく観察しています。普通に道を歩いていても、花や草、虫、雲、星などに目が向くタイプは、授業で習うことも『あのことかな』と体験と結び付けて考えるので、すんなり頭に入りやすいんです。しかし、そうでない子にとって理科で学ぶことは、ただのお勉強でしかない。何でもそうですが、実感がわかないことは理解もしづらいですよね。」
だから理科のセンスを身に付けたいのであれば、「経験値を増やせばいい」というのが桑名先生の持論です。子供たちの経験値を上げるための試みの一つとして、桑名先生はいつもポケットに輪ゴムを入れて持ち歩いているのだそう。輪ゴムを伸ばしたり緩めたりして指で弾けば、どんな状態のときにどんな音が鳴るのか、言葉で説明せずとも分かります。「音」の単元でつまずいている子には、こうして実際に見せてあげるのが、一番、腑に落ちやすいのだそうです。
「輪ゴムと同じで、身近な道具で体験できることや身の周りの出来事を観察する時間を増やしてあげることが、理科の土壌を養う上で大切だと思います。現象や結果について、答えを知ることではなく、『どうしてこうなるんだろう?』と考えるクセをつける。それが学力を伸ばす肥やしになるのではないでしょうか。」

↓子供たちが「考える」時間を十分にとりつつ、授業は進む

算数や国語の学習が、理科の学力を底上げする

その言葉通り、桑名先生の授業の中には子供たちに「どうして?」と考えさせる工夫が、そこかしこに見られます。この日見学させてもらったのは、「地層」の授業。地層から出る化石の説明の中で、桑名先生はこんな質問を子供たちに投げ掛けました。
「サンゴの化石が見つかる場所は、昔どんな場所だったか分かる?」
「海だったところ」と答える子供たち。しかし、それだけでは終わりません。
「サンゴがいるのは、どんな海?」
「温かい海」
「じゃあ、北の寒い地方でサンゴの化石が見つかったとしたら?」
しばらく考える子供たち。すると一人の子が、パッと手を挙げました。
「今は寒くても、昔その場所は温かい海だった!」
「そう。つまり、サンゴの化石から、その場所が昔は海だったこと、さらに、その海が暖かい海だったことも分かるんだよ。」
答えを教えれば、ものの5秒ですんでしまう問題でも、あえて考えさせる時間を設ける。桑名先生がこのような方法をとるのは、「理科は暗記だけに頼ってできる科目ではない」と考えているからです。
「確かに4年生くらいまでは、花や星の名前など、知識を問われる問題が中心です。しかし高学年になるほど、計算力や読解力が問われる問題が増えてきます。科目全体で比べると、社会よりも理科の方が覚えなければならない知識の量は、ずっと少ないんです。」
しかしだからこそ「理科は短い時間で、効率よく学習できる教科のはずだ」と桑名先生は言います。
「私は、理科にかける勉強の時間は一番短くていいと、子供たちに言っています。驚かれるかもしれませんが、理科よりも算数の計算問題をしっかり解くとか、国語の説明文を読み解くといったことに時間を割いてほしい。それらができようになると、自然に理科の学力も上がっていくはずです。」
知識は、あくまで考えるための材料。そのため、ただ一律に暗記させるのではなく、最低限覚える必要のあるポイントを順序立てて伝えることを、常に意識されているのだそうです。

常に「子供ファースト」の視点で授業を

一方で、計算問題が苦手で理科が嫌いになってしまう子がいることも確か。理科は算数のカリキュラムと密に連動しているのです。
「例えば、『濃度』や『密度』の内容を理解するためには、算数で習う『割合』や『パーセント』の問題が解けなければなりません。」
そのため、子供が算数の内容をどこまで理解しているのか、理科の教員もしっかり把握しておく必要があると言います。
「要は、つまずきの原因がどこにあるのか、総合的な視点で判断しなければならないということです。理科のテストの点数が悪い子でも、その子は理科が苦手なのではなく、計算問題ができないだけなのかもしれません。そうした場合、理科の授業内だけで解決しようとするのではなく、算数の担当教員に『この子は、この部分の計算ができていない』と、フィードバックすることの方が大事だと思うんです。」
理科の授業ではその子が理解できる部分を優先して教えておき、後から計算問題を算数の先生に個別指導してもらうこともあるとか。ともすればカリキュラム優先で指導を進めてしまいがちですが、「同じように教えても、子供によって理解に差が出るのは当たり前。それならば教える方も、一人一人に寄り添う姿勢が必要ですよね」と、桑名先生は語ってくれました。

今月のまとめ

授業を聞いていて面白かったのが,石と砂と泥の違い。砂は直径が2ミリ未満のもの,泥は0.06ミリ未満のものを指すそうです。身近な生活と結び付けて進められる桑名先生の授業は,細かな数字も自然と記憶に残っていくような不思議なものでした。

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