教員採用試験の基礎知識 | スイスイ分かる!「新学習指導要領」スーパーガイド

スイスイ分かる! 「新学習指導要領」スーパーガイド 第3回「カリキュラム・マネジメントとは?」 

大改訂となった新学習指導要領(2017年3月告示)。膨大な内容の中から、試験に出るポイントを12のテーマに分け、専門家が分かりやすく解説していきます。

第3回テーマ「カリキュラム・マネジメントとは?」

著/紅林 伸幸(常葉大学教職大学院教授)

 

新しい教育の柱 カリキュラム・マネジメント

カリキュラム・マネジメントは、これから始まる教育の柱となるものです。小学校の新学習指導要領「総則」には、以下のように示されています。

カリキュラム・マネジメントは全教員が行う

カリキュラム・マネジメントは、教育課程(カリキュラム)に基づいて教育活動の質の向上を図っていくことです。「小学校学習指導要領解説 総則編」(2017年6月)には、「求められる資質・能力の育成のため」に、「学習の効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントに努めることが求められる」と書かれています。
つまり、カリキュラム・マネジメントを行うのは、教育活動を行う全教員ということになります。

 

カリキュラム・マネジメントはなぜ必要なのか

日本では、全国のすべての小・中・高等学校が、「学習指導要領」に基づいた教育を行うことになっています。
それは、「学習指導要領」が教育課程の基準として定められているからです(学校教育法施行規則第52条)。私立学校の場合は、教育課程の編成において「宗教」を加えること(「道徳」を「宗教」に代えるのも可)も認められていますが、「学習指導要領」に基づいた教育が行われることには変わりはありません。
したがって、すべての学校で教員が責任を持って、子どもや学校や地域の実情を踏まえて、学習指導要領に基づいたカリキュラム(教育課程)を適切に具体化しなくてはなりません(図1)。日本の教育が世界でトップレベルの教育効果を上げているのは、それがしっかりできているからです。
カリキュラム・マネジメントは、この教育をこれからも維持し、より発展させるために、意識的に組織的かつ計画的に行うことを明文化し、①教科等(各教科、道徳科、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動)横断的な視点、②実施状況の評価・改善、③必要な人的・物的な体制の確保などを例示することによって、実践の可能性を拡大したものです。

主体的・対話的で深い学びの実現【①の視点】

新学習指導要領では、「児童(生徒)の発達の段階」を考慮して、「各教科、道徳科、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動を横断する視点」を持って教育課程を編成し、指導を行うことが繰り返し強調されています。
つまり、教科等の教育の枠組みを優先するのではなく、優先されるのは子どもなのです。
ただし、各教科等の目標や内容の趣旨を逸脱せずに、⑴知識及び技能が習得されるようにすること、⑵思考力、判断力、表現力等を育成すること、⑶学びに向かう力、人間性等を涵養することに留意しなくてはなりません。また、子どもの負担が過重にならないようにすること、特別な配慮を必要とする子どもへの適切な支援も大切です。

 

教育のPDCA【②の視点】

カリキュラム・マネジメントはPDCAサイクルによって行います。PDCAサイクルとは、業務を【P:計画(Plan)】-【D:実行(Do)】-【C:評価(Check)】-【A:改善(Action)】のサイクルで構成することによって、実施とその改善・向上を一体化させるものです。
教育は、実践の質を無限に向上させていかなければならない、ゴールのない営みですから、この螺旋モデルがふさわしいのです。

2007年度から小・中学校で全国学力・学習状況調査を行っています。成績評価に使わないテストを毎年大々的に実施しているのは、教育活動の結果と児童生徒の学習環境・学習条件の現状を客観的に捉える【C:評価(Check)】のためです。学校現場はその結果をカリキュラム・マネジメントに有効活用しなくてはなりません。

 

社会に開かれた教育課程【③の視点】

現在、我が国の教育改革では、「コミュニティ・スクール」や「チーム学校」などの施策が進められています。それらは地域社会の協力を得て、連携、協働するものですが、地域における世代を超えた交流の機会をつくることも重要です。
そうした交流は、子どもたちにとって、将来につながる人と出会い、安心して生活し、学習できる地域とのつながりをつくる機会です。生活の中でそうした機会が絶対的に不足している現在の子どもたちにとって、かけがえのない貴重な体験となることは言うまでもありません。地域とつながることを積極的に組み入れたカリキュラム・マネジメントが必要なのです。

 

ヒドゥン・カリキュラムの見える化

子どもたちは教科書に書かれている学習内容以上のものを、学習プロセスや学習スタイルから学んでいます。しかし、それらの学習効果は必ずしも十分に自覚的、計画的に実施されていませんでした。カリキュラム・マネジメントは、そうした隠れたカリキュラム(ヒドゥン・カリキュラム)を見える化し、積極的に計画的、組織的に実施しようというものです。
学習効果が上がらない児童生徒がいたならば、その子にできない子のレッテルを貼るのではなく、授業とその子のミスマッチを検証し、その子の学習に適切な環境と条件を実現しなくてはなりません。そのために、教科の枠にとらわれずに、子どもの発達段階や関心や学習の連続性を重視すること、地域の力を借りたり、多様な学習方法、学習形態を活用したりすることが大事なのです。
すなわち、学習の効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントに努めることを、教員は求められているのです。

 

未来の教室

2017年、スイスの学校を視察して、複数の先生に授業を見せていただきました。いずれも子どもたちを惹きつけ、積極的に学習に参加させる、個性的で、工夫を凝らした授業でした。参観を終えて、先生たちに授業をつくるにあたって参考にしているものを尋ねると、先生たちが本棚から取り出したのは、州が定めている教育課程でした。教育課程に基づいて学習の効果の最大化を図っている先生たちの姿がそこにはありました。
おそらく、新学習指導要領が思い描いているのは、そんな先生たちが授業をしている日本の学校なのです。

 

次号では「小学校・国語 」を解説します。
※内容は変更になる可能性があるのでご了承ください。

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