最新号特集ダイジェスト | 論作文(論文)

【最終回】新藤久典の熱血!論作文「猛トレ」〜「自己肯定感を高める指導の工夫」

新藤久典先生による論作文の「猛烈トレーニング(略して「猛トレ」)」です(全8回)。
最終回となる今号では、昨今頻繁に出題されている「自己肯定感」をテーマに、“ ワンランク上” の論作文を目指す上でのポイントを解説いただきます。

最終回となる今回は、「自己肯定感を高める指導の工夫」を取り上げる。まずは、このテーマを取り上げる理由について述べていこう。
「自己肯定感」は、教育用語としてはポピュラーであり、特に生徒指導においては、その育成が大きな課題として従前から取り上げられている。しかし、1958(昭和33)年に告示として最初に示された学習指導要領以降、2008年告示の現行学習指導要領に至るまで、学習指導要領には一度も登場していなかった。ところが、2017年3月に告示された小・中学校の新しい学習指導要領においては、「第1章 総則」や「第6章 特別活動」等に、関連する記述が繰り返し登場しているのだ。また、同年6〜7月に示された小・中学校の学習指導要領解説においても、「総則編」を中心に繰り返し解説されている。さらに、同年6月に出された教育再生実行会議第10次提言「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上」においても、学校教育の喫緊の重要課題として「自己肯定感」が取り上げられている。
こうした事実からも、教員採用試験対策として「自己肯定感」を高める指導の工夫について、十分に研究しておく必要があると言えよう。

ポイント① 用語の「定義」を押さえよ

さて、本テーマの研究に当たっては、第1に用語の「定義」を厳密にしておく必要がある。「自己肯定感」には、似通った教育用語として、「自尊感情」「自己有用感」「自己効力感」「自己存在感」などが従前から用いられてきている。中でも、「自尊感情」は、「自己肯定感」とほぼ同義に用いられていると言ってよい。また、「自己有用感」も「自己肯定感・自己有用感」といった具合にペアで扱われていることが多い(文部科学省『生徒指導提要』の「第1章 生徒指導の意義と原理」「第4節集団指導・個別指導の方法原理」など)。
しかし、「自己有用感」については、本当に「自己肯定感」や「自尊感情」と同意語的に扱ってよいのだろうか。国立教育政策研究所が発行する「生徒指導Leaf.18「『自尊感情』?それとも、『自己有用感』?」には、「自己有用感」について、次のような記述がある。

「自己有用感」は、他人の役に立った、他人に喜んでもらえた、…等、相手の存在なしには生まれてこない点で、「自尊感情」や「自己肯定感」等の語とは異なります。

生徒指導においては、他者からの評価やまなざしを強く感じた上でなされる自己評価としての「自己有用感」が、社会性の基礎として重要なのだと指摘されている。そのためには、「異年齢集団との交流」や「地域の人々との多様な体験活動」を通して他者から認められ、頼られることで、子供たち自身が「自分は役に立つことができる」「他者から必要とされている」と感じることが必要となろう。
一方で「自己肯定感」や「自尊感情」は、自分を中心とした自己評価によって生まれるものであり、時に過大評価につながったり、卑下して過小評価に陥ったりすることもあろう。また、「自己有用感」の獲得が「自尊感情」の獲得につながることはあっても、「自尊感情」の高さが必ずしも「自己有用感」の高さにつながるとは限らない。こうして見ても、「自己有用感」と「自己肯定感」「自尊感情」などの言葉が、同義ではないことが分かる。

ポイント② 自己肯定感が重視される「背景」を押さえよ

では、今なぜ「自己肯定感を高める」ことが強く求められているのだろうか。学習指導要領改訂の方向性を示した中央教育審議会答申(2016年12月)では、「自己肯定感」を図1のように「挑戦心」、「達成感」、「規範意識」、「自己有用感」等を包含する概念であると捉えている。

さらに、2017年6月の教育再生実行会議の第10次提言「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上」では、「自己肯定感」について次のようなことが指摘されている。

○日本の子供たちの自己肯定感は、諸外国と比べて低い。
○子供たちの自己肯定感が低く、自分に対して自信がないままでは、必要な資質・能力を十分に育めたことにはならない。
○自己肯定感には2つの側面がある。
自らの力の向上に向けて努力することで得られる達成感や他者からの評価等を通じて育まれる「自己肯定感」。
②自らのアイデンティティに目を向け、自分の長所のみならず短所を含めた自分らしさや個性を冷静に受け止めることで身に付けられる「自己肯定感」。
○自己肯定感を育むポイント
他者に対する理解や他者から謙虚に学ぶ姿勢を大切にしつつ、何事にも積極的にチャレンジし、自らを高めていく姿勢を身に付けること。
・自己を見つめ、自分の長所と短所、自信のあるところとないところの両方を受容し、「自分らしさ」を見失うことなく、リラックスして臨むことにより自らの力を最大限発揮できるようになること。
○子供と関わりのある大人が留意すること
・自己肯定感が人との関わりを通じて形成されることを踏まえ、保護者や教師をはじめとした子供に関わる大人が自身も自己肯定感を持って子供と接すること。
大人がさまざまな場面で子供の良いところを積極的に褒め、叱るべきところでは叱るなど、大人が愛情を持って積極的に関与し続ける姿勢を示すこと。
○学校や教師が実践すべきこと
・幼児教育の充実
家庭教育支援の充実
多世代交流や異年齢交流等の推進
➡ 学級や学校の中で役割を分担し、協力して取り組む機会を充実するとともに、異年齢交流を通して、年少者の世話をしたり、リーダーシップを発揮したりする機会を充実させること。
➡学校の授業以外のさまざまな場面において、年齢の近い大学生や、年下の幼児・小学生、地域の高齢者、民間機関の職員等との学習や交流など多様な活動の機会を充実させること。
さまざまな体験活動の充実
➡自己肯定感をバランス良く育むために、自然体験活動集団宿泊体験、職場体験活動、奉仕体験活動、文化芸術体験活動等のさまざまな体験活動を通じて、達成感や成功体験等を得るとともに、失敗や挫折を経験したときに、自分を受け容れ、課題に立ち向かう姿勢を身に付けること。

また、第10次提言に付されている参考資料には、国際比較調査を基にして、日本の子供たちの「自己肯定感」に関する特徴的な点について、注目すべき結果が次のように示されている。

○自己肯定感が高い方が、「挑戦心」「達成感」「規範意識」「自己有用感」に関する意識が高い。(全国学力・学習状況調査)
○自己肯定感が高い方が、「自分には自分らしさがある」「勉強に関する意識」「体力に関する意識」「挑戦心」に関する意識が高い。(青少年の体験活動等に関する実態調査)
○自己肯定感が高い方が、「長所」「自己有用感」「主張性」「挑戦心」「家庭への満足度」に関する意識が高い。(我が国と諸外国の若者の意識に関する調査)
○自己肯定感が高い方が、「努力しても報われない」「日本は競争が激しい社会である」と思っていない。(高校生の生活と意識に関する調査)

上記に示した指摘は、自己肯定感を高めるために教師として心得ておくべきポイントを教えてくれている。特に、下線で強調した部分は、授業改善の方向性へのヒントを与えてくれていると言えよう。上記に示した指摘は、自己肯定感を高めるために教師として心得ておくべきポイントを教えてくれている。特に、下線で強調した部分は、授業改善の方向性へのヒントを与えてくれていると言えよう。

ポイント③ 新学習指導要領の趣旨を踏まえる

それでは、以上のことを踏まえて、実際にどのように書くのが望ましいか、記述例を基に考えていこう。以下は、いずれも合格水準に達している序論の執筆例である。

【記述例の評価】
記述例1、記述例2ともに、現代の日本の子供たちの課題である「自己肯定感」の低さを指摘し、その向上が強く求められる背景を的確に指摘している。序論としては, 十分に合格水準に達していると言えよう。
記述例1は、現代の学校の重要課題である「思考力・判断力・表現力等の育成」に触れ、その実現のための障壁として「自己肯定感」の低さがあることを、国際比較調査の結果を基に説明している。国際比較調査や中央教育審議会の答申を引き合いに出すなど、最新の教育時事に目を通せている点も、高く評価できる。
記述例2は、学校教育の目的という原点と「自己肯定感」を上手に結び付けている。さらに、教育再生実行会議第10次提言の参考資料で示されているデータを生かして、目的を実現するためには自己肯定感の向上が不可欠であることを説得力を持って説明している。
いずれも、自身の経験・体験等にとどまらず、客観的なデータや答申等の公的資料を用いながら、「自己肯定感の向上」に取り組む姿勢を示しており、本論に期待を持たせる入り方と言えよう。

このつづきは
本誌『教員養成セミナー2018年5月号』をご覧ください!
←画像をクリック

教セミちゃんねる 教員養成セミナーのご紹介 教セミLine@ 教員採用試験対策サイトへ

最新号のご紹介