教師の本棚 | おすすめ書籍

おすすめ書籍紹介〜今月のテーマ「陽」

丸山 匠勇(板橋区立西台中学校)

 

ご存じですか「天徳内裏歌合」

『陰陽師 付喪神ノ巻』
夢枕獏=著/ 2000年/文春文庫/¥570+税

『陰陽師』というと映画で有名になってしまいましたが、それだけではこのシリーズの魅力を半分も味わえないのではないでしょうか。あの映画をCGを多用したSF、ホラーと感じている方も多いとは思いますが、本の方は古典にしっかりと根を下ろした上で、魅力的な人物像を描き出しているシリーズになっています。
今回ご紹介するのは、この本のうちの1編「ものや思ふと……」です。これは実際にあった天徳内裏歌合での壬みぶの生忠ただみ見と平兼盛の歌(両首とも小倉百人一首の名歌)の争いを中心に、安倍晴明と源博雅の活躍を描いています。
『今昔物語』の引用に始まり、歌合の様子も細かく描かれているのですが、ちょと分かりにくいという方にはこの話を漫画にした岡野玲子の『陰陽師(7)天后』をお薦めします。歌合の情景やその後鬼になってしまった忠見の姿、そしてそれを救っていく清明と源博雅の言動がうまく描かれています。
このシリーズは安倍晴明ばかり有名になってしまいましたが、管弦に強く人情味溢れる源博雅こそが本当の主人公ではないでしょうか。『陰陽師』は息が長く今も続いていますが、どの巻からでも読み出せますので、是非気軽に手に取ってみてください。

今こそ大きな課題、人間?非人間?

『ソラリス』
スタニスワフ・レム=著/沼野充義=訳/ 2015年/ハヤカワ文庫SF/¥1,000+税

先日NHKの『100分de名著』にも取り上げられた、古典的・正統的S F の最高峰ともいえる作品です。発行当初は『ソラリスの陽のもとに』(現『ソラリス』)というタイトルで広く読まれていました。
一見何の変哲もない惑星ソラリス。そこで起きている奇妙な現象に心理学者のクリスまで巻き込まれ…。
SFでありながら恋愛小説でもあり哲学書でもある本書は50年以上も読み継がれ、今だに高い評価を受け続けています。
人間であるものとは、人間でないものとは、という命題は、現代社会におけるAIの考え方にも影響を与えています。是非、ソラリスの不思議な海との邂逅を楽しんでみてください。

 

陽気な主人公、しかし……

『お父さんのバックドロップ』
中島らも=著/1993年/集英社文庫/¥450+税

最後に1人陽気な主人公を紹介します。伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』のギャング達や天藤真『大誘拐』のとし子刀自よりも印象に残っているのが、『お父さんのバックドロップ』の下田牛之助です。齢43にして鎖鎌を振り回し緑色の霧を吹く悪役レスラーですが、実は家に帰ると…。
安易なヒーロー物かと思われるかもしれませんが、そこは中島らも!どうぞ下田牛之助にエールを送りながら読み進めてください。小・中学生のちょっとした読み物にも最適です。

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