教師のそのアクション イイ?ダメ?どっち!?

教師のそのアクション イイ?ダメ?どっち!? 〜授業中に生徒から支持政党を聞かれたら…

教壇に立つ弁護士・神内聡が一刀両断!
教師であり弁護士でもある神内聡先生が、教師がやりがちなアクションを法規に基づいて解説します。

教師のそのアクション
イイ?ダメ?どっち!?

著・監修 神内聡
弁護士・高校教員。教育法を専門とする弁護士活動と東京都の私立学校で高校教師を兼業する「スクールロイヤー」活動を行っている。担当科目は社会科。著作に『学校内弁護士 学校現場のための教育紛争対策ガイドブック』(日本加除出版)など。

設例2 授業中に生徒から支持政党を聞かれたら…

授業で、各党の実際のマニフェストを使って模擬選挙を行う予定です。生徒から「先生はどの政党を支持しているの」などと質問された場合、自分の支持政党などをはっきり示していいものでしょうか?

1 「特定の見解」を自分の考えとして述べるのは…

2016年より選挙権が18歳に引き下げられ、政府が副教材「私たちが拓く日本の未来」を作成して学校現場に配布するなど、国を挙げて政治的教育を行う動きが活発化しています。
一方で、学校が特定の政党を支持または反対するための政治教育その他政治的活動をすることは、公立・私立を問わず教育基本法(第14条)で禁止されており、個々の教員もまた、児童生徒に対して教育上の地位を利用して選挙運動をすることは、公立・私立を問わず公職選挙法(第137条等)により禁止されています。
また、公立学校の教員は教育公務員特例法(第18条)等により、政治的目的のために児童生徒に教員としての影響力を利用することが禁止されています。
前述の副教材「私たちが拓く日本の未来」の教師用指導資料では、「教員が特定の見解を自分の考えとして述べることは、教員の認識が生徒に大きな影響を与える立場にあることから避けることが必要」「生徒から教員の主義主張を尋ねるような質問がある場合には慎重に対応する」「実際の選挙に合わせて模擬選挙を行う際には、実在するすべての政党を取り扱う(一部の政党や候補者を除外して実施することは適当ではない)」などの指導上の留意点が記載されています。設例では、生徒が教員に「実際に投票した政党名」を尋ねており、教員の主義主張に関連する質問であることから、慎重に対応する必要がありますが、回答してはいけないわけではありません。もっとも、投票した政党名と合わせて特定の見解を自分の考えとして述べることは、避ける必要があります。

2 子供たちは政治について知りたがっているのに…

教員が特定の政治的見解を児童生徒に押し付けることは避けるべきであるとしても、前述の副教材が示す指導上の留意点は法令以上に教員の授業態様や授業方法に踏み込んでおり、政治的教育の過度な制約になる可能性は否定できません。また、弁護士であり、現役公民科教師でもある筆者の視点からは、現在の日本の政治的教育はそもそも子供たちのニーズに対応できているのか、根本的な疑問があります。
実際に、筆者の授業で選挙権を得る高校3年生にヒアリング調査を行ったところ、副教材が取り上げている模擬投票や模擬選挙を行いたいという要望よりも、各政党や自民党内の派閥での意見の違いや、「保守」「リベラル」といった政治的用語の意味を教えてほしい、という要望の方がはるかに多かったのですが、こうした知識は副教材にはほとんど記載されていません。
仮に、「主体的で対話的な深い学び」(アクティブ・ラーニング)の要請の下で、教員が生徒のニーズに応じて各政党の違いや政治的用語の意味を教えるとすれば、教員自身の政治的スタンスをある程度生徒に示す方が「深い学び」を実現しやすいはずです。教員が自らの政治的スタンスを生徒に示すことは欧米では一般的であり、日本では教員の政治的中立性を過度に求めるあまり、「子供たちが学びたい政治的教育」の視点が欠落しているように思えます。
また、近年は「主権者教育」という語が注目され、弁護士会でも安易に用いられていますが、現在の日本の教育現場にはかなりの数の外国籍の児童生徒(=選挙権等を持たない)が含まれることを忘れてはいけません。「主権者教育」という語は、現状の日本の教育現場においては必ずしも適切ではない語であることを認識しながら、政治的教育を推進していく必要があると思われます。

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