教師の本棚 | おすすめ書籍

おすすめ書籍紹介〜今月のテーマ「友」

遠江 久美子(町田市立鶴川第二中学校主任教諭)

 

友達契約

『きみの友だち』
重松清=著/2008年/新潮文庫/¥670+税

 この小説が描き出すのは、学校という過酷な場所である。過酷さの原因は何か、それは「自分」と「他者」の関係。「見る自分」と「見られる自分」の関係。「ひとり」対「みんな」の関係。小説には8人の「きみ」が登場する。「きみ」は小学生だったり、中学生だったりする。もの静かだったり、クラスの人気者だったりする。どんな子どもでも、等しく重たい荷を背負っている。教師も両親も彼らの背負った荷を軽くすることはできない。彼ら自身が工夫してなんとかするしかないのである。8人の「きみ」はそんなふうに、孤独に闘い続けている。生徒にとっての友達とは何かを考えさせられる1 冊だ。
中学1年のB君。彼は友達をつくるのが下手で悩んでいた。ある日、少し話せるようになったクラスメイトのT君に「君と僕は友達契約を結んだからね」と一方的に言った。彼は相手のことなんかお構いなしで、その日からT君と友達になったと思い込んでしまった。ノートを見せてほしい、会話をしてほしい、遊ぶ約束をしてほしいと日増しにB君のT君に対する欲求が増え、T君が困り果ててしまった。「僕は友達契約をしたつもりもないし、友達関係は普通でありたい」と相談してきた。B君と話をすると、彼は友達がいない寂しさや焦り、そして自分だけ1人なんだという怒りを持っていた。彼の孤独の叫びが伝わってきた。教師は友達をつくってあげられない。友達は自分でしかつくれないものだから。でも応援したい。「頑張れ!生きるのが下手な君達よ」。

 

色あせない互いの思い

『陸王』
池井戸潤=著/2016年/集英社/¥1,700+税

 物語の主人公は、老舗足袋屋「こはぜ屋」を営む4代目社長・宮沢絋一。彼は足袋の需要減少に頭を悩ませていた。そんなとき、宮沢が考え付いたのは「マラソン足袋」(陸王)の開発。前途有望なマラソン選手・茂木と出会い、その後致命的な故障を負った彼に「陸王」を履いて復活を遂げさせたい一心で奮闘し続けるこはぜ屋。彼の復活と共にこはぜ屋の生き残りをかける困難に立ち向かう物語。1人では出来ないことでも、「共」に向かう仲間がいれば、不可能も可能になると思わせてくれる1冊です。
1月、受験生である中3の生徒達は複雑な思いで、仲間と過ごす。推薦組は1月下旬に進路が決定し、多くの者は3月初めに決定する。推薦で進路が決定したAさんから「仲間のために何かをしてあげたいが、何ができるのか?」と相談があった。私は進路決定している生徒とチームを作り、仲間のためにチームで千羽鶴を折り、都立受験前日にクラスの仲間に贈ることを決めた。7〜8人で、短い期間で千羽を折るのは思っていたよりきつく、事を内緒で進めなくてはならないので、言動にも気を配った。中には弟にほとんど折らせた不届き者もいた。間に合わせるために必死だった。完成したときは感無量。でも、もっと心が温かくなったのは、クラスの仲間に贈ったときの仲間の驚きと嬉しそうな顔だった。そしてクラスが優しい空気に包まれたあの瞬間を忘れられない。千羽鶴は色あせてもあのときの友への互いの思いはずっと色あせない。私は思う。生徒の純粋さに包まれるのは最高だと。

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