教職探検隊

学校にまつわる謎を解け!教職探検隊「教育委員会と教育長」

このコーナーは、学校や教育にまつわる、知っていそうで知らない素朴な疑問を解き明かすもの。編集部による「探検隊」が、教職のプロ・高野敬三先生の元へ「遠征」します。
今月の謎は「教育委員会と教育長」。教員採用試験の学習をしていると、両者ともよく目にしますが、一体どんな仕事をしていて、教員とはどのような関わりがあるのでしょうか。

監修 高野 敬三(明海大学副学長)
1977年に都立高校英語科教員となる。都教育委員会理事、都教職員研修センター所長、都教育監などを歴任し、2016年より現職。

 

「神社の看板に教育委員会の名前」の不思議

(以下 高=高野先生、隊=探検隊員)
隊1・2:高野先生、新年おめでとうございます!
高:おめでとう。正月はゆっくりできたかい?
隊1:はい。探検を休んで、隊員一同で神社に初詣に。読者の皆さんの合格を祈願しましたよ!
高:いいことだ。僕もお祈りしたよ。
隊2:由緒ある神社に行ったんですけど、そう言えば一つ不思議なことがありました。
高:どんなことだい?
隊1:境内に、歴史を説明した看板があったんですが、文の最後に教育委員会の名前が記されていたんです。
隊2:教育委員会って、教育関係の仕事をしてるんじゃないんですか? 何で神社にあるのかなって……。
高:ああ、どうやら君たちは教育委員会の仕事について、よく理解していないようだね。試験でもよく出ることなのに知らないとは、新年早々、困ったものだ。
隊1:あわわ、まずい! 詳しく教えてください!

 

 教育委員会の仕事は幅広い!

高:教育委員会の設置に関する法律は覚えたかな?
隊2:地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)の第2条です!
高:安心した。ならば、同法の第21 条で定められた教育委員会の職務権限も覚えると、さらにいい。
隊1:どんな権限があるんでしょうか。
高:うん。職務権限については19もの規定があるんだ。

①学校などの教育機関の管理、②教育機関の財産の管理、③教員等の任免などの人事、④児童生徒の入学、⑤学校の組織編制・教育課程に関すること、⑥教科書採択関係、⑦教育機関の施設や設備の整備、⑧教職員の研修、⑨児童生徒の保健・安全や教職員の福利厚生、⑩学校の環境衛生、⑪学校給食、⑫社会教育、⑬スポーツ関連、⑭文化財保護、⑮ユネスコ関連、(以下省略)

隊2:なるほど、神社の教育委員会の看板があったのも、⑭の関連だったということですね。
隊1:納得です。それにしても教育委員会の仕事は、教育以外にも幅広いんですね。
高:そうだ。しかも、①の「教育機関」には、その教育委員会が所管する図書館、美術館、博物館、資料館、公民館なども含まれるぞ。
隊2:そんな施設まで!これだけ仕事の種類が多いと、組織もたくさんの部門に分かれることになりそう。
高:その通りだ。だから、この組織を束ねる「教育長」は、なかなか大変な職務だ。

 

教育長とは?

隊1:「教育長」って、どんな立場の人なんですか?
高:地教行法の頻出条文に定めてられている。
隊2:第4条「教育長は、当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で、人格が高潔で、教育行政に関し識見を有するもののうちから、地方公共団体の長が、議会の同意を得て、任命する」ですね。
高:これは試験にもよく出る条文。覚えておいてほしい。つまり、教育長は、都道府県や市町村の首長から選ばれ、議会に認められた人物ということ。この規定は2015年4月から実施されているもの。比較的新しい規定だから、試験にも出やすいぞ。
隊2:でも、人格が高潔で教育行政に見識がある人って、具体的にどんな人が当てはまるんでしょうか。
高:現在教育長をつとめている人は4つに大別できる。A教育行政経験者、B一般行政経験者、C教育職員経験者、Dその他、だ。
隊1:AとBは国や自治体の職員出身ですね。
隊2:Cは、つまり、学校の先生から教育長になるパターンもあるということですね!
高:その通り。現在の教育長の人数は以下の通りだ

※複数回答可。2015年12月時点。出典:『教育委員会月報』(2016年5月)

 

教育長の仕事とは?

隊1:この本の読者の中からも、将来の教育長が出てくる可能性があるということか。ワクワクします。
隊2:19もの仕事をつかさどるなんて、とっても大変ですけど、やりがいも大きそうですね。
高:その通りだ。ただし、教育長には、地教行法に書かれていない、最も大きな仕事がある。
隊1:書かれていないこともやるんですか?
高:そう。とっても重たい仕事、議会答弁だ。
隊2:議会答弁って、国会中継なんかで、官僚が政治家の質問に答えている、アレですか?
高:そう。アレと同じことだ。議会において、選挙で選ばれた議員は市民を代表する立場。そうした議員の質問に、行政の代表者である教育長は答える義務がある。例えば、ある議員が「昨今の家庭のトイレ状況を考え、学校のトイレをすべて洋式にすべきではないか」と質問したとする。
隊1:賛成! 僕なら「はい」と答えます。
高:「はい」と答えたら、それは市民に約束したことになり、必ず実行しなくてはいけない。教育長の立場としては、その必要性や、実行する場合の予算などをしっかり考えて、慎重に答弁しなくてはいけないんだ。
隊2:まさに「政治」の舞台ですね。

 

教師と教育委員会・教育長との関係

高:ここまで読んだ受験生の中には、教育委員会は別の世界の話に見えた人もいるかも知れない。
隊1:うん。僕らとは縁遠い仕事ですよ。
高:でも、それは違うんだ。教師の中には、教育委員会に出向き仕事をすることになる人もいる。
隊2:はい。10月号で話を聞きました。
高:そう。忘れた人はもう一度読み返してほしいが、地域の教育は、現場を見る先生と、地域全体を見る教育長や教育委員会の両方が協力することで成り立っている。先生が自分の考え・信念だけで教育しても、子供たちに広い視野を身に付けさせることはできない。一方で、教育委員会が現場のことを無視して物事を決定していっても、混乱が起きるだろう。
隊1:まさに「車の両輪」という話でしたね。
高:そうだ。教育長や教育委員会が示す教育方針には、必ずその目的がある。それを頭ごなしに否定したり、逆に何も考えずに鵜呑みにしたりしても教師として成長はできない。一体何を目指した教育なのか自分で考え、教師としての資質・能力を高めていってほしいんだ。

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