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スイスイ分かる! 「新学習指導要領」スーパーガイド 第1回「総則」 

大改訂となった新学習指導要領(2017年3月告示)。膨大な内容の中から、試験に出るポイントを12のテーマに分け、専門家が分かりやすく解説していきます。

第1回テーマ「総則」

著/白鳥 絢也(常葉大学准教授・副教職支援センター長)

 

「総則」=学習指導要領の要

2017(平成29)年3月31日、新しい「学習指導要領」が告示されました(小・中学校)。今回の改訂の基本的な考え方を簡単にまとめると、以下の3点が挙げられます。

教育基本法、学校教育法などを踏まえ、これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積を活かし、子供たちが未来社会を切り拓くための資質・能力を一層確実に育成。その際、子供たちに求められる資質・能力とは何かを社会と共有し、連携する「社会に開かれた教育課程」を重視。

○知識及び技能の習得と思考力、判断力、表現力等の育成のバランスを重視する現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で、知識の理解の質をさらに高め、確かな学力を育成

○先行する特別教科化など道徳教育の充実体験活動の重視、体育・健康に関する指導の充実により、豊かな心健やかな体を育成。

学習指導要領の中でも、全教科に共通する重要な考え方をまとめたのが「総則」です。そのため、この連載の第1回は、主に小学校・学習指導要領「総則」の理解を中心に、新学習指導要領が目指す教育についてまとめていきます。
なお、中学校もほぼ同内容ですので、「小学校」を「中学校」に、「児童」を「生徒」と読み替えて読んでいただきたいと思います。

 

「総則」の位置付けが変わった

まず、2008(平成20)年3月改訂の現行の学習指導要領と新学習指導要領の「総則」を並べてみます。

いかがでしょうか。「大分、変わったな」「別物みたい」と思われた方もいるでしょう。まさにその通りです。今回の改訂により、「総則」の位置付けと内容、章立てなどが抜本的に見直されました。このことは、「総則」が果たす役割が増加したことと、教員を志望する皆さんにとって新たな授業の実践方法を探求することが、同時に求められていることを意味しています。
特に、これまでの学習指導要領(「試案」である1947(昭和22)年版〜 2008(平成20)年版)には見られなかった「前文」が「総則」の前に新設されたことは注目に値します。

 

「前文」の新設が意味するところ

 教員採用試験の勉強をしていれば、「前文」という用語は、これまでも目にしたことがあると思います。日本国憲法や教育基本法に設けられていますね。しかし、すべての法令に付しているわけではありません。
「前文」とは、法令の条項の前に置かれ、制定の趣旨や理念、目的などを記したもの。条文の解釈の基準を示すものです。新学習指導要領での「前文」の新設は、まさに「これまでにない」大きな改訂であることと、特別な法令であることを示しています。
新設された「前文」では、下の3点について言及しています。

① 教育基本法との関連
② 改訂の理念「社会に開かれた教育課程」の実現
③ 学習指導要領の意義

 特に、これからの教育課程を「社会に開かれた」という言葉で表現している点に注意してください。なぜならば、社会に教育課程を開いていくという理念は「これまでにない」画期的なものなのです。
「前文」では、以下のように記されています。

教育課程を通して、これからの時代に求められる教育を実現していくためには、よりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な学習内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを教育課程において明確にしながら、社会との連携及び協働によりその実現を図っていくという、社会に開かれた教育課程の実現が重要となる。

具体的には、地域住民との連携、地域の各種団体やグループ等との連携、地域の社会教育施設(公民館・図書館・博物館・青少年教育施設等)やその他の教育関連施設(体育・スポーツ施設・芸術文化施設・保健福祉施設等)との連携によりその実現を図ることなどが挙げられています。また、勤労体験やクラブ活動、校外学習なども大きな役割を果たすでしょう。学校の置かれた環境によって、例えば農作業の手伝いやお茶摘み、公園や道路の清掃なども考えられます。これらは子供の発達段階に応じて、効果的に行うことを心がけたいですね。「保護者や地域住民の力を借りて行う」という発想が必要なのです。

 

「総則」には「学びの地図」の機能がある

 教育基本法の精神を受け、さらには国家・社会の時代ごとの要請を受けて、教育の目標・内容を具体的に定めたものが学習指導要領です。ここには、時代時代の教育全体の目標及び学校段階別・学年別・教科別のねらいや学習すべき内容が明示されています。教員は、この学習指導要領を参考にし、さらにこれに準拠して作成された教科書を用いて授業を展開することになります。
つまり、新学習指導要領は、学校教育における学習の全体像を分かりやすく見渡せる「学びの地図」としての役割を担っています。
この言葉は、2016(平成28)年12月の中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」において示されています。(同答申P. 1)

 これからの学習指導要領等には、子供たちと教職員に向けて教育内容を定めるという役割のみならず、様々な立場から子供や学校に関わる全ての大人が幅広く共有し活用することによって、生涯にわたる学習とのつながりを見通しながら、子供たちの多様で質の高い学びを引き出すことができるよう、子供たちが身に付ける資質・能力や学ぶ内容など、学校教育における学習の全体像を分かりやすく見渡せる「学びの地図」としての役割を果たしていくことが期待されている。

また、同答申は「学びの地図」としての枠組みを以下の6点に提示し、これらを基にして「総則」の位置付けを抜本的に見直し、以下の①〜⑥に沿った章立てとして組み替えることを指摘しています(同答申P.21)。

①「何ができるようになるか」(育成を目指す資質・能力)
②「何を学ぶか」(教科等を学ぶ意義と、教科等間・学校段階間のつながりを踏まえた教育課程の編成)
③「どのように学ぶか」(各教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実)
④「子供一人一人の発達をどのように支援するか」(子供の発達を踏まえた指導)
⑤「何が身に付いたか」(学習評価の充実)
⑥「実施するために何が必要か」(学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策)

新学習指導要領は、例えば、小学校であれば2020年から2030年までの「学びの地図」となります。教員を志望する皆さんは、この地図を正確に理解することをまずご自身に課してください。それは、子供たちとともに学び続ける、歩み続ける教員の姿の第一歩となるでしょう。
教員を志望する皆さん、これからの教育は変わります。「主体的・対話的で深い学び」「カリキュラム・マネジメント」「プログラミング体験」など、次から次へと生み出される新たな教育への対応に、先例がない分、余計に不安を感じるかもしれません。しかし、恐れることはありません。時代に合わせて、むしろ大胆に考えてほしいと思います。
今後、若い先生方が大量に増えることが予想されています。常日頃から思考力・判断力・表現力等を磨き、鍛える努力を惜しまずに、「自分たちが新しい時代の教育を、子供たちを担うのだ」という意気込みで学んでください。未来の子供たちとの出会いを胸に。

 

次号では「主体的・対話的で深い学び」を解説します。
※内容は変更になる可能性があるのでご了承ください。

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