論作文(論文)

新藤久典の熱血!論作文「猛トレ」〜「これなら書ける!」と飛びつくと痛い目に遭う!①

新藤久典先生による論作文の「猛烈トレーニング(略して「猛トレ」)」です(全8回)。
第6回となる今号では、論作文試験の陥りがちな「落とし穴」について、解説いただきます。

 今回は、論作文の出題内容が日常生活において常に目にするもので、「このテーマなら書ける!材料をたくさん持っている!」と、受験生が喜び勇んで書き始めることではまってしまう「落とし穴」について、解説していく。
まずは問題例を見てもらいたい。

 

情報モラル教育に関わる課題は、学校現場において日常的に発生しており、学校関係者に限らず、社会的にも大きな関心を集めているものだ。それ故、日頃から当事者意識を持って、問題の原因や背景を多面的に捉える習慣を身に付けておく必要がある。さらに、社会はこの問題を通して、学校をどのように見て、どのように評価しているのかについても、客観的に捉えることが求められよう。
この出題のねらいとしては、次のような点が挙げられる。
①現実に学校現場で起きていることを客観的に捉える目を持ち、学校の成果と課題を冷静に受け止めているかどうかを確かめることができる。
②学校は社会の厳しい目に日常的にさらされているが、なぜ社会は学校に厳しい評価を下すのか、その根拠を冷静に分析し、学校として今後どう工夫・改善していくべきかを正しく認識しているかどうか確かめることができる。
以上2点のねらいについて、記述例を見ながら解説していこう。

 一見、よく書けているが、2つの記述例(序論部分)は、受験生が陥りがちな「落とし穴」に、見事にはまってしまった例と言えるだろう。
具体的にどのような点が問題なのか。記述例ごとの問題点を明らかにしながら、論作文を執筆する際の2つの注意点を解説していく。

 

ポイント① 問題を短絡的に捉えない

記述例1については、いじめ問題とSNSを短絡的に結び付けている点に問題がある。文部科学省の調査結果によると、いじめの態様の第1位は、全校種共通して「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」で全体の62.5%を占める。
一方、「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」は、高等学校では約17.4%(第2位)に上るものの、小学校では1.1%(第8位)、中学校では8.0%(第4位)、全体で3.3% に過ぎない(いずれも「平成28年度『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』結果(速報値)」より引用→「教員養成セミナー」2018年3月号P.9参照)。
また、「情報モラル教育」の目的は、SNSなどによるひぼう・中傷の防止だけではない。情報社会の中では、無知が原因で被害者になることもあれば、知らないうちに犯罪に加担してしまうこともある。そうした状況を踏まえ、情報社会の仕組みを正しく理解し、子供たちの情報処理・活用力を総合的に高めることが、情報モラル教育の根本であることを理解しておく必要がある。
一方で、記述例2における最大の問題は、子供たちを取り巻く諸問題の責任を、一方的に家庭の問題としている点だ。論作文の執筆に当たって求められるのは、当事者意識である。教員を目指すのであれば、子供を取り巻く諸課題の原因が学校・教員の教育活動全般にあると捉えねばならない。
また、「家庭のルール」や「フィルタリング機能」の不十分さが、SNSなどによるいじめの原因であるという捉え方も、偏っていると言わざるを得ない。そうしたものがなくても、情報活用能力を確実に身に付け、情報モラルを含む道徳的実践力が養われていれば、問題は発生しないはずだ。
記述例2は一見、客観的根拠に基づき、論理的に展開できているようにも見える。だが、スマートフォンの利用率など表面的な数値だけを根拠にして、それを「いじめの温床」だと指摘している点は短絡的だと言わざるをえない。

 

ポイント② 出題の意図を読み取る

 この問題文にある「インターネット」「スマートフォン」「SNS」は、いずれも受験生にとって幼い頃から慣れ親しんできた身近なツールであり、生活の一部にもなっているものだ。それだけに、「このテーマなら現職の先生よりも自分の方がよく知っている!任せておけ!」と言いたくなってしまう問題と言えよう。
しかし、問題文をよく読むと、最先端の情報機器に関する知識を問うているわけではない。情報機器が予想を超える速さで進化し続ける中、子供たちにそれを正しく有効に使いこなせるようにするために、あるいは子供たちを平和で豊かな世界を築ける人材に育て上げるために、学校・教師として何をなすべきかが問われているのだ。
本論でその具体策を示せていたとしても、序論でこのような方向性のズレが生じていたら、採点者はその違和感を引きずったまま、読み進めていくことになってしまうであろう。
2つの記述例のように、情報機器の負の側面だけを取り上げ、問題を狭く捉えてしまうと合格点は得られない。情報機器には負の側面があることを理解する一方で、これまでになかった優れた機能を有し、今後も続々と新しい機能を備えて私たちの暮らしを便利にしていくであろうことも、理解しておく必要がある。その上で、教師として子供たちに対して何をなさねばならないかを考え、実践的指導力を高めていく必要があろう。

 

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