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教師のそのアクション イイ?ダメ?どっち!? 〜教科書の使用義務

教壇に立つ弁護士・神内聡が一刀両断!
教師であり弁護士でもある神内聡先生が、教師がやりがちなアクションを法規に基づいて解説します。

教師のそのアクション
イイ?ダメ?どっち!?

著・監修 神内聡
弁護士・高校教員。教育法を専門とする弁護士活動と東京都の私立学校で高校教師を兼業する「スクールロイヤー」活動を行っている。担当科目は社会科。著作に『学校内弁護士 学校現場のための教育紛争対策ガイドブック』(日本加除出版)など。

設例1 教科書の使用義務

先日、とても良い本を読みました。考えさせられることが多く、子供たちの学びにもなると思います。教科書ではなく、この本を中心に授業を展開したいと考えているのですが、ダメでしょうか?

1 教科書は使わなくてはいけないが…

学校教育法は「小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない」と規定しています(第34条第1項)。そのため、学校の授業では教科書検定に合格した教科書を使用しなければなりません。日本では他の先進国と異なり、教師に検定教科書の使用が義務付けられており、教師の教材選択の自由は制限されています。
もっとも、学校教育法は「前項の教科用図書以外の図書その他の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる」と規定しており(第34条第2項)、このような教材は「補助教材」と呼ばれています。補助教材は教科書を使用することを前提にしているため、教科書を使用せずに補助教材のみで授業することは認められない、と解されています。したがって、設例のように、教科書を使用せずに教師が選んだ本のみによって授業することは学校教育法に違反する、ということになります。
しかし、これは形式的な法律論の話であって、小・中学校には国公私立問わず教科書が無償で配布されるため、実際の教育現場では教科書自体は配布されていてもほとんど使用せずに授業することは普通に行われています。例えば、体育、美術、技術家庭などの実技科目では、教科書を使用することはほとんどありません。また、筆者が担当する高校の「現代社会」でも、教科書はほとんど使用せず、教師が自作した教材を用いて授業をしています。
ただし、公立学校では授業で使用する教科書および補助教材について、学校から教育委員会に届出をした上で承認される必要があります(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第33条第2項)。また、補助教材の選定にあたっては、「多様な見方や考え方のできる事柄、未確定な事柄を取り上げる場合には、特定の事柄を強調し過ぎたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど、特定の見方や考え方に偏った取扱いとならないこと」「購入に関して保護者等に経済的負担が生じる場合は、その負担が過重なものとならないようにすること」などの点に留意しなければならない、とされており、設例においても、教科書を形式的に使用することを前提に、補助教材として選んだ本が上記の選定指針に適合している必要があるでしょう。

 

2 道徳が教科化され、現場の負担は増加

小学校では2018年から、中学校では2019年から、道徳が「特別の教科」になるため、道徳の授業でも、他の科目の授業と同様に教科書検定に合格した教科書を使用することになります。
小学校の道徳の学習指導要領によれば、道徳の教材については、「生命の尊厳、自然、伝統と文化、先人の伝記、スポーツ、情報化への対応等の現代的な課題など」を題材とすることや,「人間尊重の精神にかなうものであって、悩みや葛藤等の心の揺れ、人間関係の理解等の課題も含め、児童が深く考えることができ、人間としてよりよく生きる喜びや勇気を与えられるものであること」といった点に留意して教材を選ぶ必要があります。したがって、設例が道徳の授業の場合、教師が選ぶ本も以上のような点に適合する教材でなければなりません。
しかし、道徳は本来専門教科として扱われる必要があるにも関わらず、道徳を専門とする教員がほとんどいないことから当面は学級担任が担当しなければならず、学級担任にとっては非常に負担が重い教科とも言えます。教材の選定については、こうした学級担任の負担を軽減するためにも、できる限り教材の自由度を認めて学級担任の授業がやりやすい運用を促進すべきである、と考えます。

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