教師の本棚 | おすすめ書籍

おすすめ書籍紹介〜今月のテーマ 「雪」

丸山 匠勇(板橋区立西台中学校教諭)

 

「天は我を見放した」壮絶な人と自然との闘い

『八甲田山死の彷徨』
新田次郎=著/1978年/新潮文庫/¥637+税

この本を読んでいらっしゃる方々の世代は、新田次郎の本を読んだ経験がおありでしょうか。私たちの世代にとっては、新田次郎の作品は上質で硬質なエンターテイメントでした。『孤高の人』『聖職の碑』『アラスカ物語』『富士山頂』、みな胸を熱くして読んだ記憶があります。しかもこれらの本は、みな「雪」に関わりがありますが、中でも一番の傑作は本書であると私は信じて疑いません。日露戦争前夜、ロシアの寒さに対応するために行われた冬季八甲田山縦断。そこで遭遇した厳寒の大自然。極限ともいえる状況の中での人間の姿を、特に上に立つ者のあり方を迫真の筆で描き出します。
映画化もされ、高倉健をはじめとするオールスターキャストが出演していてそれも傑作だったのですが、断然原作の方が迫力があります。漢字を多く使用した文体には読む者をぐいぐいと引っ張っていく力強さがあるので、読み出したらやめられません。是非これを機に、新田次郎の諸作品に触れてみてはいかがでしょうか。

 

たった2行で無限の広がり

『測量船』
三好達治=著/1996年/講談社文芸文庫/¥1,100+税

「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。」
中3の初めの授業で私が必ず扱う詩です。この2人の関係は?2人の屋根とは?外の様子は?今 の気温は?次々にイメージが広がっていきませんか?詩を読むのではなく、詩を起点として自分の心の中へ潜っていく、そんな経験を生徒にもさせてみませんか。
また、この詩集の中には、やはり雪が大きなインパクトになっている「乳母車」という詩も載っています。「淡くかなしきもののふるなり 紫陽花いろのもののふるなり」という2行もどこかで目にされたことがあるのではないでしょうか。じつは本詩集は、こういった軽い感じの詩だけでなく、実にたくましい詩がいくつも載っています。近代と現代の狭間に置かれた抒情詩集の傑作ですので、是非いくつかの詩だけではなくて、詩集として読んでみてください。

 

これぞエンターテイメントの王道

『ホワイトアウト』
真保裕一=著/1998年/新潮文庫/¥907+税

日本最大の貯水量を誇るダムが、テロリストに占拠された。ふもとの住民を人質に、要求は50億円。激しい吹雪の中、1人の男が敢然と立ち上がる。同僚と自分の過失で亡くした友の婚約者を救うために。圧倒的なスケールと緻密な筆致で、本の厚さをまったく感じさせない傑作です。本を読む楽しさを十分に伝えてくれます。作者の真保裕一は、デビューから『連鎖』『震源』『奪取』と味の良い作品を書き続けてきましたが、この『ホワイトアウト』(雪でまったく前が見えなくなる現象)で大きく化けた作家です。もし本作が気に入ったのなら、本作以前の作品にも手を伸ばしてみてください。

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