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学校にまつわる謎を解け!教職探検隊「 教員の給与」

このコーナーは、学校や教育にまつわる、知っていそうで知らない素朴な疑問を解き明かすもの。編集部による「探検隊」が、教職のプロ・高野敬三先生の元へ「遠征」します。
今月の謎は「教員の給与」。公務員である教師ですが、一般公務員とは少し違う給与体系になっていることを、探検隊員らは遠征を通じてつかんだようです。

監修 高野 敬三(明海大学副学長)
1977年に都立高校英語科教員となる。都教育委員会理事、都教職員研修センター所長、都教育監などを歴任し、2016年より現職。

 

教員の給与の3つの原則

(以下 高=高野先生、隊=探検隊員)
隊1・2:先生、こんにちは!今日は、教員志望者なら当然気になる教師の給与について教えてください!
高:教師のやりがいは決してお金で計れるものではないけれど、人生設計のためには、一度確認しておくのも悪くはないかも知れないね。
隊1:よろしくお願いします!
高:まず、地方公務員である教員の給与については、3つの大原則がある。まずは「職務給の原則」だ。地方公務員の給与について定めた法律は覚えてるかな?
隊2:確か、地方公務員法にあったと思います。
高:そうだ。第24条第1項に「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない」とある。
隊1:抽象的だけど、何を意味しているのですか?
高:つまりは、給与額は職務の難易度や責任の度合いに応じ差を付けるということ。これが1つ目の大原則だ。
隊2:2つ目の大原則は何ですか?
高:「均衡の原則」だ。同条第3項では、「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない」とある。給与は民間等とかけ離れない金額にするということだ。
隊1:3つ目の原則は何ですか?
高:同条第6項「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」という「条例主義」の原則だ。教員の給与は、都道府県議会の同意を経て決まるんだ。
隊2:つまり、給与額は各都道府県で異なるんですね。
高:うん。例えば、東京都の場合、一般的には大学卒業者の初任給は約24万7500円(小・中・高・義務教育学校)。北海道の場合は20万7480円※1(小・中・高)だ。
隊1:少し差があるように見えますが。
高:一般的には都市部が高い傾向にあるようだが、都市部は家賃や物価も高いので、どこの自治体でも、教員の暮らし向きは同程度と考えてよいだろう。
※1 地域手当を含まない金額。教員の給与は自治体により含まれる諸手当が違うことに留意が必要。

 

一般の公務員よりも本給は高い!

隊2:教員の給与は、安定した生活を送るのにじゅうぶんな額でしょうか?
高:もちろん。むしろ、一般公務員よりも優遇されている面もある。
隊1:どういうことですか?
高:1974 年に制定された「人材確保法(人確法)」という法律で、教員の給与は一般公務員の給与水準よりも高くすると定められているんだ。
隊2:えっ! なぜ教員だけが!?
高:歴史的経緯から説明しよう。この法律ができたのは、高度経済成長期の真っ只中。民間企業に就職する人が増え、公務員の人気が下がっていった。
隊1:今とは逆ですね。
高:当時の首相は田中角栄。若い人にとっては歴史上の人物かも知れないが、昭和の豪腕政治家だ。教育は国家の土台という考え方があったのだろう。人確法を制定し、教員の本給を段階的に25%引き上げた。これがまだ生きているというわけだ。
隊2:へー。それほど教育を重視していたんですね。
高:うん。教育関係者には、角栄の人確法とその制定につながった昭和46年の「四六答申」はかなり有名だ。

 

諸手当と残業代の実態

高:本給以外に諸手当もある。諸手当の種類は全国共通だが、金額は本給同様自治体ごとに異なる。たくさんの種類があるが、次のようなものが代表例だ。

★教員の諸手当の例(金額は東京都の場合)
●教員特殊業務手当
・修学旅行など宿泊での指導業務:日額1700円
・週休日の部活動指導:日額4000円(4時間以上)
●夜間定時制教育勤務手当:日額520円
●定時制通信教育手当
・給与月額+教職調整額(後述)×5%(教諭の場合)
●扶養手当
・配偶者:1万円、子:7500円など
●住居手当:1万5000円
●期末手当・勤勉手当(ボーナス):年計4.4ヵ月分(2017年度の一般教諭)

隊1:あれ? 残業代が見当たりませんね。
高:そこが一般公務員や民間企業と違うところだ。残業代はない代わりに、「教職調整額」として給与の月額4%が一律で支払われているんだ。
隊2:なぜ4%なんですか。
高:その昔、教員の就業時間は1日7時間45分でおさまると考えられ、残業という考え方もなかった。しかし、実態と合わなくなってきたため、1971年に「給特法※2」が制定された。この法律では、教員の残業代は支給しない代わりに、勤務時間の内外を包括的に考えて給与の4%を本給にプラスするとしたんだ。
隊2:初任給24万円なら9600円。忙しいといわれる教員の勤務実態に見合ったものでしょうか。
高:なかなか難しいね。ただ、教員は勤務時間の内外を切り分けられないというのも事実だ。時間外だからといって悩みを抱える子供を放ってはおけないし、休日でも子供が心配で仕事に向かうこともある。どこで線引きするかに加え、支給額や支給方法にもいろんな意見がある。今後、議論が必要な課題だね。
※2 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法

 

「信用」は抜群!

高:一方で、教員には民間企業にはない「恩恵」もある。「信用」だ。教員はよほどのことがなければ失業はない。勤務評価による個人差はあるものの、年功序列で確実に昇給していくから、家を購入する際のローンも民間企業のサラリーマンより断然に組みやすいぞ。
隊1:確実に昇給! 探検隊の給与は、今後の業績次第で見通し不明。ビクビクですよ!
高:おいおい、見通し不明だなんて、誌面でそんなことを口にして、編集長に怒られないのかい?
隊2:大丈夫です。今はどの企業でも同じですし、編集長が会社の上の人に怒られるだけなんで(笑)。
高:わっはっは。隊員諸君が売れっ子になればいいね。

 

教員志望者に考えてほしいこと

隊2:それにしても、教員の給与は、どこを基準にして見るかで、印象が違ってきますね。
隊1:教職調整費は合っているか分からないけど、民間企業から見ると安定性は抜群。
高:うん。人によって感じ方は違うだろう。けど、僕が伝えたいのは、教師とはかけがえのない命を扱う仕事ということ。自身も子供も成長できることが、最大の魅力だ。安定や給与だけを求める人は、必ず壁にぶつかる。受験生は自身の胸に手を当てて、考えてほしいね。

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