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学校にまつわる謎を解け!教職探検隊「教員の赴任・異動」

このコーナーは、学校や教育にまつわる、知っていそうで知らない素朴な疑問を解き明かすもの。編集部による「探検隊」が、教職のプロ・高野敬三先生の元へ「遠征」します。
今月の謎は「教員の赴任・異動」。学校の先生の異動は、誰が対象になり、どのような規定に基づいて行われているのでしょうか。

監修 高野 敬三(明海大学副学長)
1977年に都立高校英語科教員となる。都教育委員会理事、都教職員研修センター所長、都教育監などを歴任し、2016年より現職。

 

教育委員会が赴任先・異動を決める

(以下 高=高野先生、隊=探検隊員)
隊1・2:今号が発売される11月には今年度の試験の合格者が出揃っていますね。
高:そうだね。自治体も12月ごろまでには採用候補者説明会を開いて、今後の手続きや教師としての心構えなどを合格者に伝えることになる。そして、その後、「初任校」が決定して4月から教員ライフがスタートするんだ。
隊1:いよいよですね! でも、初任者の場合は「赴任校」ではなく、なぜか「初任校」っていうんですね。
高:うん。僕もそうだが、やはり教員にとって初めて赴任した学校には、教師としての自分の基礎が養われるだけあって、強い思い入れができる。だから、一校目の赴任校は、「初任校」と特別な呼び方をしたくなるもんだよ。
隊2:初任校って、誰がどうやって決めるんですか?
高:教員の任命権者である教育委員会が、現職の先生の異動を加味しながら、膨大な作業を経て決定しているよ。
隊2:新任と現職のバランスを見ているんですね。高:その通り。だいたいどこの自治体でも、次のようなことを見ながら、赴任校を決定するんだ。

①年齢層
②教員の経験年数
③男女⽐(小学校は女性が多くなることが多い)
④役職・職層
⑤教科のバランス

高:これに加えて、市区町村立の場合は、校長による「この教育に力を入れたい」という「具申」も加味する。例えば、「理科教育に力を入れたい」「体育を強くしたい」といった具合だ。

 

一校にいられる年数には上限がある

隊1:でも、そもそもなぜ教員に異動が必要なのですか? ずっと同じ学校にいた方が、地域にも子供にもなじめると思うのですが。
高:いや、教員がずっと同じ学校にいるのは弊害が大きい。教員は、いろんな上司、同僚、地域、子供、保護者と接することで成長していく。教員が一箇所に留まるとマンネリ化し、地域の教育が変わらないんだ。
隊2:ほかの役所でも民間企業でも、人事異動して組織を活性化するのと同じですね。
高:その通りだ。だからどの自治体でも一校にいられる上限を決めている。例えば東京都の場合は、同じ学校に3年以上勤務している人は異動の対象になる(3年未満でも異動はできる)。また、6年に達したら異動するというのが大原則だ。

 

異動のルール

隊1:この原則に従うと、東京都では毎年どれくらいの人が異動の対象になるんですか?
高:公立校の6万人の教員のうち、約1万人が毎年異動することになる。
隊2:実に6人に1人が異動するんですね。
高:異動の仕方だが、これにもルールがある。先にもいったが、教員は違う地域に行くことで成長する。そのためのルールだ。
隊1:具体的にはどういうことでしょうか。
高:どの自治体でも、地区町村をいくつかの区域に分けて違う区域に異動したり、学校をいくつかのタイプに分けて違うタイプの学校に赴任するようにしたりといったルールを定めている。再び東京都を例にすると、まず、地区町村立学校の場合は、62の市区町村を12区域に分けている。そして、「5校を経験するまでに3つの地域を経験しなければならない」としているんだ。
隊2:都内でもいろんな地域を経験できるんですね。
高:うん。他方、都立学校の場合は、学校タイプを全日制、定時制、島嶼部などによって、A〜Dのタイプに分け、違うタイプに異動するようにしている。初任者についての規定もあるぞ。
隊1:受験生が知りたいところですね!
高:誌面が足りないからごく簡単に要約すると、初任者は島嶼部や特別支援学校、定時制などに赴任することが多いんだ。
隊2:ほほう。でも、受験生はまずは合格を目指さなきゃですね。

 

異動についての特例もある

高:先ほど、一校にいられる上限は6年といったが、例外もある。
隊1:どんな場合ですか?
高:校長が「学校経営上、引き続き勤務させることが必要」と認めた場合だ。例えば、中学校や高校の部活動でとても優秀な成績を残すなど、生徒指導力の面で替えがきかない先生が挙げられる。また、高校で進学率を上げるなど教科指導力に優れた先生の例も挙げられる。ただ、6年以上勤務させたい場合は、校長が教育委員会に具申するんだが、原則を踏み外すことなので、なかなか簡単にいえることではない。
隊2:逆に、先生個人から、異動先について希望を出すことはできないんですか?
高:希望を出せる場合もある。例えば自治体によっては「FA異動」や「公募制異動」という制度を定めているところもある。
隊1:FAってプロ野球のフリーエージェント制と同じものですか?
高:そうだ。一定の条件を満たした場合「中高一貫校で指導したい」「進学重点校で教科指導に力を入れたい」などの希望を出せるんだ。この制度には、教員のモチベーションアップにつなげる目的もある。

 

「隣の芝は青く見える」

隊1:高野先生もいろんな学校を経験したんですか?
高:もちろんだ。僕の場合は高校の教員だったが、ときには生徒指導に追われてばかりという学校もあった。正直いえば、当時はその異動を恨めしく思ったこともあったが、今となっては、そうした経験が自分をとても成長させてくれたと感じている。
隊2:異動することによって、いろんな経験を積めるんですね。
高:その通りだ。どの学校にいっても全力を出せば、自らが成長できる。ときには「隣の芝が青く見える」なんてことも、もちろんあるし、僕にもあった。でも、どこの赴任先に行こうが、力を出し惜しみしていては、子供たちも自分も何も変わらないんだ。受験生にはこのことをぜひ伝えておきたいね。
隊1・2:熱いメッセージ! 高野先生ありがとうございました!

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