最新号の内容 | 学級経営基本のキ

学級経営キホンのキ 「忘れ物」=「自分の学びを捨てること」の巻

即戦力アップ大作戦!論作文・面接でも役立つ学級経営キホンのキ

「忘れ物」=「自分の学びを捨てること」の巻

河原田 友之(東京教育研究所主任研究員)
千葉県で37年間教員を勤め、現職。

忘れ物をめぐる私の記憶

さて、今月は誰にでも経験のあることを取り上げます。「忘れ物」です。多くの先生方はどうしたら失くすことができるか悩みます。近い将来、教師になるあなた方はどうすれば忘れ物がなくなるのかを考えるきっかけにしてほしいと思います。
教科書、ノート、体操着、図工の用意などなど、新学期が始まって1ヵ月も過ぎると子どもたちは、学校生活にも慣れて「忘れ物」が多くなってきます。4月の保護者会の席上、保護者の間からも「うちの子、忘れ物が多くて…」、そんな会話がよく聞こえてきます。困っているのは教師とて同じです。
3年生を受け持った5月のこと。休み時間の終わりに近づいたとき、A君が「先生、缶切りと針金をください」といいます。「どうした」と聞きますが、彼は「えへへ」と笑うばかり。3時間目からは図工の時間です。もう読者の皆さんもお分かりかも知れませんが、水彩筆を洗う水入れを忘れたのです。休み時間に、彼は学校中を回って、ジュースの缶、コーヒー缶をたくさん拾ってきたのです。これを3つ合わせて水入れをつくりました。忘れてきた彼は、何とか自分の力でつくってしまったのです。私が、彼のそばで「すごい!」というと、うれしそうに笑っていたのを思い出します。この話は私の学級通信でも取り上げて話題になりました。

忘れ物= 学校における「永遠の課題」

学校においては、この「忘れ物をしない」ことは、「廊下を走らない」ことと合わせて永遠の課題のようです。廊下歩行については、先生が注意すると、「先生だって走ってるじゃない」と、必ず子どもはいいますし、言葉に出さなくても多くの子どもが思っているのです。どこの学校でも必ず生徒指導上の問題として話題に上ります。「廊下は静かに歩きましょう」「走らない」などの標語が1年間で何回か「月目標」として取り上げられるというのが実情です。
では、「忘れ物」についてはどうでしょうか。名札を忘れてきた子どもの中には、朝、正門で待っている先生たちの前を通るときに、下を向いて、さりげなく手で隠しながら歩いてくる子もいます(今は、不審者対応の観点から、名札を学校保管したり、取り止めたりしている学校もあります)。体操着を忘れると、体育が好きな子どもは、「大好きな体育ができない」と隣のクラスの友達から借りてでもやりたがります。水泳の用意を忘れた子どもは、「家に電話していいですか?」などということもありますが、やりたくない子どもにとってはいい口実になります。

子どもが忘れ物をしたときの対応

先生方は、子どもが忘れ物をしたときにどう対応しているのでしょうか。
・S先生はどなりつけました。
・O先生は何も言いませんでした。
・P先生は、体操着を忘れた子どもが4人もいたので、「体育中止」といって別の授業を行いました。
・T先生は、忘れ物が続いているため、学級活動として話し合いをさせました。
・B先生は、ノートを忘れた子どもに「家に帰ったらノートに写しなさい」といって紙を渡しました(これも1人2人ならまだいいのですが)。
・C先生は、教科ごとにノートを4・5冊ずつ買って用意しておき、忘れた子に使わせて、新しいものを返却させました。
いろんな対応法がありますが、しかし、これらは忘れ物に対する「後追い指導」です。後追い指導から身に付くことがあるでしょうか。確かに「忘れ物」をしたらその場で指導することは必要です。しかし、子どもの心に響く指導になっているでしょうか。「なぜ、忘れ物はよくないか」に迫らなければ、ダメなのです。
しかし、それでもなくならないのが忘れ物です。その度に、子どもたちが「あ~あ、しまった。失敗した」という後悔と反省の気持ちを持つことが大事なのです。少しずつでいいのです。忘れ物は誰にだってあるのですから。

忘れ物をなくすための指導とは?

こうした「忘れ物をしたことに対する指導」とともに大事なのが、「忘れ物をしないようにする指導」です。先生たちは、忘れ物をしないためにどんな指導をすべきでしょうか。

1 毎日の学習を楽しいものにすること
楽しい学習は、子どもの学びの意識を高めます。明日また「こんなことをする」と意識化されると忘れ物は減っていくものです。「分かる」「できる」授業は学習の意欲を高める最大の要因です。意欲は学びのエネルギーとなり、さらに「もっと、学びたい」という姿勢につながっていきます。子どもの心に学びの炎をつけておくことが「忘れ物ゼロ」に近づくための秘訣です。教師は分かる授業を目指して努力を怠ってはいけないのです。
2 連絡帳などの記録のとり方を丁寧に教えること
小学校では帰りの会、中学校では帰りの学活で、明日の予定をきちんと伝え、メモすることをどこでも教えます。忙しさの中で、確認も取らずに「さあ、メモしなさい」や、口頭で「忘れないように」と伝えても、遊ぶことに夢中の子どもにとっては、単にメモしただけであり、聞いただけなのです。これは、教師としての弱さでもあります。忘れ物をしたことで怒って、人格を傷つけることのないように、伝え方は慎重でしかも丁寧であることを忘れてはなりません。たくさん動き回る子どもたちです。聞いても覚えられないことは当然起こりうるものだと想定しておくことです。
3 学年だよりや学級通信で保護者へも発信しておくこと
当たり前のことですが、学校で、学級で、今何が行われているかを保護者に分かってもらうことは大事なことです。子どもの様子を保護者に知らせることで、安心を与え、信頼関係を築きましょう。そうすれば、保護者は、教師を支える大きな応援団になっていきます。そのような保護者は、忘れ物をなくす大きな力になってくれるでしょう。

私は、担任として子どもたちに問い続けてきました。「忘れ物は、学ぶことを捨てることだ」と。忘れ物をしたことで、子どもたちは後悔します。忘れ物によって、せっかく始まる楽しい学習のスタートが遅れて、教師も焦ります。
こうして、大切な学びの時間が無駄になってしまうのです。学級経営において、忘れ物を解決することは、大きな課題の一つであることを忘れてはなりません。

教セミちゃんねる 教員養成セミナーのご紹介 教セミLine@ 教員採用試験対策サイトへ

最新号のご紹介