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おすすめ書籍紹介〜今月のテーマ 「音」

丸山 匠勇(板橋区立西台中学校教諭)

あなたの使命

『羊と鋼の森』
宮下奈都=著/2015年/文藝春秋/¥1500+税

 「羊と鋼の森」、何て素敵な比喩なんでしょうか。羊はハンマーのフェルト、鋼はピアノ線、森はその2つを囲む外枠です。この本は、音の風景を追い続けたピアノ調律師の成長物語です。ピアニストを主人公にした本は古今東西多く、名作もたくさんあります。最近では恩田陸の『蜜蜂と遠雷』が傑作で、途中、架空の課題曲「春と修羅」のカデンツァ(奏者が自由に弾ける箇所)をめぐる部分は圧巻でした。しかし、本書はほとんど表舞台に出てこない調律師にも、こんなに豊かな音の世界があるのだということを強く感じさせてくれます。
主人公の「僕」が目指す音は、詩人・原民喜の言葉「明るく静か澄んでいて懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」なのです。どうぞ実際に手にとって、「僕」の成長を見守ってやってください。

 

トランペット1本を抱えて世界へ

『青年は荒野をめざす』
五木寛之=著/2008年/文春文庫/¥705+税

 今となっては時代背景がやや古びてしまったかもしれませんが、1960〜70年代の青春像をジャズに絡めて描き出した傑作長編です。ただ、そこに脈々と流れている、音楽(特にジャズ)とは、人間とは、人生とは、という問いは普遍的なものだと思います 。そしていつの世も青年は荒野をめざしていくのです、その地を沃野に変えるために。
モスクワから北欧をめぐりパリへと各国を周り歩く中で、主人公が目にし、体験していく幾つもの事柄は、今でも読者を魅了してやまないものがあります。
また、同じ作家の作品で、『海を見ていたジョニー』は、そこに戦争を絡め、短編ながら非常に深い問題を私たちにつきつけてきます。是非こちらも手に取ってみてください。

涙なしには読めないノンフィクション

『ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽』
佐藤由美子=著/2014年/ポプラ社/¥1200+税

 あなたは人生の最期に、どんな音楽を聴きたいでしょうか?「ホスピス」で出会った人たちとの触れ合いの中で、音楽療法士の作者が奏でた10曲をもとにして作られた連作短編です。
私は最近読んだ本の中で、本作ほど泣いた本はありません。再読・三読したときにも涙を抑えきれませんでした。「きよしこの夜」「What A Wonderful World」「Love Me Tender」「千の風になって」「椰子の実」「花〜すべての人の心に花を〜」など、の1編を取っても、人生と音楽という強いつながりが感じられます。
音楽だけではなくて、私たちは身の回りのいろいろな「音」によって支えられています。どうぞこれを機会にあの芭蕉のように、さまざまな音に耳を傾けてみませんか?

 

 

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