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おすすめ書籍紹介〜今月のテーマ 「風」

遠江 久美子(町田市立鶴川第二中学校主任教諭)

あなたの使命

『草原の椅子』〈上下〉
宮本輝=著/2001年/幻冬舎/〈上〉¥600+税、〈下〉¥648+税

 遠間憲太郎は50歳の会社員。阪神淡路大震災後、桃源郷とも呼ばれるフンザに旅した折、その地の老人に「あなたには使命がある」と告げられる。ある日、憲太郎は母親から虐待を受けていた4歳の圭輔に出会い、友達の富樫に助けられながら圭輔を育て愛おしさを深めていくが、やがて憲太郎は人生再生をかけて富樫、圭輔と共にフンザを旅するという壮大な夢を思い描くようになる。実現したその旅の途中、タクラマカン砂漠に各人が自らの足跡をつけながら歩くシーンで、私の心の中に風が吹いた。その風は力強く、温かく、私の心を攫さらった。
 私は担任として学級通信を通して“ 言葉の風” を生徒に届けている。盲導犬が傷付けられた話には多くの生徒が怒りをあらわにし、私の友人が癌を克服した話には拍手が起こる。友達の知らない部分に頷いたり、笑いが溢れたり…。これが私の使命だ。

 

大切な人の気配

『とりつくしま』
東直子=著/2011年/筑摩書房/¥600+税

 教師にとって一番辛いことは何だろう? それは教え子がこの世から先に逝ってしまうこと。事故や病気、そして自ら命を絶ってしまった彼ら。本書の中で、この世に未練を持つ死者に「とりつくしま係」が問いかける。「死んでしまった後、モノになって大切な人の近くにいられるとした ら、あなたは何になりますか?」死者の選択はさまざまだ。夫のお気に入りのマグカップになった妻、よく遊んでいたジャングルジムとして母親を待ちわびる男の子。彼らは生きている人に二度と話しかけることはできない。それぞれの思いを抱えながら、大切な人をそっと見守っていく。私は思う。そんな彼らの思いを、気配を、風を受け止められる人間でありたいと。世の中のあちこちに「とりつくしま」が溢れていると思うと、一つ一つが愛しい。そして悲しい。今の私にできることは、そうした風を感じながら目の前の生徒の小さな力になろうともがくことだ。

変化を自分の力に

『チーズはどこへ消えた?』
スペンサー・ジョンソン=著/2000年/扶桑社/¥838+税

 主人公はネズミの「スニッフ」と「スカリー」と小人の「ヘム」と「ホー」。2匹と2人が食料となるチーズを手に入れるために迷路の中を探し回るというお話。目的は同じでも、2匹は動物的本能で、2人は人間の経験則に基づく思考で迫る。その対比が面白い。私は男女のバドミントン部顧問を経験して思ったことがある。それは、指導には「男の子風」と「女の子風」があることだ。これは男女の特性を生かした指導をした方がうまくいくということである。男子は飽きやすく集中力が短いが、呑み込みは早く新し物好きだ。女子は上達の速度は遅いが、粘り強く理解力が高い。本書を読むと煮詰まって身動きが取れなくなってしまった際の新たな気付きが得られるかもしれない。教師として、多くの変化という風にいかに対応するかを考えさせてくれる1冊だ。

 

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