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学校にまつわる謎を解け!教職探検隊「初任者研修の秘密」

このコーナーは、学校や教育にまつわる、知っていそうで知らない素朴な疑問を解き明かすもの。編集部による「探検隊」が、教職のプロ・高野敬三先生の元へ「遠征」します。
今月の謎は「初任者研修」。合格を目指す人にとってもっとも身近な研修で、試験でも問われることがありますが、一体どんな目的で何をしているのでしょうか。

監修 高野 敬三(明海大学副学長)
1977年に都立高校英語科教員となる。都教育委員会理事、都教職員研修センター所長、都教育監などを歴任し、2016年より現職。

 

歴史ある「初任者研修」

(以下 高=高野先生、隊=探検隊員)
隊1・2:高野先生, こんにちは! この号が発売される9月になると、教員採用試験の合格者を発表する自治体が増えてきます。
高:そうだね。この時期は毎年、今夏の受験生はもちろん、受験生を一生懸命指導してきた先生たちにとっても緊張の高まる季節だ。
隊2:合格した受験生は大喜び。そんな姿を見られると、指導した先生もうれしいでしょうね。
高:うん。自分の教え子が合格すると、自分が合格したときと同じくらいの喜びを感じるものだよ。でも、僕の場合は、「おめでとう」という言葉とともに「ゴールはまだ先だぞ」と声をかけるけどね。
隊1:えー、合格=ゴールじゃないんですか?
高:多くの受験生は忘れがちなのだが、教員の1年目は「条件付き採用」。「初任者研修」を終えられなければ、「条件付き」は取れないんだ。
隊2:民間の「試用期間」と同じですね。
高:そうだ。教師は人に教える身である以上、常に自分も成長させなくてはいけない。そのように、法律にも定められているぞ。
隊2:確か、教育基本法の条文でしたっけ?
高:その通り。第9条第1項に「法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」とある。「研究」と「修養」をくっつけて「研修」だ。
隊1:おお! そうだったんですね!
高:つまり、教育基本法ができた1947年以降、初任者研修はずっと行われてきたというわけだ。
隊2:ずいぶん歴史が長いんですね。
高:うん。ただし、法的根拠をもったのは1988 年の教育公務員特例法の改正後だ。第23条第1項で「公立の小学校等の教諭等の任命権者は、当該教諭等(政令で指定する者を除く。)に対して、その採用(現に教諭等の職以外の職に任命されている者を教諭等の職に任命する場合を含む。附則第4条第1項において同じ。)の日から1年間の教諭又は保育教諭の職務の遂行に必要な事項に関する実践的な研修(以下「初任者研修」という。)を実施しなければならない」と定められ、正式な制度となったんだ。

 

 

研修の内容は?

隊1:一体どんな研修が行われるんですか?
高:これが、東京都の研修内容をまとめたテキストだ。
隊2:誌面では伝わらないかもしれないけど、とってもぶ厚い!

高:研修内容は多岐にわたるが、大きく、校内研修と校外研修の2つがある。校内研修は、校長が立てた研修計画に元づき、「指導教員」のもと行われる。内容は、指導案の書き方や授業づくり、保護者との付き合い方など、地域や学校の実情に合わせて決めている。
隊1:指導教員の先生がみっちり座学で教えてくれるんですか?
高:いや、現場は忙しいから、そんな時間は取れない。例えば、新人のA先生が空き時間がある際に、同じ教科のベテランのB先生が授業をしていたら、その授業を見て研修をする。見学の記録を作成し、放課後に指導教員とともに「振り返り」を行うんだ。同様に、空き時間に進路指導部会が開かれていたら、進路指導の研修のために会議に参加する。このほか、空き時間がある先輩に、自分の授業を見てもらうという研修もある。これは、先輩方から厳しい指導が入ることもあるから、新人にとっては乗り越えるべき大きな壁の一つだな。
隊1:あー、それ知ってます! 小学校のとき、若い担任の先生の授業を、年配の先生が難しい顔して見てたことがあります。我ながら抜群の記憶力だなあ。
隊2:よそ見してたって証拠で、自慢にならないよ。もう一つの校外研修は何をするんですか?
高:校内研修が地域や学校の実態に合わせて行うのに対し、校外研修は都道府県の実態に合わせて行う。具体的には、「教育センター」に集まって、先輩の授業の実演を見たり、大学教授やNPO、民間の講師の講義を受けたりする研修が中心だ。いずれも「見る」→「グループディスカッション」→「振り返り」が活動の基本となる。

 

 

変わりつつある初任者研修

隊1:いろんな研修があることは分かりました。でも、一体どれくらいの時間かけて行うんですか?
高:校内研修は300時間、校外研修は25日間だ。教員が校務に携われるのは1年のうち約10ヵ月。すると校内研修の場合、1ヵ月で30時間、1週間あたり7時間と少しという換算になる。
隊2:平日5日間で7時間もの研修を受けるということ? 忙しい現場で、指導される方もする方も、時間を確保するのはとても大変じゃないですか?
高:その通りだ。しかも、現在は団塊の世代の大量退職と、若い教員の大量採用が多く、指導教員をやれる中堅教員が不足している。その上、昨今の教育課題は複雑化している。だから、初任者研修を1年以上かけてやる自治体も出てきている。例えば、東京都は3年間の「若手教員育成研修」を行っている。これは校内研修を1年目で180時間、2年目と3年目で各30時間行うというものだ。

 

 

受験生にも知ってほしい初任者研修の意義

隊2:それだけみっちり初任者研修を受けられれば、授業力や学級経営、保護者対応など、いろんな技術が磨けそうですね。
高:その通りだ。欠席もなく脱落せずに初任者研修を終えられればようやく一人前だ。ただ僕は新人には、研修を通じて教師としての技術だけでなく、心の面も磨いて欲しいと願っている。具体的には、「チームワーク」だ。願わくは、教員を目指す受験生にも身に付けておいてほしい。
隊1:授業は一人で行うものなのに、何でチームワークが大切なんですか?
高:校務全般においては、教員一人でできることは限りがある。しかし、教員は常に教える立場にあり、ついつい教わることを忘れがちだ。若い人には、初任者研修を通じて、他人から謙虚に学び、協働する姿勢を学んでほしいんだ。
隊1・2:人は最初に習ったことは、ずっと覚えていますもんね。探検隊もチームワークで行こう!

 

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