学校不祥事の顛末

教頭が勤務時間中にネットオークション

【今月の事例】
教頭が勤務時間中にネットオークション
勤務中にインターネットを通じて金魚を売り、職務専念義務に違反したとして、A県教育委員会は7日、B市内の公立中学校の男性教頭(50)を同日付で減給10分の1(3月)の懲戒処分にしたと発表した。県教委によると、教頭は学校配備のパソコンを用い、勤務中に職員室で「らんちゅう」(金魚の一種)3匹をネットオークションに出品、計1万円で販売したほか、ネット上の掲示板に金魚に関する書き込みなどを行ったとされる。県民から県教委に指摘があり、本人も認めた。教頭は教員歴28年。金魚の飼育が趣味で、「軽い気持ちでやった。判断の甘さから迷惑をかけた」と反省しているという。

 

【法律家の眼】

勤務中における私的行為と
兼業の問題点

弁護士 樋口 千鶴(上條・鶴巻法律事務所/東京都教育委員会公益通報弁護士窓口)

 

1 勤務中の私的行為

本事例の男性教諭は、勤務時間中に、学校内で、学校に備え付けのパソコンを使用して、ネットオークションへの出品や掲示板への書き込みをしました。本来であれば、全力を挙げて職務に専念する法律上の義務が課せられているのですから、そのような職務と全く関連性のない私的行為を勤務時間中に行うことが、許されるはずはありません。また、こうした事例では、いつ誰が何を書き込んでいたなど明らかな証拠が残りますから、言い逃れのしようもありません。

 

2 職務専念義務違反

真摯かつ誠実に職務執行をするよう心掛ければ、自然と勤務時間内は自らの仕事に鋭意専念することになりますし、そうしていれば職の信用を傷つけることも起きないはずです。しかし、残念ながらこうした義務違反の処分が、なくならないこともまた事実です。

地方公務員法
第30条 すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
第33条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
第35条  職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

 

3 兼業(副業)についての考え方

この事例では、勤務時間中に副収入を得ていたとのことですが、仮に勤務時間中でなかったらどうでしょうか。以下、兼業(副業)の可否について検討してみましょう。
《なぜ兼業(副業)が原則禁止とされているのか》
地方公務員法第38条には、「営利企業への従事等の制限」という、いわゆる副業の原則禁止に関する制限があります。学校外であっても自由に副業を行うことができるとなると、副業に軸足が置かれて職務専念義務を果たせなくなる危険があることなどから、許可を得たような例外的場合を除き、副業は原則禁止とされているのです。
東京都の場合は、「学校職員の兼業等及び教育公務員の教育に関する兼職等に関する事務取扱規程」に、「兼業を許可しない場合」として「兼業のため時間を割くことによって、職務の遂行に支障を来すおそれがあると認めるとき」(第5条一号)、「兼業による心身の疲労のため、職務の遂行上その能率に悪影響を与えると認めるとき」(同条第二号)との定めがあります。これも上記と同じ趣旨を明らかにしたものと言えるでしょう。
1回だけネットオークションを利用したという場合に副業と認定されることはないとしても、反復継続して同種の取引を続け、営利目的と見ざるを得ないような場合は、副業禁止の面からも問題とされる可能性があります。また、こうした場合、仮に学校外での行為であっても、事前の許可が下りるとは考えにくいところです。

 

4 発覚の端緒

本事例は、県民による県教委への指摘が発端で発覚しました。近年、自治体には、公益通報を含めさまざまな情報の提供を広く受けることにより、自浄作用を発揮して不祥事の予防、防止に役立てる考え方が浸透しつつあります。
公務員である以上、いつ誰に見られても問題ないと言い切れるよう、襟を正すことが求められていますが、堅苦しく考える必要はありません。大切なのは目の前の仕事に常に一生懸命に取り組むこと、それだけです。初心忘れず、生き生きと「職務に専念」してくださることを期待しています。

 

【教育者の眼】

「軽い気持ち」や「判断の甘さ」が
教職員の不祥事につながる

濱本 一(共栄大学教授/前埼玉県教育局市町村支援部長)

 

■勤務中の私的行為 何が問題か

本事例は、公立中学校の教頭が、勤務時間中に学校のパソコンを使って私物を売ったり、趣味に興じたりして懲戒処分を受けたというものです。この教頭の行為は、次の3つの点で大きな問題があります。厳しい懲戒処分を受けるのは当然と言えるでしょう。
1点目は、教育公務員として、「全体の奉仕者」として、勤務時間および職務上の注意力の全てを職務遂行のために用いるように定めた地方公務員法第35条(職務に専念する義務)に違反している点です。本事例は、教頭による違反事例ですが、管理職に限らず、全ての教職員が職務に専念する義務を負っていることを忘れてはなりません。
点目は、管理職としての意識や自覚が欠如している点です。教頭は「職員室の担任」とも言われる管理職であり、教職員への指導の“要”となる立場にあります。にもかかわらず、こうした行為を行っていたことの罪は大きいでしょう。
一方の教員についても、子供たちの“手本”“範”であることを忘れてはいけません。さらには、保護者や地域の方々にとっても、教員は信頼されなければならない存在でもあります。教員を目指す皆さんは、本事例を通して教職への使命感や自覚を高めるとともに、自分自身にうぬぼれや思い上がりがないか、自戒してほしいと思います。こうした自覚や意識の欠如が、飲酒運転や体罰、わいせつ行為、公金横領、個人情報の流出などの不祥事を招く温床となっていくからです。
一旦、不祥事が起これば、これまで築いてきた学校への信頼は、一瞬にして崩れてしまいます。そして、その信頼を回復するには、全教職員が最大限の努力を費やしたとしても、一朝一夕にできることではありません。もちろん、不祥事を起こした当事者は懲戒処分等を受け、その後の人生は大きく変わってしまうことになります。不祥事の代償は、計り知れないことを自覚してほしいと思います。

 

■学校の設備は、子供たちの教育のためにある

そして3点目は、この教頭が学校の設備を私的利用している点です。学校設備は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第21条第2項にある「学校その他の教育機関の用に供する財産」です。すなわち、子供たちの学習や活動にとって必要なものであり、子供たちに「生きる力」を育む教育環境として重要な意義を持つ物で、それを私的に使用することは許されません。
当然、教職員に貸与されているパソコンも、子供たちの教育環境を充実させ、効率的に校務の処理等を行うためにあるものです。全ての施設・設備は公費によって整えられており、好き放題に使用することはできないという自覚を持っておく必要があります。
こうした自覚が欠如していると、「少しだけならいいだろう」「バレなければ構わない」という「軽い気持ち」「判断の甘さ」が生まれます。本事例の教頭が、勤務中に学校のパソコンを使って金魚を売り、ネット上に趣味の書き込みをしたのも、自覚の欠如に起因します。

 

■“誰に見られても恥じない言動”を心掛けよう

本事例における教頭の行為は、県民からの指摘で発覚しました。教員は「全体の奉仕者」であり、子供たちの“手本”“範”たるべき存在であるがゆえ、常に周囲から注目されていることを忘れてはいけません。
先述した「軽い気持ち」や「判断の甘さ」が生まれないようにするには、どうすればよいのでしょうか。それは、教育者として「誰に見られても恥じない言動」を心掛けることです。そして、その基盤は「教職への使命感や自覚、情熱」です。これから教職を目指す皆さんは、この心構えを盤石にした上で、教員採用試験に臨んでいただきたいと思います。

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