編集長コラム

報道される教師の過重労働 学校は本当に“ブラック”なのか

学校の多忙さを伝える最近の報道

ここ最近、教師という仕事の大変さ、過酷さが何かと話題になっています。
「休憩が取れない。」
「休日も部活動で休めない。」
「夜遅くまでの残業は当たり前。」
「持ち帰り仕事は日常茶飯事。」
そんな情報が、新聞やテレビで日々報道される中、「学校って、そんなにブラックな職場なんだ!」と驚いている人もいることでしょう。
確かに、教員という仕事は、楽な部類ではありません。朝は7時頃に出勤し、夜遅くまで職員室に残って仕事をしている先生もいます。月の残業が、過労死ラインと言われる「80時間」を超える人も珍しくありません。小学校の先生は空き時間がないために休憩時間がほとんど取れませんし、中高の先生は部活動指導で休日が潰れることもあります。仕事を家に持ち帰ることも当たり前。教員によるUSBメモリの紛失事故が相次ぐのも、そうした職場環境と無関係ではないでしょう。
加えて最近は、精神的な負担も大きくなっています。児童生徒の多様化が進む中で、授業や学級経営は難しさを増し、保護者とのトラブルも増えています。頼るべき中堅教員が不足している職場にあって、若手教員が孤立してしまうケースも少なくありません。
2015年度における学校教員の精神疾患による病気休職者数は5,009人。1995年度が1,240人でしたから、20年の間に4倍以上にも膨れ上がった計算になります。こうしたデータは、教師という仕事の「忙しさ」や「大変さ」と無関係ではないでしょう。

教師という仕事の特殊性

こうして見ると、まるで学校という職場が、小説『蟹工船』さながらの過酷な職場のように見えてきます。本誌の読者である教員志望者の中にも、最近の報道に一抹の不安を感じている人がいることでしょう。
しかし、誤解を恐れずに言えば、学校という職場が「ブラック」だという情報は、ある程度、割り引いてとらえる必要があります。もちろん、教員の仕事量が増えているのは確かですし、労働の量に対価が見合っていない状況があるのも事実です。しかしながら、いわゆる「ブラック企業」が利益追求を目的に、経営側が精神的な圧力をかけてくるのと比べれば、学校の多忙さはやや様相が違っています。
ある知人の先生に、「学校の忙しさ」について聞いたところ、次のような答えが返ってきました。「確かに以前よりは大変になっていますが、忙しいと感じるか否かは、“その人次第”だと思います。」
この言葉が物語るように、教員の中には、膨大な業務を抱えているのに、「忙しい」と思っていない人が少なからずいます。夜遅くまで教材づくりなどに勤しみ、月の残業が80時間に上っても、それを「子供のため」だとして、苦にしない人がたくさんいるのです。
なんと奇特な…と感心する人もいるでしょうが、そうした現場教員の熱意や使命感が、学校教育という公共サービスのクオリティを確保している、それが日本の公立学校の実態なのです。支給される残業手当は4%の教職調整額のみ。経営者(公立学校の場合は国と都道府県)から見れば、残業手当をほとんど払わずとも身を粉にして働いてくれるわけですから、こんなに有難い話はないでしょう。
また、日々の忙しさは、その人の仕事に対するスタンス次第という側面もあります。例えば、同じ小学6年生の担任なのに, ある先生は定時退勤で、ある先生は深夜残業というケースがあります。これは、要領の良さや仕事のスピードに因るところもありますが、何より“プラスα”の仕事をどれだけやろうとするか、仕事との向き合い方に因る部分が大きいのです。
こうした状況を見ても、教員の忙しさとブラック企業に勤務する営業職や技術職の忙しさを単純に比較できないことがお分かりいただけると思います。

臆することなく前へ踏み出してほしい

教師を目指す人たちには、学校という職場がブラックだという先入観は、持たないでいただきたいと思います。もちろん、着任当初はその忙しさに目が回る毎日でしょう。それでも、仕事に慣れきて、達成感や醍醐味が感じられるようになれば、多忙感や精神的重圧も軽減されます。これは、どんな仕事にも共通して言えることです。
新聞やテレビの報道は、気になるかもしれません。ただ、マスコミ報道というのは、ある事実や事象がクローズアップされると、他のメディアが“売れ筋商品”として追随する側面があります。「大変そうで自分には務まらないかも…」などと躊躇している人がいたら、どうか臆することなく、前へ踏み出してほしいと思います。
その一方で、学校という職場環境の改善は、国、自治体、学校の各レベルで図っていく必要があります。教員の熱意や使命感に甘え、実質的な残業代不払いを続けているような実態は、改善して然るべきです。すでに一部で、部活動指導員の活用などが行われていますが、今後も外部専門家の登用等は図っていくべきでしょう。
しかし、最も必要なのは、やはり教員の数を増やすことです。そうして1人の先生が受け持つ児童生徒数が少なくなれば、教員の負担は軽減され、サービス残業状態の解消も図られます。加えて教員が一人一人の子供をより細やかに見られるようになり、いじめや不登校などの減少、学校事故の防止、学力向上なども期待できます。
教員の定数をめぐっては、毎年度、文部科学省と財務省がバトルを繰り広げています。国の財政が厳しい中で、「エビデンスを示さないと予算を措置できない」という財務省の主張ももっともです。だからこそ「教員の増員=教育の質を高める」という、現場の誰もが実感している知見を、データ的に示していくことが課題となります。
教員の多忙さがクローズアップされ、見直しを図ろうとする動きが出ていることは、喜ばしいことです。今後数年のうちに、学校がより働きやすい職場になっていく可能性もあるでしょう。本誌をお読みの皆さんは、どうか不安に思うことなく、教員採用試験合格に向けて邁進していただきたいと思います。

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