教職感動エピソード

Vol.26 出会いの「縁」を「絆」に

福島 愼哉(宮崎県宮崎市立住吉小学校長)

「出会いの“あい”は愛である。」

現在中学校の校長をされている私の旧友の言葉です。彼は、名刺の裏に彼独特の毛筆文字で大きく、この言葉を書き入れています。人を大切にする、出会いを大切にする彼の人間性が表れています。私も大好きな言葉です。日本には昔から人の出会いに関わる素敵な言葉が数多くあります。「一期一会」は、その代表的な言葉でしょう。元々は茶の湯の教えを説いた言葉と言われています。「今日の会は生涯に二度とない会だと思い、主客ともに誠心誠意、真剣に行うべきこと」。転じて、「一生に一度しかない出会い」「一生に一度限りであること」という意味が込められています。とてもいい言葉です。私はそこからさらに、出会いとは何
らかの「縁」であり、その「縁」を機会だけで終わらせることなく、さらにつながりのある「絆」となって続いていくものであってほしいといつも願っています。

私自身が常に心掛けてきたことであり、若い先生方に言っているのは、教師は授業で勝負。そして、その基盤になるのが学級経営だということです。どういう学級にしたいのか、ぶれない経営方針を持つことが大切だと信念を持ってやってきました。そして、その取り組みを通して、「子供たちが、この学校に通って学ぶことができて良かった」「保護者が、自分の子供をこの学校で学ばせ、卒業させて良かった」「私たち教師が、この学校で子供たちを教えることができ、成長を見届けることができて良かった」と思えるように、「縁」での出会いを「絆」にしていきたいと常々思っています。

今思い起こすと少し恥ずかしいのですが、私は若い頃、熱血先生だったようです。常に子供たちの先頭に立ち、動いている教師だと子供たちは思っていたようです。そんな話が出たのは、私が若い頃、日本人学校で勤務した当時の小学校6年生の教え子たちと、25年ぶりの再会をした時でした。当時、その日本人学校は、自由な校風を大切にしており、細かな校則がありませんでした。中学部は生徒手帳もなく、制服もありませんでした。私はその学校での3年間で、小3、小6、中1の担任を受け持ちました。

服装も行動も特に制限がないので、児童生徒それぞれが自分なりに判断して行動していました。服装もいろいろで、人のまねをすることもなく、どの子も自分らしい服装で自己をアピールしていました。また、逆にそれを批判して悪口を言うような子もいませんでした。

私はこの学校の校風が好きでしたが、「何をやってもいいんだ。自由だから」という子供たちの考え方を感じたとき、このままではいけないのではないかと思うようになっていきました。特に、小6、中1を担任した2年間は強く感じました。その当時、子供たちに考えてほしいとき、いつも伝えていた言葉があります。

「自由とは何ぞや。自由と自分勝手とは違うものです。自由には責任が伴います。」

ことあるごとに、私はこのフレーズを言っていたようです。

25 年ぶりに再会した、40 歳前になった教え子(当時学級のリーダー的存在で、表現力豊かだった女の子)が、その時の様子を面白おかしく再現してくれました。みんな大爆笑で、「そうだった」「先生のこの話はよく覚えています」「当時はとても熱い先生でした。先生は今も変わらないわ。話し出すと熱いわ」「先生の口癖だった『自由とはなんぞや』という言葉、今は意味がよく分かります」など、再会の場は和やかな雰囲気に包まれました。自分が学級経営の柱にしてきたことが、子供たちに少しは伝わっていたのかなぁと、嬉しい時間を過ごしました。

また、子供との関わりの中で、こんなこともありました。

3年ほどで入れ替わりをする日本人学校では、友達関係が希薄になりがちです。特に女子は6年生にもなると仲の良いグループがいくつかでき、互いにけん制し合う場面も見られました。極端なケースでは、お互いのグループ内だけでの活動になってしまうこともありました。何とかして、みんなで活動するようにできないものかと頭を悩ませていたときのことです。体育のポートボールの授業の中で、仲の良いメンバーだけでボールが回り、同じチームでも他のグループの子にはパスが回らない場面がありました。やっとパスを出しても、取りにくいボールを投げてしまう。特にそれぞれのグループのリーダー格の子供同士は顕著でした。私は、この機会をチャンスととらえ、「パスは心のキャッチボールだよ。相手の目を見て、相手の取りやすいボールを出そう」と言い、チームの中に入って一緒にパスを出し合いました。少しずつパスが通るようになり、チームもゲームで勝つようになってきました。それ以後、グループを越えて仲良く活動する場面が増え、気持ちよく卒業の日を迎えられたことがとても印象に残っています。その子供たちも今では、フェイスブックやラインで連絡を取り合う仲で、長い長い絆です。

最後に、校長として2度目の日本人学校勤務の折、当時1年生の担任だったある先生の話をしようと思います。

1学期終業式の日、この日は教職員全員で子供たちの下校を見送ります。夏季休業中に登校日はなく、次に会えるのは2学期の始業式です。最後のバスを見送った後、一人の女性の先生が声を掛けてきました。

「校長先生、クラスの子が泣くのです」と。何かクラスで問題があったのかと思い、「何かあったのですか?」と聞いてみると、1年生のクラスの子供が「明日から学校がお休みで学校に行けない。先生とも会えない。友達とも遊べない」と言って泣いていたというのです。子供たちのそんな様子を嬉しそうに話してくれる先生自身にも、明日からしばらく子供たちに会えないことに寂しさを感じている様子が伺えました。この学級は素晴らしい学級経営ができているとともに、子供たちと担任がしっかりつながっているなと思いました。こういう学級ができると担任冥利につきます。

読者の皆さんはこれから教職につかれる方々ですね。その時その時の子供たちとの出会いを大切にしていただき、「縁」だけで終わることなく「絆」につなげ広げてほしいと心から願っています。

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