個人・集団面接 | 論作文(論文)

ココだけは理解! 主体的・対話的で深い学び=アクティブ・ラーニング

新たな教育実践の手法として注目を集めている「アクティブ・ラーニング」。新指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」という言葉に置き換えられ、総則に明記されました。教採では、面接・論作文対策のためにも、きちんとその概念を理解しておきたいところ。この領域の第一人者である田中博之先生に、理解すべきポイントをお聞きしました。

田中 博之(たなか・ひろゆき)先生 早稲田大学教職大学院教授
1960年北九州市生まれ。大阪大学人間科学部卒業後、大阪教育大学の専任講師、助教授、教授を経て2009年4月より現職。学級力向上プロジェクトのカリキュラム開発、アクティブ・ラーニングの授業開発等の研究に従事。

POINT 1
「アクティブ・ラーニング」が提唱されるまでの流れを押さえる

「アクティブ・ラーニング」や「主体的・対話的で深い学び」について説明する前に、ここに至るまでの経緯を整理しておきたいと思います。

アクティブ・ラーニングはもともと、1990年代の後半にアメリカの大学で始められたものです。その狙いは、学生を授業に集中させること。授業中に「寝させない」「食べさせない」「飽きさせない」などを目的として、いくつかの大学が参加型の授業を取り入れたのが、その始まりでした。

その後、2000年代の初め頃から、日本にもその実践が紹介され始め、徐々に注目を集めるようになります。そして、2012年8月には、大学教育での学びをアクティブ・ラーニングに転換することを盛り込んだ答申(※1)が中央教育審議会から出されます。つまり、アクティブ・ラーニングはもともと、大学教育において提唱された手法だったわけです。

そんな折、これを小学校や中学校、高校の学びにも生かせないかとの声が出始め、2014年には指導要領の改訂に向けた大臣諮問(※2)に、「アクティブ・ラーニング」という言葉が盛り込まれます。この大臣諮問以降、「アクティブ・ラーニング」は広く学校関係者に知られるようになり、関連書籍も多数出版されていきます。

そして、2016年12月には新指導要領の方向性・内容を示した中央教育審議会の答申(※3)が、2017年3月には新指導要領の告示が出されます。多くの話題を呼んだ「アクティブ・ラーニング」という言葉ですが、答申ではカッコ書きとなり、新指導要領からはその文言が消え、代わりに「主体的・対話的で深い学び」という言葉が使われています。この点については、マスコミ・出版業界をはじめ、少なからず動揺もあったようですが、別にアクティブ・ラーニングという視点自体が消えてしまったわけではありません。おそらく、今後作成されるパンフレット等の啓発資料には、使用されるものと思われます。

(※1)中央教育審議会「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて〜生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ〜(答申)」(2012年8月)
(※2)文部科学大臣「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」(2014年11月)
(※3)中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(2016年12月)

POINT 2
「主体的・対話的で深い学び」を通じて育みたい資質・能力

指導要領の改訂に向けた大臣諮問がなされた頃から、多くの自治体・学校で、先取りする実践が行われるようになりました。しかしながら、そうした実践の中には、新指導要領が目指すものとは、似て非なるものも少なからずあります。

ある高校では、受験問題集を複数人の生徒で解き合う実践が行われ、進学実績が向上したことで注目を集めました。そして、アクティブ・ラーニングの先進事例として、それを真似する学校も現れ始めます。また、ある地域・学校では、専ら「ジグソー学習」と呼ばれる実践に取り組み、やはりアクティブ・ラーニングの先進事例だとして注目を集めました。

もちろん、これらの実践もアクティブ・ラーニングの一形態であることに変わりはありません。しかしながら、多々ある実践の一つにすぎない点は注意が必要です。「主体的・対話的で深い学び」という言葉と照らし合わせれば、やや「対話的な学び」に偏った実践と言えます。

「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」のうち、比較的取り組みやすいのは「対話的な学び」でしょう。新指導要領が実施されれば、多くの学校がここに着目して取り組むに違いありません。しかし、「対話的な学び」ばかりに拘泥していては、新指導要領の目指す資質・能力の育成は図れません。「主体的な学び」や「深い学び」も視野に入れ、バランスを考えながら、取り組んでいくことが求められます。

新指導要領は、知識・技能とともに資質・能力(コンピテンシー)を高めていくことを目指しています。例えば、歴史の授業で、4人の生徒が互いに資料を持ち寄り、発表し合ったとします。いわゆる「ジグソー学習」の一場面ですが、これだけではただ知識が4倍に増えるだけで、“歴史的な物の見方”は深まりません。

先日、アメリカ・シアトルの小学校で、社会科の授業を見学する機会がありました。授業のテーマは「シアトルの植民地時代」について。子供たちが先住民(インディアン)の立場になり、白人(当時支配をしていたスペイン人)に手紙を書くという授業でした。手紙を書くには、植民地時代の歴史について知る必要があるので、子供たちは一生懸命、本やインターネットを使って調べます。一方で、手紙を書く活動を通じて、「インディアンの立場から見た歴史」という、異なる視点からの物の見方も培われていきます。いわゆる「プロジェクト学習」の一例ですが、こうした実践を通じ、子供たちは資質・能力と知識・技能の両面を高めていくことができます。
これは一例にすぎませんが、新指導要領が目指す、思考力・判断力・表現力などのコンピテンシーを重視した学びを実現していくためには、「対話的な学び」だけでなく、「主体的な学び」や「深い学び」も、バランスよく実施していくことが求められるのです。

田中先生のワンポイントアドバイス
「アクティブ・ラーニング」の表記

雑誌や書籍によっては、「アクティブラーニング」と「・」で区切らずに表記しているものもあります。最近は、文部科学省が「アクティブ・ラーニング」と表記したことから、多くのメディアがこの表記を踏まえるようになりましたが、それでも一部研究者の中には、「・」で区切らない表記にこだわっている人もいます。
私はよく「アクティブ・ラーニングは日本語です」と講演会等で話しています。理由は、アメリカで行われているものとは異なる、日本独自の視点を生かした実践だと考えているからです。なお、教員採用試験の論作文試験でも、「アクティブ・ラーニング」と文部科学省の表記に準ずるのが望ましいでしょう。

 

POINT3以降については、

本誌『教員養成セミナー2017年6月号』をご覧ください!

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