教師の本棚

『みかづき』

森 絵都=著
2016年/集英社
¥1,850+税

教育に熱き思いを持つ親子3世代の物語

遠江 久美子(東京都町田市立鶴川第二中学校教諭)

46年間にわたる日本の教育業界をなぞりながら、教育に熱い思いを持って関わった親子三世代の物語です。この46年間の大きな変化に、私自身も驚きながら、本のページをめくっていきました。時代に翻弄されながらも、子供たちの生きる力を育むため、必死に情熱を注ぐ吾郎、千明、蕗子、蘭、一郎。主役が交代していくのもこの本の魅力です。教育とは何か。「常に何かが欠けている三日月。教育も自分と同様、そのようなもの。欠けている自覚があればこそ人は満ちようと研鑽を積むのかもしれない」という作中の言葉にハッとします。一郎が奮闘する最終章で、彼の教え子の話が学びへの希望を与えてくれます。

読み終えると、この本の向こう側に2つのシーンとその笑顔が映し出されていました。1つは私の中学校時代の7人の仲間と私の笑顔。中3の2学期の英語のテスト、最高点の人に1人1個の“肉まん”をかけることになり、英語の勉強に燃える日々を送りました。結果は、100点を取ったM君の家で、「肉まんパーティ」を開くことに。当時は、お互いが寝ないよう、「家の電話が3回鳴ったら次の人に回す」というルールを決め、“無言の応援”をし合いながら、勉強に励んでいたことを思い出しました。お互いに頑張ることが楽しくて、嬉しくて、点数は二の次だったような気がします。

もう1つの笑顔は、私が教育実習生として学校に通っていた当時の跳び箱指導の場面。何回挑戦しても、なかなか跳べなかったAさんが、手をバンと着いて、フワッと体が浮いて、初めて跳び越えて着地した瞬間、Aさんと周りの生徒たちの笑顔がはじけました。その時の跳び箱や拍手の音は、今も鮮やかに蘇ってきます。跳べた子と、それを応援した仲間が同じ笑顔であることがこんなに嬉しいことなのか、そう思えた瞬間でした。思えば、この2つの笑顔が私の教師としての原点だったなと、しみじみ思います。私にとっての教育は「仲間と笑顔」、そして「変化」。時代や環境の変化とともに自分を変化させ、子供たちの変化に気付き、楽しんでいきたいと常に思っています。

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