映画・ドラマに学ぶ教育の本質

「ハドソン川の奇跡」

2016年/アメリカ/96分
監督:クリント・イーストウッド
出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー、
クリス・バウアー、マイク・オマリー 他

 

乗客・乗員155人を救った機長の決断

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

トランプ大統領のあまりの“ジャイアン”ぶりに、やはり西部劇や南北戦争の米国が国の本質だと思う人も増えたのではないでしょうか。でもそうは言っても、良心や誠実さなど、世界に誇るべき“米国魂”は今もあるぞと、この映画を観ると言いたくなります。

監督=クリント・イーストウッド、主演=トム・ハンクスという豪華ペアで話題を呼び、すでに多くの賞を取っている作品だけに、今さら紹介するのもどうかとは思いましたが、私の経験や考察を踏まえて、あえて取り上げることにしました。

2009年1月15日、乗客乗員155人を乗せた航空機USエアウェイズ1549便は、ニューヨークのラガーディア空港を離陸後すぐ、カナダガンの群れによるバードストライク(鳥との衝突)によって2機のエンジンを喪失します。ビル群のひしめくマンハッタンの上空850メートルで、コントロールを失った同機。機長のサレンバーガー(通称サリー、トム・ハンクス)は、副操縦士のジェフリー・スカイルズ(アーロン・エッカート)と解決策を検討しますが、管制官が指示するラガーディア空港あるいは近隣のテターボロ空港に向かうのは困難と判断します。そして、瞬時に決断をします。それは、大都会を流れるハドソン川に着水するという、前例のない賭けでした。

機体を必死に制御し、見事にハドソン川に不時着させることに成功したサリー。その後も、浸水する機体から乗客を誘導し、155名全員を無事に生還させます。その奇跡的偉業に、メディアや政治家、多くの市民から、国民的英雄として称賛されるサリーでしたが、一方では不時着が失敗していた場合の大参事が頭をよぎり、幻覚に悩まされます。

そんなある日、ハドソン川への不時着という判断が正しかったのかどうか、事故調査委員会によりサリーとスカイルズに嫌疑がかけられます。他に選択肢はなかったのか、空港まで戻れたのではないか、乗客たちの命を危機にさらす無謀な判断だったのではないか、目立つためにあえて危険な賭けをしたのではないか…。そんな追及を受け、挙句の果てには殺人未遂の容疑者としての嫌疑までかけられます。苦悩するサリーでしたが、妻のローリー(ローラ・リニー)と話す中で、次第に自分の決断が正しかったと確信を持ちます。

主演であるトム・ハンクスの演技は素晴らしく、謙虚な男の大胆な所業を通して、チェスリー・サレンバーガーという一人の米国人の姿を実に見事に再現しています。この姿こそが、多くの米国人を象徴する姿である── 私はそう読者の皆さんに伝えたいのです。

「あの出来事は決して奇跡ではないし、自分がヒーローだとも思っていません。私は訓練どおりのことをしただけです。全ての乗客、そして乗務員が一致団結したからこそ、1人の犠牲者もなく全員が助かったのだと私は思っています。」

サリーの言葉は、生徒たちの能力や可能性を信じ、中学校国語教師として生涯を貫いた、尊敬する一人の偉大な我が師、ミネソタ州のJerry Bartowの姿にも重なり合うものがあります。

 

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