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「家族はつらいよ」

2016年/日本/108分
監督: 山田 洋次
出演: 橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優 他
© 2016「家族はつらいよ」製作委員会

 

「家族とは何か」を問う

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

学校の教員にとって、保護者の存在が大きいことは言うまでもありませんが、実はその保護者、つまり家庭の状況が大きく変わっていることや、家庭のあり方に格差が広がりつつあることは、もっと認識される必要があります。

家族は最小の集団であり、社会生活を送る上での最後の砦でもあります。しかし、それが崩壊の危機にさらされているということが、最近語られつつあります。そうした状況がある中で、「家族とは何か」を教師として一考することも必要だろうと思い、今回はこの映画を取り上げました。

山田洋次監督と言えば、1969年(昭和44年)から始まった「男はつらいよ」が有名ですが、最近、このシリーズを知らないという学生が出てきて驚きました。1995年(平成7年)まで全50作にも上る、この国民的英雄「フーテンの寅」こと車寅次郎を知らないとは…。そんな話はさておき、本作「家族はつらいよ」も、山田監督らしく安定感があり、それでいて風刺が効いていて、かつ気楽に観られる作品に仕上がっています。評価は人によって分かれるようですが、今年の夏には続編が出るそうです。

真面目に仕事一筋の人生を歩んで来た平田周造(橋爪功)。退職後はゴルフを楽しみ、美人女将(風吹ジュン)のいる飲み屋で酒を嗜むなど、悠々自適の理想的な老後生活を満喫していました。ところがある日、酔っ払って帰宅後、その日が妻・富子(吉行和子)の誕生日だったことを思い出します。プレゼントは何がいいかと聞く周造に、富子が差し出したのは、何と離婚届。「冗談だろ」と返すも、富子は本気だと言います。しばらくは、馬耳東風と受け流していた周造でしたが、心中は穏やかではなく、次第に苛立ちも示します。やがて、このことが家族にも知られ、家族会議が開かれます。

一連の出来事をめぐり、長男夫婦(西村雅彦・夏川結衣)、長女夫婦(林家正蔵・中嶋朋子)、次男とその彼女(妻夫木聡・蒼井優)が、さまざまな形で反応するところも見応えがあります。いわゆる「熟年離婚」を題材にした映画ですが、帰宅後に靴下やズボンを脱ぎっぱなしにする周造の傲慢さを見て、ちょっと私にはできないなと…。同年代の私にそう思わせるあたり、山田監督のオヤジ像もちと古いなと感じます。

一見平和そうに見える家族も、それぞれが問題を抱えていたり、トラブルに振り回されたりしています。時に、良いことも起これば、悪いことも起きる。それでも、つながり合い、世代をつないでいく。そこに家族の素晴らしさがあるわけです。本作の次男と彼女の関係なんかは、とても爽やかで、家族の新しいあり方を感じさせます。

なお、山田監督の次回作のテーマは“無縁社会”で、喜劇映画で「死」を描くというタブーに挑戦するそうです。「観客は大笑いしながら、格差社会の重苦しさにもふと思いを馳せてくれれば」とのことですが、どんな作品になるか、ちょっと楽しみです。

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