教職・一般・専門教養

新学習指導要領が目指す「新しい学び」とは ~育みたい力と「主体的・対話的で深い学び」~

これからの学校を担う人たちは、新しい学習指導要領に基づいて教育を行うことになります。大都市圏を中心に教員の世代交代が進む中、若手教員こそ今後の「新しい学び」の中心を担っていかなければなりません。それには、まず改訂のねらいや趣旨を正確に理解することが求められます。新指導要領は、どのような考えで、何を目指して作られたのでしょうか。5〜8月号まで計4回にわたってお送りする「短期集中連載」の1回目は、「育成を目指す資質・能力」を中心に見ていきます。

教育ジャーナリスト  渡辺 敦司
1964年、北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。日本教育新聞記者として文部省(当時)や進路指導・高校教育改革などを担当し、1998年から現職。教育行財政から実践まで幅広く取材・執筆。

 

「生きる力」の具体化として

最初に、今回の改訂に至るまでの経緯を振り返ってみましょう。

「生きる力」の育成は、1998〜 99年改訂の指導要領以来、一貫した学校教育の基調となっています。新指導要領でも、総則に「生きる力を育むことを目指す」と明記されました。生きる力が、①確かな学力、②豊かな心、③健やかな体──の「知・徳・体」で構成されることにも、変わりはありません。

しかし、具体的にどのような力を育てれば「生きる力」が育成できたことになるのか、あるいは、その育成に各教科・領域等が具体的にどう関わるのかは、必ずしも明確にされてはいませんでした。

一方、学校ではどうしても、「何を教えるか」に関心が向けられがちでした。指導要領の示し方も、学習内容中心に組み立てられています。そのため、各教科の授業や各教育活動を個別にしっかりと実施していれば、子供たちに自然と「生きる力」が身に付くだろうという、楽観的な想定があったことも確かです。総合的な学習の時間は、そうして学んだ知識を総合化するための時間のはずなのですが、実際の学校現場では、必ずしも教科等との連携が十分に図られず、別個の教育活動として存在している側面もあります。

学習者である子供たちの立場からすれば、「教えられたこと=学んだこと」が、社会に出た時に「活用できる」段階にまで身に付いているとは限らないという状況にあるわけです。

一方、情報化・グローバル化の進展や人工知能(AI)をはじめとする技術革新の急速化などにより、予測不能な未来社会にあっては、これまでのように正解ばかりを求める姿勢は通用しません。答えのない課題を自ら発見し、時には言葉も通じない異質な文化を持つ人たちとも対話する中で、新たな考えを生み出しながら、自分なりの解決策を見いだし、実行していく力が求められます。

国際的に見ると、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)が示す「キー・コンピテンシー」、米国を中心に世界的なIT企業が主導する「21世紀型スキル」の2大潮流があるほか、各国でも学校教育でどのような知識やスキルを育成すべきか、模索が行われています。
そうした流れを踏まえ、今回改訂で目指したのが、指導要領の「構造化」です。「生きる力」でどのような資質・能力(コンピテンシー)を育成し、それが各教科等とどのような関係にあり、どう関連付ければよいのかを明らかにすることが課題となりました。

なお、今回の改訂作業の成果は、OECDとの政策対話や共同研究を通して、OECDが2030年に向けた教育の在り方を世界に提案する「Education 2030」にも生かされる見通しです。日本政府は、新指導要領が育成を目指す「資質・能力の三つの柱」が、昨年5月に開催されたG7倉敷教育大臣会合の共同宣言に盛り込まれるなど、国際的にも共有されているとしています。

これまでも「生きる力」の育成を目指した日本の教育は、PISAでの一貫した高成績などにより、世界から注目されてきました。「我が国のカリキュラム改革は、もはや諸外国へのキャッチアップではなく、世界をリードする役割を期待されている」(2016年12月の中央教育審議会答申)のであり、現段階での到達点が、新しい指導要領なのです。

 

 「資質・能力の三つの柱」とは

具体的に、新指導要領ではどのような力を育もうとしているのでしょうか。以下、小学校を例に新指導要領の記述を見ていきますが、小学校を「中学校」、児童を「生徒」と置き換えれば、そのまま中学校の記述になります。

新指導要領案には、総則の第1「小学校教育の基本と教育課程の役割」に、具体的な記述があります。「生きる力」については、以下のように記述されています(一部抜粋)。

(1) 基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等を育むとともに、主体的に学習に取り組む態度を養い、個性を生かし多様な人々との協働を促す教育の充実に努めること。
(2) 道徳教育や体験活動、多様な表現や鑑賞の活動等を通して、豊かな心や創造性の涵養を目指した教育の充実に努めること。
(3) 学校における体育・健康に関する指導を、児童の発達の段階を考慮して、学校の教育活動全体を通じて適切に行うことにより、健康で安全な生活と豊かなスポーツライフの実現を目指した教育の充実に努めること。

 

その上で、これら「生きる力」を育むことを目指すに当たっては、学校教育全体や、各教科、道徳科、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動 ──つまり学校の教育活動のすべて── を通して、以下の資質・能力の育成を偏りなく実現できるようにするとしています。それが「資質・能力の三つの柱」と呼ばれるものです。

(1)知識及び技能が習得されるようにすること。
(2)思考力、判断力、表現力等を育成すること。
(3)学びに向かう力、人間性等を涵養すること。

 

「生きる力」は「学力の3要素」(確かな学力)を含めた知・徳・体から成るものであり、「生きる力」を育むために「資質・能力の三つの柱」があるわけです。

「学力の3要素」と「資質・能力の三つの柱」は中身も似ているため混同しやすく、中央教育審議会(中教審)の審議過程でさえも違いが分かりづらいという指摘が出ていたほどです。新指導要領の記述に沿って、文言や対応関係をよく整理しておく必要があるでしょう。

教科等横断的な「資質・能力の三つの柱」を設定したことによって、各教科・領域等の相互の関連を図ることも容易になります。教科等横断的に資質・能力を育てることで、学校全体として「生きる力」が確実に育める、というわけです。

この続きは、

本誌『教員養成セミナー2017年5月号』をご覧ください!

←画像をクリック

 

教育データ対策 これ一冊でいっき解決! 3ステップ過去問分析の進め方 教員養成セミナーのご紹介 教セミLine@ 教員採用試験対策サイトへ

最新号のご紹介