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どうなる!? 中学校・高校の部活動

 中学校の部活動のあり方をめぐって、スポーツ庁が通知を出すなど活発な動きが出ています。今後、部活動はどのように変化していくのか、教職志望者にとっても気になるところでしょう。この分野に詳しい早稲田大学准教授・中澤篤史先生に、現状の課題や今後の成り行きなどについて解説いただきました。

中澤 篤史先生(早稲田大学准教授)
早稲田大学スポーツ科学学術院・准教授。主著に『運動部活動の戦後と現在――なぜスポーツは学校教育に結び付けられるのか』(青弓社)、『そろそろ、部活のこれからを話しませんか――未来のための部活講義』(大月書店)など。

部活動はやりがい?
それとも負担?

 教員採用試験の問題には出てきませんが、晴れて合格して教員になった後、学校現場で待っているのが「部活動」です。

 教員を目指す皆さんの中には、「授業以外に部活動でも頑張りたい」と部活動にやりがいを感じる人がいるでしょう。もしかしたら、「部活動の顧問になるために教員になりたい!」と思っている人もいるかもしれません。

 一般的に部活動では、生徒がしたいスポーツ・文化的活動をすることを通して、責任感や協調心を育んだり、努力や友情の大切さを学んだり、人間的に成長していったりすることが期待されています。部活動の内容は、いわゆるお勉強とは違った、スポーツ・文化的活動ですが、単に技術向上や勝利追求だけを目指すわけではありません。そこには教育的な意味も込められています。だから教員は、学校教育活動の一環として、部活動の顧問になり、その指導や運営に力を注いできたわけです。

 しかし他方で、最近は、その部活動が行き過ぎて、活動時間が長かったり、休みがなかったりして、教員の負担が大きいと問題になってきました。「授業だけで手一杯なのに、部活動も任されて大変だ」「毎日部活動で、帰りが遅くなる。土日も部活動で休めない」「教育のため、生徒のため、と言われても、教員自身が部活動でつぶれてしまう・・・」。そんな教員の悲鳴が、ツイッターやブログなどネットの世界でわき起こり、新聞やテレビでも取り上げられるようになってきました。

 皆さんの中にも、「ブラック部活」なんて恐ろしい言葉を聞いた人がいるかもしれません。従業員に過剰で違法な労働を課す「ブラック企業」さながらに、教員に過剰な負担を強いる、部活動の負の側面を表現しようとした言葉です。
教員を目指している皆さんは、「ブラック部活」なんて言葉を聞いてしまったら、果たして教員になったとしても、ちゃんとやっていけるのだろうかと心配になってしまうでしょう。部活動も頑張りたいと思っていた人であれば、せっかくのやる気がそがれてしまうかもしれません。

 一体、部活動はどうなっているのでしょうか。教員は、部活動にどんな風に向き合っているのでしょうか。そして、これからどうすればよいのでしょうか。教員になる前の豆知識として、中学校・高校の部活動の現状について解説したいと思います。

ニッポンの部活動はAmazing!?

 はじめに、国際比較をしてみましょう。日本人にとって当たり前に感じられる部活動ですが、外国人の目には、とても不思議に映るようです。

 海外で開かれる国際会議などで、私が日本の部活動について研究報告をすると、外国人の研究者に「なぜニッポンでは部活動なるものがあるのか?Amazing!」と驚かれます。例えば、ブラジル人研究者には、「なぜ教員がスポーツを教えているのか。しかもサッカーをしたことのない理科の教員が、なぜサッカー部のコーチなのか」と驚かれました。その一方で、中国や韓国、台湾の研究者は、「平等にスポーツを提供するシステムは良いね」と言ってくれました。

 では、外国の様子はどうなっているのでしょうか。ここではスポーツ系の運動部活動に焦点を絞って、その様子を見てみましょう。表1に、世界34カ国における中学・高校段階のスポーツの場を、「学校中心型」、「学校・地域両方型」、「地域中心型」の3つのパターンにまとめました。

 最も多くの国が当てはまるパターンは、学校と地域のクラブの両方で青少年スポーツが行われている「学校・地域両方型」です。南北アメリカやヨーロッパなどの20カ国が該当します。ただし、「学校・地域両方型」のほとんどの国では、学校よりも地域クラブの方が規模が大きかったり、活動が活発だったりします。

 次に多いパターンが、学校ではなく地域のクラブが青少年スポーツの中心になっている「地域中心型」です。9カ国が当てはまりますが、典型的なのはドイツです。ドイツは、「フェライン」と呼ばれる地域クラブがあります。フェラインは学校より歴史が古く、町とともに誕生していることも多く、人々の生活に溶け込んでいます。そのため、ドイツの青少年は学校が終わると地域でスポーツを楽しみます。

 そして、最も少ないパターンが、学校が青少年スポーツの中心になっている「学校中心型」で、日本や中国、韓国など5カ国が当てはまります。こうした「学校中心型」の国は、世界的には少なく、珍しいのです。

 しかも、日本以外の4カ国が「学校中心型」である理由は、地域のクラブが未発達なためです。例えば中国や韓国では、学校でのスポーツが中心と言っても、一握りのエリートが、体育学校に用意された特別な部活動に参加しているにすぎません。青少年スポーツの中心が学校の部活動にあり、なおかつ、多くの生徒が部活動に参加している日本は、国際的に極めて珍しい国なのです。

部活動の大きな存在感

 次に、日本の中学校・高校の部活動の現状を詳しく見てみましょう。

 生徒の関わり方を見ると、中学生の9割ほど、高校生の7割ほどが部活動に入っています。そのうち約3分の2が運動部、約3分の1が文化部という比率になっています。運動部には男子生徒が多く、文化部には女子生徒が多い。いずれにしても、多くの生徒が部活動に入っていて、部活動に入っていない生徒の方が珍しい。生徒にとって、部活動は、今や当たり前になっています。

 部活動に入りたい生徒が部活動に入って、好きなスポーツや文化活動を思い切りできる分には、大いに結構なことです。しかし、実際には、嫌々部活動に参加している生徒もいます。好きでもない部活動に入ることを強制される場合もあります。全生徒に何らかの部活動に加入することを義務付けている学校も少なくありません。

 『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ著)という小説・映画がヒットしました。「桐島」という一人の生徒が部活動をやめたことが学校中を騒がせる「事件」になってしまう。良くも悪くもそれほど部活動は大きな存在感を示しているのです。

 その部活動を支えているのが、教員です。教員の関わり方を見ると、中学校・高校ともに全教員の9割以上が、部活動の顧問に就いています。生徒と同じように、部活動に関わらない教員の方が珍しい。中にはすべての教員が部活動の顧問に就くように、「全員顧問制」のルールを定めている学校もあります。昨年、国が行った全国調査によると、中学校の87.5%が、全員顧問制をとっていました。

 部活動を任された教員の中には、その活動の経験が無い教員もいます。「スポーツなんてしたことがないのに、いきなり野球部の顧問を任された」などというケースもあります。献身的な顧問教師は、それでも何とか生徒のためにと試行錯誤したり、悪戦苦闘したりしています。

 部活動は、当たり前に思われるくらい大規模に成立していますが、その背後には、こうした多くの教員の関わりがあります。

この続きは、

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