映画・ドラマに学ぶ教育の本質

「それでも夜は明ける」

2013年/米英合作/ 134分
監督: スティーヴ・マックィーン
原題:12 Years a Slave
出演:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ブラッド・ピット 他
© 2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. All Rights Reserved.

 

誰も描かなかった、真実の物語

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

イギリスやアメリカの予期せぬ動きも含め、昨今は世界的に人権や反差別、平等、公正などの社会的正義が脅かされつつあります。だからこそ、今回はこの映画を推薦したいと思います。

原作は1853年に発表された、自由黒人ソロモン・ノーサップによる奴隷体験記『Twelve Years a Slave(12年間、奴隷として)』。彼は1841年にワシントンD.C.で誘拐され、奴隷商人に売られ、解放されるまでの12年間、ルイジアナ州のプランテーションで働いていました。この間の壮絶な奴隷生活を綴った伝記を、スティーヴ・マックィーン監督が映画化した人間ドラマです。

正直、観て楽しい映画ではありません。黒人奴隷に対する白人雇主(所有者)の冷酷で残虐な行為が、歴史的事実として余すことなく描かれています。昨今のアメリカは、南北戦争前の白人中心時代に戻るかのように思わせる節もありますが、一方ではこうした映画が制作・上映される米国の良心も信じたいところです。本作は第86回アカデミー賞で計9部門にノミネートされ、作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞しました。

1841年、ニューヨーク州サラトガに住むソロモン・ノーサップ(キウェテル・イジョフォー)は自由証明書を持つ黒人のバイオリニストとして、妻と子供2人と共に順風満帆な生活を送っていました。そんなある日、彼は2人組の白人に騙され、昏睡状態のまま奴隷商人に売られてしまいます。自分は北部の自由黒人だという主張もむなしく、材木商ウィリアム・フォード(ベネディクト・カンバーバッチ)の所へ売られたノーサップ。温和な性格のウィリアムから高い教養やバイオリン技術に目をかけられるものの、農園の監督ジョン・ティビッツに言いがかりをつけられ、思わず暴力を振るってしまいます。ティビッツの報復を受けるようになったノーサップの身を案じ、ウィリアムは資金面で世話になった別の農園の支配人エドウィン・エップス(マイケル・ファスベンダー)に彼を売ります。陰湿で残忍なエドウィンは、男女を問わず奴隷を鞭打つなどひどい仕打ちを繰り返します。しかし、ノーサップはいくつもの難局を乗り切り、12年間、耐え忍びます。やがて、奴隷制度撤廃を公然と唱えるカナダ人大工のサミュエル・バス(ブラッド・ピット)と出会ったノーサップは彼を信用し、自らの素性を明かし、北部時代の知己に手紙を送ることを懇願します。数日後、農場に保安官がやってきて、遂にノーサップは奴隷から解放され、サラトガへの帰郷を果たします。

白人でもなく奴隷でもないニュートラルな立場のノーサップは、何となく私たち黄色人種を彷彿とさせます。今日も、サディスティックな独裁者が支配する社会では、自分の知性を隠し、ひたすら頭を低くして生き抜こうとする人々がいます。舞台は19世紀のアメリカですが、現代的かつグローバルな問題にも通じるクールな映画です。

教育データ対策 これ一冊でいっき解決! 3ステップ過去問分析の進め方 教員養成セミナーのご紹介 教セミLine@ 教員採用試験対策サイトへ

最新号のご案内