編集長コラム

遠足解散後の事故は学校の責任? 「学校管理下」の範囲とは

遠足の“あるある”

全国津々浦々、どの学校でも行われている遠足。多くの子供たちにとっては、1年で最も楽しみな学校行事の一つです。動物園に行ったり、山に登ったり、広場でレクリエーションをしたり…。“行く所”や“やる事”は、今も昔もほとんど変わっていません。

遠足の“あるある”について人と話すと、よく出てくるのは「おやつ」の話です。「おやつは300円まで」と先生に言われ、「バナナは入るんですか?」と子供たちが返す。そんなやり取りがあったという人は多いようです。

もう一つの“あるある”は、遠足が終わった後の校長先生の一言。
「家に着くまでが遠足です。」
こう注意を促された人は多いと思います。

実を言うと、校長先生がこう話すのには、きちんとした理由があります。一つは、遠足で気分が浮かれている子供たちは、帰り道ではしゃいで、事故に遭うケースが多いから。そしてもう一つは、下校途中で起こる事故は学校の責任範囲、すなわち「学校管理下の事故」という扱いになるからです。

遠足は、学校教育上、「特別活動」の「遠足・集団宿泊的行事」(学習指導要領)に当たり、歴とした教育活動として位置付けられます。そして、その行事が終了するのがいつかというと、児童生徒が帰宅した時点です。たとえ、現地解散であっても、家に着く前に起きた事故やトラブルは、「学校管理下」の出来事として、学校の監督責任が問われかねません。そう考えると、「家に着くまでが遠足です」と言う校長先生の言葉にも、納得する部分があります(もちろん、「家に帰った後なら事故に遭ってもよい」とは、どの先生も考えていませんが…)。

どこまでが「学校管理下」か

「学校管理下」で起きた事故で子供がけがをした場合、国の「災害共済給付制度」により、治療等にかかる費用が給付されます。同様に「学校管理下」の教育活動中、暑さから熱中症になったり、漆でかぶれたりした場合も、療養費が給付されます。ただし、いずれも保護者負担の療養費が1,500円以上の場合という制約があります。

問題はどこまでが「学校管理下」となるかで、これをまとめたのが右ページの表です。これを見ると、授業中はもちろん、休み時間中、放課後、部活動など、児童生徒が学校にいる間は、基本的に「学校管理下」となることが分かります。また、社会科見学や修学旅行など、学校外にいる場合も、学校の教育活動である場合は「学校管理下」となります。

注目したいのは、「登下校中」の部分です。登校中や下校中に児童生徒が事故に遭った場合も、「学校管理下」という扱いになります。ただし、ここにはいくつかの制約があります。

一つは、「通常の経路」を通って、登下校をしていることです。学校が指定するルートとは異なる道を歩いていて事故に遭った場合は、原則として「学校管理下」にならず、治療費等が支給されません。先生が「決められた道を通って、まっすぐに帰りましょう」と、日々子供たちに呼びかけているのは、そうした制度的背景があるからです。

もちろん、子供が一旦帰宅し、その後に出掛けて事故に遭った場合は、それが通学路上であっても、「学校管理下」にはなりません。判断の分かれ目となるのは、ランドセルを持っているかどうか。持っている場合は「学校管理下」、持っていない場合は家庭の管理下と判断されます。

子供は、時に突拍子もない行動に出ます。そのため、登下校中の事故には「犬に触ろうとしたら噛まれた」「橋下に落としたリコーダーを拾いに行こうとして転倒した」「悪ふざけをしていたら、用水路に落ちた」など、実にさまざまなパターンがあります。これらの事故に治療費が払われるかどうかの判断基準については、独立行政法人日本スポーツ振興センターの「災害共済給付の基準に関する規程」に記載されていますので、興味があったら読んでみてください。

どのような場面での事故が多いか

それでは、「学校管理下」の事故を統計的に見ると、どのようになっているのでしょうか。

独立行政法人日本スポーツ振興センターが発行する『学校の管理下の災害 (平成28 年版)』によると、最も多いのは「課外活動中」で33.8%、次いで「各教科等」の29.8%、「休憩時間」の21.9%となっています。「課外活動中」が多いのは、少々意外に感じますが、これは部活動中の事故が、中学校や高校で圧倒的に多いからです。小学校に限定すれば、「課外活動中」の事故は2.8%に過ぎず、かわって「休憩時間」が47.6%と最も多くなっています。こうしたデータからも、各学校段階の先生がどんなところに注意を払うべきか、その“勘所”が見えてくるのではないでしょうか。

学校の先生が注意すべき点といえば、もう一つ、こんな事例が挙げられます。休日、個人的にクラスの子供たちを連れて、ピクニックに行くような場合です。休日のピクニックは、正規の教育活動ではありませんので、子供がけがをしたり、熱中症になったりしても、「学校管理下」には当たらず、災害共済給付からの治療費は支払われません。一方で、保護者からは、その責任を厳しく追及されることになります。

若い先生の中には、子供と「仲良くなりたい」「強い絆を作りたい」と考えている人もいると思います。子供との信頼関係が築ければ、日々の学級経営もやりやすくなり、それは子供たちの成長にもつながります。そのためなら、学校外での交流も…と考える気持ちは分かりますが、この点については事故以外にも注意すべきことがあります。

例えば、生徒から相談を受け、「学校では話しにくいから」と言われて場所をファミリーレストランに移したところ、その様子を偶然他の生徒に目撃され、噂を立てられてしまう…といったケースは珍しくありません。生徒個人とのメール、SNSでの交流なども同様で、本人にやましい気持ちがなくとも、痛くもない腹を探られてしまう可能性は十分にあります。

子供との距離感を縮めることは大切ですが、それは学校の“内側”に留めるべきであり、その辺をあいまいにしてしまうと痛い目にあうかもしれません。その点は、ぜひこれから教師になる人には頭のどこかに入れておいてほしいと思います。

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