編集長コラム

学校教育にかかるお金 家庭の負担はどこまで?

少子化の一因と言われる教育費

日本は今、「少子化」という大きな社会問題に直面しています。2015年の合計特殊出生率、すなわち一人の女性が生涯で産む子供の平均は1.46となっており、人口維持の目安となる「2」を大きく下回っています。数字の上だけならば、日本人は“絶滅危惧種”になる…なんて、穏やかでない話も聞きます。実際、このペースで人口が減り続けた場合、西暦2500年には人口が1,000人を切るとの試算もあるようです。

少子化の一因と言われているのが教育費です。「子育てに十分なお金をかけられないから…」との理由から、子供をもうけなかったり、一人だけにしたりといった夫婦は少なくありません。文部科学省の調査によると、子供を公立学校に通わせた場合でも、小学校で年間約32万円、中学校で年間約48万円の学習費がかかるとの試算が出ています(平成26年度 子供の学習費調査)。私立学校に通わせた場合はこれを大きく上回り、小学校で年間約153万円、中学校で年間約133万円にも上ります。

もし、小学校入学から高校卒業まで、すべて私立に通わせたとしたら、12年間の総額は約1,600万円。ここに、家庭での衣・食・住や医療費などは含まれていないので、いわゆる「子育て」全般にかかる費用は、さらに多いということになります。私学志向の強い都市部では、子供の教育に相当な出費を強いられる可能性もあることが、こうしたデータからも分かります。

小・中学校は、義務教育です。義務教育は無償とされているのに、子供を公立学校に通わせても、なぜこれだけのお金がかかるのか、不思議に思う人もいることでしょう。

実は、義務教育の無償とは、教育費のすべてを免除するという意味ではありません。現状、税金で賄われるのは、授業料と教科書代、施設設備費などの一部。それ以外は、たとえ校内で使うものであっても、原則として保護者が負担することになっているのです。

私費負担の割合が多い日本

公立学校の教育にかかる費用のうち、国や自治体が負担するものを「公費負担」、保護者が負担するものを「私費負担」と言います。主なものを右ページの表に挙げましたが、私費負担の中には、数千円もする代物も少なくありません。家計的にも大変なため、これらは公費負担にしてもらえないのか…と思う保護者もいることでしょう。

公費負担と私費負担の“線引き”をどうするかは難しい問題ですが、国際的に見ると、日本の教育費は公費負担が少ないこと、すなわち保護者の負担が大きいことで知られています。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合は3.2%。比較可能な33カ国中32位(最下位はハンガリー)で、1位のノルウェー6.2%、2位のデンマーク6.1%など北欧諸国はもとより、平均値の4.5%と比べても、かなりの低水準にあります。

ただし、この数字は幼稚園等や大学などを含んだものであり、小・中・高だけで比べれば、その差はそれほど顕著なわけではありません。それでも、決して高水準にあるとは言えず、総体的に日本は「子育てにお金がかかる国」と言うことができます。

ならば、もっと広い範囲を税金で賄うようにすればよいのではないか。そんな意見もある一方で、受益者負担の原則からすれば、現状のままでよいとする意見もあります。教育にどれだけの税金をつぎ込むかは難しい問題ですが、最終的には国の教育に対する考え方、価値の置き方によるのでしょう。

かつて、長岡藩士の小林虎三郎は、支藩から送られてきた百俵の米を売却し、そのお金で学校を設立しました。空腹を我慢してでも、未来への投資を選んだこの話は、美談として多くの人たちに語り継がれています。日本にはそんな精神的土壌があるのに、教育費の公費負担は国際的に見ても低水準にあるのは、なぜなのかと少々考えさせられるところです。

公費・私費のグレーゾーン

教育費の公費・私費については、その“グレーゾーン”というものが存在します。つまり、公費にすべきなのか、私費にすべきなのか、行政や学校で判断に迷うケースがあるのです。

例を挙げれば、卒業文集の作成費があります。最近は、外部の業者に発注するケースもあるようですが、一般的には学校の印刷機でプリントし、これを製本テープなどで綴じるなどして作成します。この場合の印刷用紙代は、誰が負担するのか。卒業文集を卒業アルバムと同じ扱いと考えれば私費負担となりますが、中には教育活動の一環としてとらえ、学校予算で賄っている所もあります。

また、授業で使う教材についても、公費負担と私費負担の区分が、曖昧なものが少なくありません。例えば、算数の授業で使う計算ドリルなどは、明確に私費負担だと言えるので、保護者から集金した「学級費」等から拠出します。しかし、図工で使う画用紙等は、「学級費」から出している所もあれば、学校予算から出している所もあります。

さらに、現在多くの学校で導入が図られている児童生徒用のタブレット端末についても、判断が難しいところです。現状は、自治体等による公費負担で賄われていますが、自宅に持ち帰って活用することを想定すれば、私費負担が妥当との見方もできます。いずれは、ランドセル等と同様に、入学時に親が子供に買い与えるという時代が来るのかもしれません。

そもそも学校は、公私の境界線が非常に曖昧な業界です。先生の勤務を見ても、どこまでが仕事で、どこからがプライベートなのか不明瞭です。プリントを自宅に持ち帰って丸つけをする先生は多いですし、自宅のパソコンで学級通信を作ったり、教材研究をしたりする先生もいます。

日々忙しく動いている学校においては、仕事もお金も「公なのか、私なのか」などと、考えている余裕がないのかもしれません。とはいえ、そうした不明瞭さが、誰かに不利益をもたらしているようであれば、拠り所とする“基準”が必要となってきます。また、先生方には、グレーゾーンに直面した際、立ち止まってよく考える習慣も求められるでしょう。

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